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テーマに関する論文

日本の歴史認識と東アジアの和解を考える
――反動を誘発する謝罪路線の危うさ

2009年5月号

ジェニファー・リンド  ダートマス・カレッジ助教授

いかなる国であっても、多くの人が家族や家を失い、都市そのものが消失してしまうような凄惨な戦争の余波のなかで、自国の過去の行動を謝罪すべきだという提案が出てくると、国内で反動が起き、国論は二分される。戦後の西ドイツで謝罪路線への反動が「例外的に」小さかったのは、ドイツの統一とソビエトからの防衛という二つの外交上の大目標を実現する必要があったからだ。日本、あるいは日本と同様の立場にあるその他の国は、「謝罪」と(過去の歴史を正当化し)「謝罪を否定する反動」の間の中道路線、つまり、アデナウアーがとったように、(謝罪ではなく)、過去の間違いを認め、一方で、未来志向のビジョンを示し、これらを自国の戦後の成果に対する誇りへと結びつける路線をとるべきだろう。この路線で東アジアの緊張が緩和されれば、自国だけでなく、世界が利益を得られるようなリーダーシップを日本は発揮できるようになる。

2008年前半まではサブプライムローン危機が実体経済に影響を与えるかどうか、リセッションがどのくらい長引くかを争点に考えられていた危機が、いまや大恐慌以降、もっとも深刻なグローバル経済・金融の危機と化している。危機は、各国の経済・貿易構造の再編を強いるだけでなく、経済モデルもドル基軸通貨体制も変化させるかもしれない。景気刺激策の後には、インフレとドル危機が待ち受けている危険もある。しかも、危機は、経済・金融領域だけでなく、地政学秩序さえも動揺させる恐れがある。また危機を緩和させ、再発を防ぐという目的からの国際協調が、国や地域を単位とする政治対立や保護主義の台頭によって行く手を阻まれる危険もある。危機のなかで世界の知性は何を考え、今後をどのように見通しているか。未曾有の危機のなかで将来を見通すための必読の書 。

イラクかアフガニスタンか、それが問題だ
――オバマ政権の困難な選択

2009年4月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会国防政策担当シニア・フェロー

「2009年2月末にオバマ大統領が発表したイラクからの撤退計画、つまり、19カ月で戦闘旅団を撤退させ、3万5千から5万の部隊を2011年まで残留させるというやり方は、様々な矛盾する要請のなかで、妥当なバランスを大統領が見極めた結果だと思う」。こう語るCFRの安全保障問題の専門家スティーブン・ビドルは「イラクでの平和維持活動の成功の可能性をどこまで低下させることを受け入れるのか。そして、さらなる増派をすれば、アフガニスタンでの成功の見込みをどこまで高められるか。大統領はこのふたつの矛盾する要請の間のバランスをとろうと試みている」と指摘する。問題はアフガンへの戦力増強が、イラクの不安定化というリスクを伴うことだ。アフガニスタンへの戦力増強のためにイラクから必要以上に速いペースで撤退すれば、イラクは再び内戦へと逆戻りしてしまうかもしれない。「そこにリスクフリーの選択肢はなく、バランスをとるしかない」と同氏は語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
中国は内需を拡大し、為替操作を止めよ
――金融危機と米・アジア関係

2009年4月

パネリスト
セバスチャン・マラビー /外交問題評議会地政経済学研究センター所長
エドワード・アルデン /外交問題評議会シニア・フェロー
エリザベス・C・エコノミー/外交問題評議会アジア研究ディレクター
プレサイダー
ケイ・キング/外交問題評議会ワシントン・プログラム・バイスプレジデント

「米中双方にとって必要なのは、中国がもっと内需主導型の経済へとシフトしていくことだ。中国はこれまでの20年間、輸出主導型の経済成長戦略をとり、その結果、膨大な外貨準備を積み上げ、グローバルなインバランス(グローバル経済の不均衡)を作り出してしまった。これが、米中双方を苦しめている。」(E・アルデン)

「金融部門を規制し、銀行を適切に監督していれば、問題はここまで深刻にはならなかったかもしれない。だが、……規制でどうにかなるとは私は考えていない。膨大な資本が経済システムに流入すると、バブルが発生し、そのバブルが崩壊し、大きな経済的打撃を引き起こすことは避けられないと私はみている。 この意味において、アメリカにとって中国の輸出主導型の経済成長モデルは好ましくないし、中国にとっても好ましくない」。(S・マラビー)

経済危機は中国の共産党支配を揺るがすか

2009年4月号

ミンシン・ペイ /カーネギー国際平和財団シニア・アソシエーツ

「不満をつのらせる都市の中産階級、大学を卒業しても職を見つけられない若者、失業した季節労働者が、中国共産党(CCP)の支配体制に対する大きな脅威を作り出すかもしれない。これらの集団が連帯して力強い組織を作り上げれば、世界でもっとも長く権力を握っている政党も深刻な問題に直面するだろう。だが、そのような事態は現実には起こりえない。……むしろ、支配的エリート層の結束がゆるめば、支配体制を揺るがす脅威になるかもしれない。」

CFR スペシャル・リポート
グローバル・インバランスと金融危機

2009年4月号

スティーブン・デュナウェイ 米外交問題評議会国際経済担当非常勤シニア・フェロー

金融規制を強化し、厳格な金融政策を実施すれば、グローバル・インバランス(世界経済におえる経常収支の不均衡)が誘発しがちな金融の暴走をゆっくりと押さえ込めるかもしれないという議論も耳にする。しかし、これらは世界経済の成長率を鈍化させることによってのみ実現できる次善の策に過ぎない。……現在の議論では、こうしたインバランスを増大させ、各国がその対策を先送りするのを許した「国際金融システムの基本的特質」に関する検証が行われていない。……ヘンリー・ポールソンが適切に指摘したように、現在の危機が解決しても、インバランスとそれが伴うリスクが再び問題を作り出すことになる。

金融危機と戦略問題
――R・ハースの米下院軍事委員会における証言から

2009年4月号

リチャード・N・ハース/米外交問題評議会会長

金融危機が民衆の政府に対する不満を高め、これが、中国やロシアでの政治的抑圧の強化へとつながっていく恐れもある。途上国への投資が先細りとなるなか、先進国がさらに途上国への対外援助を削減するようになれば、破綻国家の数は増える一方になるかもしれないし、その余波は深刻なものになる。各国が、短期的な経済成長に目を向けるあまり、長期的な温暖化対策に後ろ向きになる危険もある。すでに各国では保護主義が台頭しており、「G20諸国のうちの約17カ国が、2008年11月の金融サミット以降に何らかの形で貿易障壁を引き上げている」。そして、大規模な景気刺激策の後には、インフレやドル危機が待ち受けているかもしれない。今回の危機が次なる危機を引き起こさないようにするには、何をどうすればよいか・・・

Classic Selection 2009
地球温暖化対策の切り札としての地球工学オプション

2009年4月号

デビッド・ビクター スタンフォード大学教授
M・グランジャー・モーガン カーネギーメロン大学 工学・公共政策学部・学部長
ジャイ・アプト カーネギーメロン大学工学・公共政策学部教授
ジョン・ステインブルーナー メリーランド大学教授
キャサリン・リック カーネギーメロン大学博士課程在籍

世界各国の二酸化炭素排出量削減が思うに任せず、地球環境が急激に悪化する「ティッピング・ポイント」を超えてしまう危険が迫りつつある以上、政策決定者は、地球温暖化の余波を少しでも和らげるための緊急対応戦略として(太陽光の一部を遮断するために)反射性の粒子を大気中にちりばめたり、あるいは、地球を冷やすためのサンシェード(日よけ)を設けたりするなど、地球規模のスケールで工学システムを配備することの恩恵とリスクの分析を開始すべきだ。ただし、地球工学的なやり方で地球を冷やすことはできるが、大気中に蓄積される二酸化炭素の排出量を減らすことはできないし、その余波がどのようなものになるかもはっきりしない。その時に備えた地球工学の実証的研究を今から進めておく必要がある。

イラクを超えて
――中東への包括的な新アプローチを

2009年3月号

リチャード・N・ハース  米外交問題評議会会長
マーチン・インディク  ブルッキングス研究所セバン中東センター所長

イランは、秩序を不安定化させる危険な核開発プログラムの開発に向けて着実に歩を進めている。オバマ政権は、条件をつけることなく、テヘランに公式に交渉を申し入れるとともに、イラクのこれまでの進展を維持するために米軍撤退を慎重に進め、中東和平、特にイスラエルとシリアの和平に力を入れていく必要がある。これらを連動させ、成功へと導くには一つの領域での行動の結果が、他の領域でアメリカが実現しようとしていることにどう作用するかを想定し、避けられない混乱に直面しても路線を維持できるような統合戦略をとる必要がある。

Classic Selection 2009
台頭する中印とインド洋の時代
――21世紀の鍵を握る海洋

2009年3月号

ロバート・D・カプラン アトランティック・マンスリー誌記者

世界の人口の75%が沿岸から200マイル以内の陸地で生活していることを思えば、世界の軍事的未来は遠大な海域で活動する能力をもつ海軍力(と空軍力)によって左右される。しかも、海軍の場合、空・陸軍以上に経済利益、貿易システムを守る上で大きな役割を果たせる。……1890年、アメリカの軍事理論家のアルフレッド・セイヤー・マハンは「海上権力史論」で、「商船を守る海軍力が世界の歴史を形作る大きな要因になる」と指摘したが、現在、中国とインドの海軍戦略家は、マハンの著作をむさぼるように読んでいる。……いまやインドと中国のインド洋をめぐるライバル競争は、あたかも海洋版「グレート・ゲーム」の様相を呈している。

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