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テーマに関する論文

核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか

2010年3月号

チャールズ・ファーガソン 米科学者連盟会長

非核保有国が原子力発電用の原子炉を調達すれば、その分、核不拡散のリスクは高まっていく。原子力発電に切り替えるだけでは、有効な地球温暖化対策とはなり得ないが、原子力発電を新たに試みるに適した国が、厳格な安全基準、管理体制、核不拡散のガイドラインを受け入れるのであれば、核拡散のリスクを伴うとしても、原子力の平和利用を認めざるを得ない。また、核拡散を防ぐには、核能力を獲得することが自国の安全保障問題への解決策だと考えている国の安全保障上の不安を取り除き、核兵器を保有すれば国際関係において大国と同等の立場を手に入れられるとする間違った認識を正していく必要もある。この観点から、国連安保理の常任理事国に日本のような核を保有していない地域大国を迎え入れることも考えるべきだ。国際コミュニティは地域大国が抱く不安を取り除き、核を保有することで得られる過大な名声を剥ぎ取り、原子力エネルギーに非核保有国が抱く不合理な期待を引き下げていくように努力すべきだろう。そうすることで、核廃絶のビジョンを支えていくことができる。

世界は再び食糧不足の時代へ
――結局、マルサスは正しかったのか

2010年3月号

チャーリスル・フォード・ランゲ ミネソタ大学教授
チャーリスル・ピエール・ランゲ イエール大学学生

2009年の穀物生産がかつてないレベルへと増大したことで、価格の高騰は一時的に抑えられているが、今後数年間のうちに再び世界は食糧不足に陥り、市場価格が高騰し始めるようになる。緑の革命を経て、多くの人が、これで食糧の安定供給は確保されたと考えるようになったが、実際にはそうではなかったことはすでに最近の食糧価格高騰によって実証されている。ますます多くの穀物がバイオ燃料の原料として用いられ始め、中国や南アジアでの人口や所得が上昇するにつれて食糧需要はさらに高まっている。途上国、とくに最貧国は絶望的な状態に追い込まれている。すでに食料価格を高騰させるメカニズムは動き出している。

「北京コンセンサス」の終わり

2010年3月号

姚洋(ヤン・ヤオ)
北京大学国家発展研究院 副所長

一般に途上国の一人当たりGDPが3000~8000ドルに達すると、経済成長は頭打ちになり、所得格差が拡大して社会紛争が起きがちとなる。中国はすでにこの危険水域に入っており、すでに厄介な社会兆候が現れている。要するに、国の経済は拡大しているが、多くの人々は貧しくなったと感じ、不満を募らせている。特権を持つパワフルな利益団体やまるで企業のように振る舞う地方政府が、経済成長の恩恵を再分配して、社会に行きわたらせるのを阻んでいるからだ。経済成長と引き替えに共産党の絶対支配への同意を勝ち取る中国共産党(CCP)の戦略はもはや限界にきている。CCPが経済成長を促し、社会的な安定を維持していくことを今後も望むのであれば民主化を進める以外に道はない。

2010年1月13日にハイチのポルトーフランスを直撃した大地震による犠牲者は10~20万人に達し、その災害の復旧には少なくとも100億ドルの資金と、数十年単位の時間が必要になると言われている。クリントン政権で米平和部隊のディレクターを務めたラテンアメリカとカリブ海地域の専門家、マーク・L・シュナイダーは、今回の地震災害を「西半球地域における史上最大の国家災害」と描写し、グローバル規模の支援活動が必要になると強調する。「最初に必要なのは、建物と家で、もう一度すべてをやり直さなれればならない」。ハイチの復興にはおそらく数十年はかかり、その支援にはばく大なコストがかかるが、復興の目的は過去のハイチを再現することではない。それは、新しい教育システム、公共サービス機能を持つ「新しいハイチ」を建設することでなければならない。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)

このままでは核拡散の大潮流が起きる
―― 危機感をもって核不拡散レジームの再確立を

2010年2月号

グレアム・アリソン ハーバード大学政治学教授

北朝鮮が核を開発し、イランが核開発の道を歩んでいるにも関わらず、多くの人は世界の核秩序は安定していると考えている。たしかに、核保有国の数は9カ国に留まっているし、今後、北朝鮮とイランが核保有国と見なされるような事態にならなければ、近い将来に核拡散の潮流が生じて、数多くの国が核武装すると危機感を抱く必要はないと考えることもできるだろう。だが現実には、核不拡散レジームの形骸化が進み、一気に核が拡散してしまう、取り返しのつかない臨界点へと近づきつつある。盗み出された核によってテロが起きる危険もある。核秩序を守るための措置はすでに表明されているが、国際社会がそうした措置を現実に実行していかなければ、世界は一気に核拡散の大潮流に席巻される危険がある。今後の一年は非常に重要であり、各国が行動を起こすべきタイミングはいまだ。核不拡散レジームが崩壊したら、もはや手の打ちようはないのだから。

CFRインタビュー
トタル社CEO、ドマルジェリーが語る
エネルギーと環境のバランス

2010年2月

クリストフ・ドマルジェリー 仏トタル社CEO(最高経営責任者)

「今後がどうなるかについての予測もなしに長期投資を行うのは難しい」。したがって、「環境とエネルギーのバランス」に関する議論の結論がどのようなものになるか。「それが分かるのは早ければ早いほどよい」と考え、われわれエネルギー産業は焦りを感じている。だが一方で、「議論の結論次第では、われわれが想像さえしていないような極端な路線の修正を強いられるかもしれない以上、(長期投資の判断は)結論を待ったほうがよい」という考えももっている。「議論の結論が出るのは早いほうがいいが、・・・・環境とエネルギーの二者択一は良くない、バランスを取るべきだと考えている」。

台湾がアメリカを離れて中国の軌道に入るべきこれだけの理由
―― 台湾のフィンランド化を受け入れよ

2010年2月号

ブルース・ジリー ポートランド州立大学行政大学院准教授(政治学)

かつてフィンランドがソビエトの懐に入り、西側と東側の和解の橋渡しをしたように、台湾がフィンランド化して中国の軌道に入れば、その存在が、中国における前向きの変化をこれまで以上に刺激し、中国が平和的に台頭する可能性を高めることができる。すでに、台湾は事実上のフィンランド化路線をとっているし、中国も台湾のことを、これまでのようにナショナリズムではなく、戦略地政学の観点から冷静にとらえるようになった、これまでワシントンと北京の対立の矢面に立たされてきた台湾と中国の関係の実態は大きく変化している。今度はワシントンが、この歴史的シフトを直視し、それに適応していく番だろう。

サイバー攻撃に対する防衛策を
―― サイバーインフラの多様性を高めてリスク管理を

2010年2月号

ウェズリー・K・クラーク 元NATO軍最高司令官 (1997年~2000年)
ピーター・L・レビン DAFCA社最高技術責任者

サイバー攻撃は相手を攻撃するための魅力的な選択肢だ。陸上交通や航空の管制、電力の生産・供給、水道・下水道処理の制御、電子コミュニケーション・システム、さらには、高度に自動化されたアメリカの金融システムなど、国家にとって重要なインフラを、敵対勢力が遠隔地からサイバー攻撃のターゲットにする危険もある。ソフトウェアに対する攻撃は一般に認識され、対策も進められているが、ハード部門の防衛対策は遅れている。(誤作動を起こすように)欠陥を埋め込まれた集積回路は、ソフトウェアとは違って、パッチをあてて修復するのは不可能であり、これは、ふだんは市民になりすまして生活し、いざとなればテロリストの本性を現す究極の「スリーパー・セル」のようなものだ。サイバー攻撃の脅威を完全に封じ込めるのはもはや不可能だが、リスクを管理していくにはシステムの多様性を高めるとともに、開放的なオープンリソースの問題解決方法に学んでいく必要がある。

世界を変える四つの人口メガトレンズ
―― 先進国の衰退と途上国の台頭をどう管理するか

2010年1月号

ジャック・A・ゴールドストーン ジョージ・メイソン大学公共政策大学院政治学教授

21世紀の新しい現実は、世界のどの地域で人口が減少し、どこで増大するのか、どのような国で高齢者が多くなり、どのような国で若者が多くなるか、世界の人口動態の変化が国境を越えた人の移動にどのような影響を与えるかで左右される。欧米を中心とする先進国は人口面でも経済面でも衰退し、世界経済の拡大はブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、トルコ等の新興途上国の経済成長によって刺激される。しかも、若者の多い途上国から労働力不足の先進国へと大きな人の流れが必然的に起きるし、一方で、経済基盤の脆弱な途上国の若年人口が世界で大きな混乱を作り出す恐れもある。必要なのは、こうした21世紀の新しい現実に備えたグローバル構造の構築を今から始めることだ。

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