2008―2009年の金融危機の結末とは、「うまく規制されていない国内市場と資本の自由化という組み合わせは、壊滅的な事態を招き入れる」という東アジア諸国が10年前に学んだ教訓を、ついにアメリカ人とイギリス人も学んだということにほかならない。危機によって、アメリカ流資本主義への信用が完全に失墜したとは言えない。だが、少なくとも支配的なモデルではなくなりつつある。「その他の台頭」と呼ばれる現象は、経済、政治領域における新興国のパワー拡大を意味するだけではない。思想とモデルをめぐるグローバルな競争にも、その影響が出ている。欧米世界、特にアメリカは、もはや社会政策上の革新的な思想をめぐる唯一の拠点とはみなされてはいない。アメリカ、ヨーロッパ、日本は今後も豊かな経済的資源とアイディアの集積地であり続けるだろうが、すでに新興市場国もこの領域でのライバルとして台頭してきており、今後その存在感をますます高めていくことになるだろう。