ベビー・ギャップ
―― 出生率を向上させる方法はあるのか
2012年5月号
少子化によって課税できる労働人口が少なくなるにつれて、政府は困難な決定を下さざるを得なくなる。社会保障手当を切り捨てて引退年齢を引き上げるか、税率を大きく引き上げるしかなくなるからだ。さらに厄介なのは、労働人口が高齢化していくにつれて、経済成長を実現するのが難しくなっていくことだ。・・・低い出生率は、先進世界の福祉国家体制だけでなく、国の存続そのものを脅かすことになる・・・男女間の差別解消に真剣に取り組まず、女性のための適切な社会サービスの提供に熱心でなかったイタリアや日本のような国は出生率を上昇させられずにいる。これに対して、GDP(国内総生産)の約4%程度を、子育ての支援プログラムにあてているフランスやスウェーデンは出生率の低下を覆すことに何とか成功している。出産奨励プログラムには大きなコストがかかるし、伝統的な家族の価値を支持する人々の怒りを買う恐れもある。だが、低出生率の罠にはまってしまえば、これまでとは不気味なまでに異なる人口減少という未知の時代へと足を踏み入れることになる。