1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

テーマに関する論文

CFRアップデート
東アジア安全保障の進化を阻む日韓の歴史問題
―― 竹島訪問前、韓国で何が起きていたか

2012年9月号

ラルフ・A・コッサ
CSIS・パシフィックフォーラム会長

日韓関係の緊張と言っても、それが、関係の本質を脅かすことのないたんなる政治ショーにすぎないこともある。だが、最近の展開は違う。韓国政府は6月29日に、世論、野党勢力、メディアの反対に屈し、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の調印を先送りし、さらに、物品役務相互提供協定(ACSA)の締結の検討も棚上げすると表明した(その後も、韓国大統領が竹島を訪問し、日韓関係は紛糾している)。結局、(北朝鮮の脅威を含む)「安全保障課題を共有する(日韓という)二つの民主国家の関係強化に向けた前向きで現実主義的な試み」が、またしても「政治と歴史の複雑な遺産の犠牲にされてしまった」。・・・過去を克服するために、日本と韓国は切実に(未来志向で現実主義的な)政治家のリーダーシップを必要としている。ワシントンも日韓の歴史問題を解決するか、少なくとも非政治化できるような「日韓がともに受け入れられるような宣言」をまとめる公正な仲介者の役目を引き受けるべきだろう。

プーチン主義というシステム
―― ロシア社会の変化にプーチンは適応できるか

2012年9月号

ジョシュア・ヨッファ エコノミスト誌モスクワ特派員

現在のロシア市民には一連の自由が与えられている。イケアで安い家具を買ったり、外国で休暇を過ごしたりと、いまやロシア市民はヨーロッパ中間層と生活の特質の多くを共有している。野心と才能のある者にとっては、モスクワはキャリアを築く大きな舞台だ。政治に関わらないかぎり、ありとあらゆる場所で選択肢が用意されている。この仕組みゆえに、プーチンのロシアには国を否定する者がいなかった。不満があるならいつでもロシアを離れることができた。プーチン主義は、ソビエト時代の硬直した管理システムよりもずっと狡猾で現代的なのだ。だがプーチン体制は共産主義とは違って、一貫した世界観を示しているわけではなく、安定と権力を維持するためにつくられている。逆に言えば、現状に不満を持つ新しい政治家や政治運動は、「根深いイデオロギーの壁を乗り越える」必要がない。これが、今後プーチン体制を脅かす最大の問題を作り出すことになるだろう。

CFR Interview
投資バブルの崩壊で中国経済は長期停滞へ

2012年9月号

パトリック・チョバネック
清華大学経済・マネジメント大学院准教授

この数年来の中国経済の成長は、グローバル経済危機対策として北京が実施した景気刺激策が作り出した投資ブームによって牽引されてきた。当然、これは持続可能な成長ではなかった。今や投資バブルははじけ、不良債権が増大し、中国経済の成長率は、2009年以降、最低のレベルへと抑え込まれている。・・・すでに、中国の地方政府が不動産開発業者を、そして中央政府が国有企業や地方政府をベイルアウトし始めている。・・・中国政府は成長戦略の見直し、つまり、輸出・投資主導型モデルから内需主導型モデルに向けた調整を迫られている。中国経済をリバランスするには、為替政策、金利政策、課税策を見直して、資金が家計(預金者と消費者)へと流れるようにしなければならない。・・・有意義な調整プロセスによって中国経済がよりバランスのとれたものへと進化していけば、中国により多くの輸出をしたい国や企業、中国との貿易バランスを均衡させたい国に大きな恩恵がもたらされる。問題は、この調整が痛みを伴うために、成長戦略の見直しに対する政治的抵抗が避けられないことだ。

資源と環境は本当に脅かされているのか
―― 環境・資源保護か、経済成長か

2012年7月号

ビョルン・ロンボルグ コペンハーゲン・ビジネススクール准教授

「人類のあくなき欲求と世界の限られた資源は衝突コースにあり、そう遠くない将来に人類社会は運命の時を迎える」。経済成長を模索するのを止める以外に破滅を回避する方法はない。1970年代初頭にこう警鐘をならした『成長の限界』は、世界的大ベストセラーとなり、その後長期にわたって、この報告で示された議論と未来シナリオに人々は呪縛された。その結果、「貴重な時間と努力が、価値あるものではなく、根拠が疑わしく、時に有害な目的のために投入されてきた」。周辺的な問題に過剰反応し、より大きな問題への慎重な対応を妨げてしまった。この報告が示した未来シナリオはどうみても間違っていた。それでもその思想が今も生き続けていることは、(貿易促進のための)ドーハラウンドよりも、(環境問題を重視する)京都議定書が重視されていることからも明らかだ。だが、結局のところ、人を死に追い込む最大の要因が何であるかを考えるべきだ。それは貧困であり、経済成長がそれを阻止する最大の防衛策だ。

北朝鮮、中国、イランに対する毅然たる対応を
―― キューバミサイル危機の教訓

2012年8月号

グレアム・アリソン
ハーバード大学ケネディスクール教授

ケネディは、ソビエトがキューバに核ミサイルを配備しているという事実を前に、「長期的な戦争のリスクを低下させるには、短期的に戦争リスクを高める必要がある」と考えた。キューバ危機の教訓の一つは、戦争、そして核戦争のリスクでさえも引き受ける覚悟がなければ、巧妙な敵に対立局面において何度も裏をかかれてしまうということだ。イラン、中国、北朝鮮と相手が誰であれ、その一線を越えれば戦争も辞さないという「レッドライン」を設定しているのなら、その事実を敵対勢力に認識させ、実際に行動する決意をみせるべきだ。そうしない限り、警告は相手にされなくなる。

CFR Meeting
北米エネルギー安全保障の衝撃
――中東石油への依存度が半減すれば

2012年8月号

スピーカー
レックス・W・ティラーソン /エクソンモービルCEO
プレサイダー
アラン・マレイ /ウォールストリート・ジャーナル

いずれも大きな資源をもつカナダ、アメリカ、メキシコからなる北アメリカという枠組みでエネルギー政策、エネルギー安全保障をとらえればどうなるだろうか。資源の規模、使用できるテクノロジー、そして共通点の多い政策という点からみて、地域的な「エネルギー安全保障」の確立も視野に入ってくる。・・・仮にアメリカがペルシャ湾岸から原油を輸入する必要がなくなれば、国家安全保障政策も変化する。・・・アメリカが中東での軍事資源をどこか別の場所に移すと言い出せば、おそらく、大規模な石油消費国(中国)がその空白を埋めようとするだろう。・・・だが、重要なポイントは、中東石油がグローバル経済の安定の鍵を握っていることだ。この点では、中東石油への依存度を減らしていくとしても、アメリカはこの地域に今後も大きな関心を向けざるを得ないはずだ。・・・(R・W・ティラーソン)

ギリシャの財政赤字隠蔽問題に端を発する危機は瞬く間に周辺国のソブリン債務危機と化していった。いまやユーロ危機はいくら救済策をとっても火を消せないヨーロッパ全体を覆う銀行危機へと姿を変えつつある。ここで銀行を救済すれば、公的部門の債務はますます肥大化し、今度はフランスを含む、ヨーロッパ主要国がソブリン危機に直面する危険さえある。かたや、緊縮財政への反発からヨーロッパの政治の流れは変わり、すでにマーストリヒトのルールは放棄されている。「ギリシャ後」もユーロは存続できるのか、そしてEUはユーロショックに政治的に持ち堪えることができるのか。世界経済を揺るがすユーロ危機の全貌。

アジアシフト、アラブの春、北朝鮮とイラン
―― オバマ外交の功罪を検証する

2012年7月号

マーチン・インディク ブルッキングス研究所副会長 / ケニス・G・リーバーサル ブルッキングス研究所中国センターディレクター / マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所外交政策研究ディレクター

オバマ政権が2011年末に表明したアジアシフト(リバランシング)戦略はアメリカのリーダーシップを変化させていくための試金石だ。アジアシフト戦略を成功させれば、貿易促進と投資の枠組みが形成されるだけでなく、現地の部隊と緊密に連携するより小規模で柔軟な戦力へと米軍を再編することもできる。だが、オバマがそのような新しい秩序への移行をうまく模索していけるかは、イランの核開発問題をうまく決着させられるかどうか、そして、アメリカの政治・経済力を再生できるかどうかに左右される。イラン問題が制御不能になり、再び中東の安全保障がアメリカ外交の最優先課題にされるような事態になれば、他の重要な問題が再び後回しにされてしまう。また、アメリカの経済基盤がこのまま劣化していけば、長期的な国力、そして賢明な外交政策は維持できなくなる。国内的衰退を食い止めなければ、現状を大きく上回る厄介な事態にアメリカと世界は直面することになる。

Classic Selection 2004
起業型経済の構築を

2012年7月号

カール・シュラム ユーイング・マリオン・コーフマン財団会長

デルやシスコ・システムズなど、アメリカ経済の富と生活レベルを引き上げているのは起業によって立ち上げられた企業である。こうした新企業は経済の技術革新を誘導するだけでなく、新規雇用をつくり出し、景気循環がつくり出す困難な時期の衝撃を緩和し、経済の成長と進化を刺激する。アメリカに存在する起業と大学、大企業、政府を結ぶ「4セクターモデル」は、経済停滞に直面している先進国だけでなく、途上国も導入できる。起業にまつわる文化的な制約は取り払うことができる。

CFR Interview
イラン・シリア問題に揺れるロシア外交
――なぜプーチンは中東を歴訪したか

2012年7月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

(シリア問題をめぐって)「欧米とアラブ世界が連帯し、その一方にロシアとイランがいる」という構図ができあがってしまっている。これまでシリアのバッシャール・アサドを支持してきたために、ロシアは非常に厄介な状況に追い込まれている。プーチンが最近中東を歴訪したのは、まさしく、ロシアの中東外交が手詰まり状況にあるからだ。彼はロシアの立場を中東の指導者に説明する必要があったし、なぜ中東諸国の批判に耳を貸そうとしないかについて弁明を試みる必要があった。いまや、シリアへの路線ゆえに、中東におけるロシアのイメージは大きく失墜し、アラブ諸国は「ロシア政府は経済的、地政学的思惑絡みでアサド政権を支持しており、中東地域の政府と民衆が気に懸けている人道問題を無視している」と批判している。

Page Top