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テーマに関する論文

ビッグデータやモノのインターネットに象徴される情報テクノロジーの進化、ヒトゲノムの解読、そして合成生物学の進化はわれわれの社会や生活だけでなく、人間の生命観や価値観そのものを大きく変化させている。一方、資本主義民主体制は、少子高齢化による社会保障負担の重圧だけでなく、民主体制を支えてきた自由とプライバシーを蝕む監視社会・ビッグデータ権威主義の潜在的脅威にもさらされている。そして、利便性の高い情報技術の進化と拡散が一方で監視と抑圧のツールを作り出すなか、歴史や領土をめぐる古くからの確執が再燃している。現状は、技術によって急速に変化した価値に翻弄され、困惑する社会が、新しい国家構造と社会契約のアイデンティティを模索し、もがいているかにみえる。先端技術の進化と価値観の変貌、少子高齢化と資本主義民主国家体制の危機、歴史的確執の再燃、そして変化するグローバル経済は2014年の世界をどこへ導くのか。

韓国経済のポテンシャルとリスク

2014年1月号 

マーカス・ノーランド ピーターソン国際経済研究所 上席副会長(研究部長)

韓国を新興国と呼ぶのは、もはや時代遅れかもしれない。この国は豊かだし、技術面でも洗練され、イノベーション、経済改革、健全なリーダーシップという面で見事な成果を上げている成熟した民主国家だ。しかし、それでも韓国を先進国市場とみなすのは無理がある。経済の貿易依存度が高いために、主要先進国と比べて、市場の変動に翻弄される度合いが大きく、これは韓国経済が克服すべき重要な課題の一つだ。企業部門への集中度が高く、社会の高齢化が進んでいること、政府と企業の不透明な関係、そして、北朝鮮という政治的に危険な隣国を抱えていることも大きな課題だ。北の隣国が唐突に崩壊する可能性は現に存在する。その場合、韓国が大規模な資金を北に援助するか、北朝鮮の民衆が韓国へと流れ込むかのいずれかが現実になる。・・・

CFR Meeting
世界エネルギーアウトルック
―― 中東原油の重要性は変化しない

2014年1月号

ファティ・ビロル 国際エネルギー機関チーフエコノミスト、セオドア・ルーズベルト バークレーキャピタル・クリーンテク・イニシアティブ マネジングディレクター

エネルギー市場における各国の役割が変化しつつある以上、急速な変化のなかで市場の流れを読み、自国を適切な場所に位置づける必要がある。そうしない限り、敗者になる。アメリカは天然ガスの輸出国に姿を変え、中東諸国は石油消費国への道を歩みつつある。ヨーロッパ、アメリカという輸出市場を失いつつあるロシアとカナダは、天然ガス輸出のターゲットを次第に中国や日本などのアジアに向け始めている。そして、シェールガス革命が進展しても、世界の天然ガス価格の地域格差は、今後20年はなくならない。もっとも重要なのは、アメリカ国内における原油生産の増大を前に、「もはや中東に石油の増産を求める必要はない」と考えるのは、政治的にも分析上も完全に間違っていることだ。生産コストが低くて済む、中東石油へ投資しておかなければ、アメリカの石油増産トレンドが終わる2020年頃には、世界は大きな問題に直面する。中東石油の投資を止めれば、原油価格の高騰は避けられなくなる。

ロウハニはイランのゴルバチョフになれるか

2014年1月号

スティーブン・コトキン プリンストン大学歴史学教授

当時のミハイル・ゴルバチョフは、ソビエトで過激な改革を実施しているとも、していないとも思わせる曖昧な発言をしていたために、専門家もソビエトで何が起きているかを理解できなかった。実際には、ゴルバチョフは「共産党独裁体制を終わらせる」という意図はもっていなかった。むしろ共産党体制の終焉への流れは、彼が、市民団体の組織化を認め、検閲を緩め、自由選挙を導入したことによって作り出された。つまり、イランの穏健派指導者ロウハニが抜本的な改革ではなく、政治や社会に関わってくる名ばかりの改革を表明したときこそ、われわれは注目する必要がある。そうした改革は、改革のアジェンダが想定する以上の社会・経済的流れ、政治的変化を呼び込み、ロウハニ自身管理できないような流れを作り出す可能性がある。

Foreign Affairs Update
グリーンランドの資源開発ブーム
―― 開発と汚染リスクに揺れる島民たち

2013年12月

アンナ・カタリナ・グラブガード フリーランスジャーナリスト

オーストラリア、カナダ、中国を含む各国の投資家が、鉱物資源開発をめぐって、グリーンランドに押し寄せている。大きな資源が存在すると長く言われながらも、これまではグリーンランドの資源開発を阻む障害が存在した。ごく最近まで氷床が資源豊かな大地を覆い尽くし、しかも、ウランの掘削が禁止されてきたからだ。潤沢なウラン資源と混在する形でレアアースその他の資源が存在するため、事実上、すべての鉱物資源開発ができなかった。だがいまや氷床は溶け出し、グリーンランド自治政府はウラン掘削を禁止する法律を撤廃している。資源開発に異を唱える人はいない。だが、ウランが掘削されることを現地の多くの人が心配している。注意深く掘削しなれば、ウラン掘削によって土地や水が数世代にわたって汚染されるリスクがあるからだ。・・・

暴かれたアメリカの偽善
―― 情報漏洩とアメリカのダブルスタンダード

2013年12月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学准教授(政治学、国際関係論)
マーサ・フィネモアー ジョージ・ワシントン大学教授(政治学、国際関係論)

E・スノーデンがリークした情報によって情報源や情報収集の手法が明るみに出たとはいえ、予想外のものは何も出てきていない。専門家の多くは、かねて「アメリカは中国にサイバー攻撃をし、ヨーロッパの政府機関を盗聴し、世界のインターネット・コミュニケーションを監視している」と考えてきた。リークが引き起こしたより深刻な問題は、アメリカのダブルスタンダードが明らかになり、理念と原則の国としてのアメリカのイメージを失墜させたことだ。アメリカは、自分たちが唱道する価値を一貫して擁護し、順守してきたわけではなかった。この矛盾を前に、他の諸国は「アメリカが主導する秩序は正統性を欠いている」と判断するかもしれない。ワシントンは(米情報機関の行動に対する)厳格な監視体制を導入し、政策に関する論争をもっと民主的に進めるべきだろう。安易な偽善(とダブルスタンダード)の時代はすでに終わっている。

CFR Briefing
高齢化する中国社会の社会経済・外交的意味合い

2013年12月号

ヤンゾン・ファン/ 米外交問題評議会シニアフェロー(公衆衛生担当)

中国社会は急速に高齢化している。2050年までには、65歳以上の人口が総人口のほぼ4分の1の3億3000万人に達すると考えられている。中国の高齢化は、三つのはっきりとしたトレンズによって促されている。第1は、この数十年における力強い経済成長とともに、平均余命が1981年の68歳から現在の74歳へと延びたこと。第2は、(1950―60年代に生まれた)ベビーブーマー世代が高齢者の仲間入りをしつつあること。そして第3は、1979―1980年代初頭に導入された厳格な人口管理政策によって出生率が大きく低下し、高齢人口の比率を相対的に引き上げていることだ。当然、生産的な労働力の規模が縮小し、その結果、賃金レベルが上昇し、労働集約型産業における中国の競争力は低下する。しかも、年金、医療、社会保障制度はうまく整備されていない。・・・その経済的、外交的意味合いは何か。・・

合成生物学のポテンシャルとリスク
―― 人類社会への大いなる貢献か、それとも悪夢か

2013年11月号

ローリー・ギャレット 米外交問題シニアフェロー (グローバルヘルス担当)

これまで、生物学者たちは外の世界における生命体を観察し、生息環境を変化させることでその詳細と行動を見極め、何が起きるかを見守ってきた。だが、新しい生物学の世界にあっては、科学者たちは生命体そのものを創造し、それを内側から学ぼうとしている。合成生物学によってインフルエンザ・ワクチンを一夜にして製造できるようになり、HIVウイルスに対するワクチンも、二酸化炭素を食べ、化石燃料に代わる安全なエネルギーを放出する微生物も作り出せるかもしれない。だが、これらが人類社会を滅ぼす兵器になる恐れもある。合成生物学の進化は、(人類に貢献するポテンシャルも人類社会を破壊へと導くリスクも秘めた)「デュアルユース」のジレンマをもたらした。これこそ、一世紀前に化学研究が、それから一世代後に物理学研究が直面し、現在、生物学研究を大きな力で席巻しつつあるジレンマに他ならない。

CFR Update
中国経済と都市化政策
――問われる成長と社会保障のバランス

2013年11月号

エリザベス・エコノミー
米外交問題評議会シニアフェロー
(中国・環境問題担当)

李克強は、中国経済の成長を維持していくには都市化政策を進めることが不可欠だと確信し、都市インフラを整備しつつ、地方で生活する人々を都市へと移住させる政策を最重要アジェンダに定めている。実際、「投資・輸出主導型経済」から「消費主導型経済」へと中国経済をリバランシングさせる上でも、都市住民のほうが地方生活者よりも3・6倍も多く支出するだけに、都市化計画は今後の中国経済の重要な鍵を握っているかもしれない。だが、都市化は資源圧力と汚染も増大させる。地方出身者に都市の戸籍を与え、社会保障の受給資格を与えるだけで、膨大な資金拠出が必要になる。・・・

CFR Interview
上海自由貿易区は第2の改革開放路線になるか

2013年11月号

ダニエル・H・ローゼン
ローディアムグループ ファウンディングパートナー

多くの意味で、上海自由貿易区構想を鄧小平の改革開放路線と重ね合わせて考えてもおかしくはない。1970年代末、鄧小平はルールと条件を変えない限り、中国沿海部の経済成長を加速できないこと、そして、改革を適用する地域を広げていく必要があることを理解していた。さらに彼は、国内の政治・経済領域の既得権益層が、そうしたルールの変更を中国の利益を損なうと批判することも事前に織り込んでいた。改革の価値を特定の経済特区で立証した上で、全土へと広げていく必要があると彼が考えたのはこのためだ。・・・1980年代の経済特別区では製造業投資の自由化が重視されたが、上海自由貿易区では金融の自由化が重視されている。今回も、国レベルでの改革を一か八かで実行するのではなく、地域的に改革を導入して、自由化への流れを作り出すという手法がとられている。いまや中国は、市場経済に準じた制度ではなく、効率的な市場経済そのものを完全に導入したいと考えている。

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