アベノミクスの黄昏
―― スローガンに終わった構造改革
2014年7月号
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3本の矢すべてが標的を射抜けば、安倍政権が強気になってもおかしくはない。だがすでに2本の矢は大きく的を外している。財政出動による景気刺激効果は、赤字・債務削減を狙った時期尚早な消費税率の引き上げによって押しつぶされ、構造改革は曖昧なスローガンが飛び交うだけで、具体策に欠ける。量的緩和も、他の2本の支えなしでは機能しないし、物価上昇の多くは円安による輸入品の価格上昇で説明できる。結局、自信を取り戻すには、有意義な構造改革を通じて停滞する日本企業の競争力を回復するしかない。そうしない限り、一時的な景気浮揚策も結局は幻想に終わる。問題は、安倍首相がもっとも重視しているのが経済の改革や再生ではなく、安全保障や歴史問題であることだ。