動き出したクルド連邦の夢
―― 政治的影響力を手にしたトルコのクルド人
2015年8月号
シリアのクルド人勢力(PYD)がイスラム国との軍事的攻防で大きな勝利を手にし、一方トルコ国内でもクルド系政党(HDP)が最近の選挙で大きな躍進を遂げた。だが、この展開から最大の恩恵を引き出せるのは、HDPを立ち上げ、PYDへの影響力をもつクルド労働者党(PKK)だろう。PKKがトルコ政府との停戦を維持できれば、HDPを通じてクルド人が民主的な方法で自治を獲得できる見込みはますます大きくなる。PKKは、分離独立は求めていない。むしろ、中東における3000万のクルド人を束ねる「汎クルド連邦」の実現を夢見ている。トルコとシリアの双方で自治的なクルド地域を確立するという夢が実現するかどうかは予断を許さないが、最近の進展が、すでにトルコと中東の政治地図を変化させているのは間違いないだろう。