気候変動と次の難民危機
―― 沈みゆく島嶼国の運命
2015年11月号
科学者たちは、ツバルは今後50年で完全に水没し、モルジブが水没するまでの猶予はあと30年と予測している。これらの島に住めなくなるとすれば、その近隣の島も同じ運命を辿る。太平洋の22の島国で暮らす920万人、そしてモルジブ諸島の34万5000人が住む場所を失う。ヨーロッパの海岸に押し寄せる大規模な難民ほど、海面水位の上昇がメディアの関心を引くことはないが、国家と領土が海面下に姿を消し、消失するというかつてない事態の帰結は、ヨーロッパの難民危機同様に深刻なものになる。最大の問題は、気候変動難民の場合、国と主権を完全に失ってしまうことだ。難民の受け入れ国は、入国を認めようとしている人物が誰なのか、その母国が消失しているとすれば、一体誰が彼らに責任を負うのかを考え込むことになるだろう。気候変動がすすむなか、国の存続と海洋境界線の安定した存続を想定する国際法は過去の遺物と化しつつある。・・・