1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― アメリカの衰退に関する論文

アルカイダ対イスラム国
―― アフガンにおける権力闘争

2021年11月号

コール・ブンゼル  フーバー研究所フェロー

タリバンは、アルカイダとの関係を維持する一方で、アフガンの正統な支配者として国際的な承認を得たいと考えている。アルカイダの「トランスナショナルな(テロ)アジェンダ」は共有していない。タリバンの利益認識はアフガンに始まりアフガンに終わる。一方、イスラム国(ISIS)は強硬路線をとることで、タリバン内の強硬派を取り込んでアフガンでの基盤を拡大したいと考えている。(米軍の撤退と)タリバンの復権によって、アルカイダは組織を再編する上でこの10年で最大の機会を手にするかもしれないが、それを生かすのは容易ではない。一方、ISISが民衆の支持を勝ち取り、マンパワーと資金面でタリバンと五分に持ち込むのもおよそ不可能だ。・・・

中国のアフガニスタン・ジレンマ
―― 失われる安定と予測可能性

2021年11月号

セス・ジョーンズ  米戦略国際問題研究所(CSIS) シニアバイスプレジデント ジュード・ブランシェット  米戦略国際問題研究所(CSIS) 中国研究部長

「ポストアメリカの中央アジア」情勢は中国に恩恵よりもリスクをもたらすことになるだろう。国境の西側でアフガンという破綻国家に直面し、南西側ではインドとの緊張が高まっている。北東には北朝鮮という不安定で厄介なパートナーがいる。しかも、台湾海峡を含めて、アメリカとの競争はエスカレートしている。習近平は安定と予測可能性を模索しているが、アメリカのアフガン撤退後の地域情勢では、そのどちらも手に入れられなくなるだろう。実際、アメリカのアフガン撤退は、(台湾を含む)東部での競争のエスカレーションに集中すべきタイミングで、北京を身動きできなくする恐れがある。

アフガン難民はどこに行くのか?

2021年10月号

リンジー ・メイズランド  Writer@cfr.org

2021年8月、タリバンがカブールを含むアフガニスタンの多くの地域を掌握して以降、すでに数万人が国を後にしている。国連難民高等弁務官事務所によると、年末までに50万人が家を追われて難民化する恐れがある。その多くは、陸路で隣国のイランとパキスタンに向かっている。これまでのところイランとパキスタンは、これ以上の難民を受け入れることを嫌がり、国境線の一部を閉鎖し、文書をもたないアフガン難民は国外追放処分にすると表明している。今回の危機ですでにアフガンから国外へ逃れた8万人の一部はアフガン戦争中に米軍やその家族に協力した個人が利用できる特別移民ビザ(SIV)を保有するか、その対象とされる資格を満たしている。数千人のアフガン難民がアメリカへの入国を果たしたが、より多くのアフガン人が世界各地の米軍基地に一時的に収容されている状態にある。

白人至上主義と欧米の極右テロ
―― 社会的レジリエンスの強化を

2021年10月号

シンシア・ミラー=イドリス アメリカン大学教授

9・11後の暴力的なジハード主義の台頭は、アメリカ政治を歪め、極右の過激主義思想の肥沃な温床を作り出した。アルカイダを含むイスラムテロ組織が、欧米における極右勢力の妄想を裏付ける存在だったからだ。こうして、米欧社会は極右勢力が何十年も煽ろうと試みてきた恐怖に取り憑かれた。2020年、米国内おけるテロの件数は1994年以降で最多となり、これらの事件の3分の2が白人至上主義者などの極右過激派によるものだ。依然としてイスラム主義テロが最大の脅威とされるヨーロッパでも極右の社会暴力が増えている。いたるところに巣くう過激主義と闘う最善の方法は、それを抑え込むだけでなく、社会のレジリエンスを高め、極右勢力のアピールに対する脆さを克服していくことだ。

今度こそアジアシフト戦略を
―― 経済・安全保障エンゲージメント

2021年10月号

ザック・クーパー アメリカンエンタープライズ研究所 リサーチフェロー アダム・P・リフ インディアナ大学 準教授(国際関係論)

バラク・オバマがアジアリバランシング戦略を表明して10年。そこにある現状は「野心的なレトリックと控えめな行動間のギャップが作り出した不安と懸念」でしかない。今後、三つのポイントが重要になる。アジアへの関与を中国への対応枠組みの一部としてではなく、前向きなアジェンダ、地域戦略ととらえること。アメリカが離脱した後に成立した、TPPをベースとする「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」の参加に向けて交渉を再開すること。そして、中東での軍事プレゼンスを削減してアジアでの抑止力を強化することだ。特にアジアの同盟国やパートナーと協力して、力強い拒否的抑止戦略を考案し、武力行使ではアジアでの目標は達成できないと北京に納得させる必要がある。ワシントンがアジアリバランスといったレトリックを何回使ったかはほとんど意味がない。重要なのは、実際にそうするかどうかだ。

経済制裁依存症は何を物語る
―― アメリカの衰退、外交的影響力の低下

2021年10月号

ダニエル・W・ドレズナー  タフツ大学フレッチャースクール 教授(国際政治)

経済制裁によって相手国がワシントンの意に沿って行動するようになるのなら、経済制裁に依存するのも無理はない。だが、実際にはそうではない。制裁の効果をもっとも前向きに評価した分析でも、制裁が譲歩につながるのはせいぜい3分の1から2分の1程度だ。ワシントンが制裁に固執するのは、その効果とはほとんど関係なく、実際には、アメリカの衰退が最大の要因だ。もはや無敵の大国ではなく、広く世界に影響力を行使する力はない。アメリカの軍事力と外交的影響力は相対的に縮小している。制裁は、管理された環境で効果を発揮する特別な手段で、日常的に使用できる万能ツールではない。制裁は手術用のメスであり、スイス・アーミー・ナイフのように扱うべきではない。

分裂した世界とグローバルな脅威
―― パンデミック・気候変動と大国間競争

2021年10月号

トーマス・ライト  ブルッキングス研究所米欧センター所長

この100年で最悪のパンデミックはいまも収束していない。気候変動危機も加速する一方だ。しかも、大国間競争という環境下で、ワシントンはこれらのトランスナショナルな脅威に対処していく戦略を考案していかなければならない。米中のライバル関係は熱い戦争は引き起こしていないが、冷たい戦争に火をつけかねない状況にある。だが、未来のパンデミックに備え、気候変動と闘うには、ライバル諸国、特に中国との協調を模索しなければならない。だが一方で、協調路線が破綻した場合に備える必要もある。同盟諸国とパートナー諸国が、グローバルな公共財のためにより大きな貢献をするバックアッププランも用意しておくべきだろう。2020年には存在しなかったそうした計画を、次の危機までに間違いなく準備しておかなければならない。

中国とタリバン
――互いの人権侵害に目をつむる

2021年10月号

イアン・ジョンソン  ピュリツアー賞受賞ジャーナリスト

ある意味では、タリバン率いるアフガンは中国の完璧なパートナーかもしれない。「機能不全で北京への依存度が高く、中国がすることは何でも受け入れる」。タリバンと北京が共に相手の内政に干渉しないことが両国の関係の前提とされるはずだ。これは、北京にとっては「タリバンがアフガンとか細い国境を共有する新疆地域に過激主義を輸出せず、この地域のウイグル人イスラム教徒を対象とする北京の人権弾圧への非難を控えること」を意味する。一方、タリバンにとっては「中国市民が直接的に関わるケースでない限り、北京がタリバンの人権侵害を問題にしないこと」を意味する。おそらく、タリバンが新疆のイスラム教徒を支援するリスクを抑え込むことが北京の大きな狙いだろう。もっとも重要なのは、北京のアフガン関与が「中国の利益を支持する限り、相手国の内政を問題にすることはない」という、他国への北京の全般的エンゲージメントルールを示すことになると考えられることだ。


反アジアヘイトクライムと対中政策
―― 強硬な対中レトリックがレイシズムを助長する

2021年9月号

ラッセル・ヨング サンフランシスコ州立大学  教授(アジア系アメリカ人研究) ジェシカ・J・リー クインシー研究所 シニアリサーチフェロー(東アジア担当)

アジア系アメリカ人を標的とする社会暴力が増加している。米国内のアジア系成人の45%に相当する1000万人以上が「パンデミックが始まって以降、人種差別を直接的に経験している」と調査に答えている。歴史的にみても、地政学的不安が高まった時代には、アメリカではアジア系市民や移民が攻撃の対象にされてきた。ワシントンが、中国の脅威を極端なレトリックで誇張するなか、北京とつながっているかどうかに関係なく、米社会の一部の人々はアジア人やアジア系アメリカ人を敵視している。ワシントンが「中国のことを、アメリカのあらゆる苦境の憂さを晴らすサンドバッグ」として使うのを止めなければ、アジア系アメリカ人は今後も脅かされ続けるだろう。

適切な中ロ離間戦略を
―― ロシアを不幸な結婚から救うには

2021年9月号

チャールズ・クプチャン  米外交問題評議会シニアフェロー ジョージタウン大学国際関係学教授

反欧米による強い絆で結ばれているかにみえる中ロも、水面下では亀裂を抱えている。中国がめざましい勢いで台頭し、自負心を高めているのに対して、ロシアは停滞し、不安を高めている。超大国としての地位を取り戻したいと願いつつも、中国のジュニアパートナーに甘んじている。このギャップと非対称性がバイデンにはチャンスとなる。中ロを離間させるには、中国との関係で明らかになったロシアの脆弱性を是正すること、つまりロシアが自国の問題に対応できるように助けることで、バイデンは、モスクワが北京から距離をおくように促せるだろう。中ロを離間させれば、両国の野心を牽制し、アメリカとその民主主義的なパートナー国家が、イデオロギーの多様化が進む多極化世界で、リベラルな価値観や制度を守り、平和的な国際システムを形作るのも容易になるはずだ。

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