1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― アメリカの衰退に関する論文

米外交問題評議会リポート
イラクに侵攻すれば、世界はどう反応する

2002年12月号

スピーカー パトリック・ジャロー (フランス)ルモンド紙ワシントン支局長 ヒシャム・メルヘム (レバノン)アッサフィル紙チーフ・コレスポンデント ジャスティン・ウェブ BBC(イギリス放送協会)ワシントン特派員 司会 フランク・セスノ ジョージメイソン大学教授

アラブ世界では、アメリカがイラクを粉砕したいのは、イラクが中東地域でのイスラエルの覇権確立を阻む唯一の力を持つ国だからだ、という考えも流布している。民主主義を相手に押しつけることはできない。だが、人権を尊重するような政権をイラクに樹立するというのならまだ話はわかる。ジェファーソン流の民主主義者を中東に見いだそうとしても無理だが、政府の説明責任、透明性、市民の政治参加、マイノリティーの尊重、女性の権利の確立などの基本的価値をアメリカと共有している人材なら見いだせる。(ヒシャム・メルヘム)

アメリカのパワーの限界

2002年11月号

マイケル・マンデルバーム 外交問題評議会シニア・フェロー

他の追随を許さぬパワーを手にしたアメリカは、いまやハイパーパワー(超国家)としての地位を手にしているだけでなく、アメリカ的価値を反映する平和・民主主義・市場経済思想がグローバル・スタンダードとされている。だが、そのアメリカも、平和・民主主義・市場経済思想となじみのよい安全保障、経済上の国際的公共財を一人で維持していく力と政治的意思はないし、そうした思想が根付いていない地域にこれを強引に導入させる力もない。今後の秩序は、「アメリカが国際的公共財の維持のためにこれからも大きな役割を引き続き受け入れるのかどうか」、そして、相手地域の文化がいかに変貌するかによって左右されることになる。

論争
アメリカの覇権と単独行動主義

2002年11月号

ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学ケネディスクール学部長 ステファン・R・グロバード ブラウン大学歴史学教授 ブルース・ラセット イエール大学国際関係論教授

以下は、この秋にフォーリン・アフェアーズ誌上で発表されたアメリカの覇権と単独行動主義をテーマとする三論文、「アメリカの覇権という現実を直視せよ」(ステファン・G・ブルックス&ウィリアム・C・ウォールフォース、「論座」二〇〇二年九月号)、「ジョージ・W・ブッシュの世界像」(マイケル・ハーシュ、同十月号)、「新帝国主義というアメリカの野望」(G・ジョン・アイケンベリー、同十一月号)に寄せられた反論とコメント。

グローバル化の衝突

2002年8月号

スタンレー・ホフマン ハーバード大学教授

われわれが暮らしているのは、脆弱な統治制度と未発達の市民社会という欠陥を持つグローバル社会と、国家間の格差が大きく、破綻国家を内包する国際社会が重なりあう世界だ。統治制度も成熟した市民社会も持たないグローバル化は、平和ではなく、紛争と反発の種をまき散らし、生活の基盤を奪われた人々は、報復とテロ攻撃のなかに自尊心を見いだしている。テロリズムが、国家間関係とグローバル社会を結びつける血なまぐさい絆の役目を果たしているこの世界を、どうすればより住みやすくできるのだろうか。

東南アジア
――対テロ軍事支援の限界と弊害

2002年7月号

ジョン・ガーシュマン 両半球間資源センター上級アナリスト

アメリカが対テロ戦争の一環として東南アジアを「軍事的に支援」するのは間違っている。人権侵害を起こすことで悪名高い東南アジア諸国の軍隊は、多くの場合、政治エリートの一部やテロ組織を含む犯罪組織と手を結んで、むしろテロを助長する社会環境を育んでいるからだ。軍隊を支援しても、民主体制をさらに弱め、イスラム過激派の魅力を高めてしまうだけだ。ワシントンは軍事援助や各国の法執行当局との連帯だけでなく、東南アジアが直面する社会問題への「文民統制型」の対応策を支援する必要がある。

同時多発テロ後のインドの内政と外交

2002年7月号

デニス・クックス ウッドロー・ウィルソンセンター上級政策研究員

同時多発テロ以降、米印は、政治・安全保障・経済に関する共通の利益をますます重視するようになり、いまや両国の関係は大きく前進し、緊密化している。だが、バジパイ政権は、対米外交では成果を上げつつも、カシミール紛争をめぐってパキスタンと深刻な軍事的対立局面にあるし、国内でも、政治危機、宗教対立、低迷する経済などの難題に直面している。対米関係の改善という成果を、パキスタンとの軍事的危機の解決、国内経済問題の解決に、どうすれば結びつけられるのか。

米外交問題評議会リポート
「軍事的対テロ戦争」では問題は解決しない

2002年7月号

◎スピーカー ブレント・スコークロフト ブッシュ・フォード政権大統領補佐官 カーター政権大統領補佐官 ズビグニュー・ブレジンスキー  クリントン政権大統領補佐官  サミュエル・バーガー クリントン政権大統領補佐官  ◎司会 CNN上席副会長 フランク・セスノ

アメリカ市民を対テロ作戦に動員する努力、テロの危険を世界に認識させる努力はうまくいっている。だが、政府はテロ問題にばかり焦点を絞るという間違いを犯している。これでは、非常に複雑で、混乱している世界の現実に目を向けず、そうした現実がつくり出す一つの現象であるテロ問題だけに、取り憑かれたように関心を持ってしまうことになる。(Z・ブレジンスキー)

サウジ王国の苦しみ

2002年6月号

エリック・ルーロー 元駐トルコ・フランス大使

米メディアからは対米テロをめぐって批判され、国内でも、経済不振、そして社会的緊張と反米主義の高まりに悩まされるサウジアラビア政府はいまや身動きがとれなくなり、王族内の改革派も、保守派が牛耳る政治・宗教システムの囚われ人となっている。近代化と経済発展を促進しようとするアブドラ皇太子の決意は本物だが、その改革の規模とペースは、彼の意図ではなく、むしろ、矛盾に満ちたこの国の政治力学とグローバル化が呼び込む外的圧力の綱引きによって左右されることになろう。

イスラム世界とメディアの攻防

2002年5月号

デイビッド・ホフマン 「インターニュース・ネットワーク」代表

アメリカの正義や価値観をいかに訴えかけても、イスラム世界の反米感情がなくなることはない。政治的失策への市民の不満の矛先を、自国政府ではなく、アメリカに向かわせてガス抜きさせるという、アラブ社会の安全弁としての国営メディアが存在するからだ。グローバル社会にイスラムの人々が参加できるようにするには、まずイスラム社会の市民が情報へのアクセスと表現の自由を享受できるようにし、女性やマイノリティーに発言権を認めなければならない。イスラム社会が表現の自由を獲得して初めて、テロが生まれた暗闇に日が差し込むようになる。

軍事作戦後の対立を回避せよ

2002年2月号

マイケル・ハワード オックスフォード大学歴史学教授

「テロリストは英雄ではなく犯罪者である」とみなす前提が中東世界で受け入れられていない状態で、民間人に犠牲が出ることが避けられない対テロ軍事作戦を続けるのは、敵に勝利を与えるに等しい。テロに対する闘いを成功へと導くには、軍事作戦を早く終え、欧米にとって未知なるイスラム世界において「人心を勝ち取る闘い」を展開する必要がある。そして、この闘いの最前線はアフガニスタンではなく、近代化志向の政府が伝統主義者の反動によって脅かされている中東のイスラム諸国である。

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