迫り来る湾岸経済の危機
―― 経済の多角化を阻む障害をいかに克服するか
2015年12月号

湾岸の産油国の経常収支は今後急速に悪化していく。国際通貨基金(IMF)の予測によれば、5年後の2020年までに、湾岸諸国の経常赤字合計額は7000億ドルに達する。原油安が続けばこの数字がさらに膨らむ恐れもある。原油価格の変動に翻弄されないように経済の多角化を進める必要があることはかねて理解されてきたが、改革は進んでいない。問題は、そうした改革によって支配エリートの権力基盤が損なわれてしまうことだ。構造改革によってビジネス界の収益が拡大して、影響力が大きくなれば、支配者の権力基盤が揺るがされる。つまり、経済の多角化を進めるには、改革によって資源輸出の収益に依存するエリートが何かを失うとしても、それを埋め合わせる恩恵があることを指導者たちが納得する必要がある。先ず手を付けるべきは金融部門の改革と整備。市場の自由化、そして地域的経済協調の確立だろう。