デジタル時代の外交
―― 大使館は依然として必要か
2016年5月号

かつては政府にとって外国情報収集の要だった大使館も、リアルタイムのメディア報道やリスク管理会社による綿密な外国分析レポートに後れを取るようになった。しかも、本国の政府はいまや外国政府と直接やりとりできるし、インドのナレンドラ・モディ首相のように、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムを駆使するトップリーダーも現れている。だが、大使館はメディアとは違って、国益の促進という視点から、それまでの経験と知識を生かして特定の出来事を文脈に位置づけ、分析できる。大使館がなくなれば、現地の情勢や鍵を握る人物が誰であるかを知る外交官も、自国の市民が外国で窮地に陥ったときに手を差し伸べる領事館の職員もいなくなる。だがそれでも今後、大使館の運命は「より機敏に状況に対応できるようになれるか、流動化するグローバル情勢により適応に対応できるようになれるか」に左右される。だが、数世紀にわたって存在する伝統的な組織にとって、そうした変貌を遂げるのは決して容易ではないだろう。