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に関する論文

中東におけるロシアの原発戦略
―― 魅力的なモデルと地政学のバランス

2016年7月号

マシュー・コッテ/国際戦略研究所リサーチアソシエート(不拡散・核政策)
ハッサン・エルバーティミー/キングスカレッジロンドンポストドクトラル・リサーチャー

中東で原子力エネルギーが再び脚光を浴びている。2016年4月、ロシアの国営原子力企業・ロスアトムは、アラブ首長国連邦のドバイに事務所を開設した。エジプト、イラン、ヨルダン、トルコでのロシアの原子力プロジェクトを統括することがこの事務所の役割だと考えられている。「原子炉を現地で建設、所有、稼働し、電力を相手国に約束した価格で供給する」。これがロシアのビジネスモデルだ。モスクワ原子力関連の訓練と教育を相手国に提供することも約束しており、現地での雇用創出も期待できる。一方、モスクワは電力の売り上げだけでなく、電力供給プロセスを通じて中東諸国との経済的つながりも強化できる。しかし、シリアのバッシャール・アサドを支援することで、中東の地政学に関与しているだけに、ロシアが中東での原子力市場シェアを拡大できるかどうかは、テクノロジーとサービスを安価に提供することだけに左右されるわけではないだろう。・・・

ヨーロッパにおけるポピュリズムの台頭
―― 主流派政党はなぜ力を失ったか

2016年7月号

マイケル・ブローニング/フリードリヒ・エーベルト財団 国際政策部長

ヨーロッパでなぜポピュリズムが台頭しているのか。既存政党が政策面で明らかに失敗していることに対する有権者の幻滅もあるし、「自分たちの立場が無視されていると感じていること」への反動もある。難民危機といまも続くユーロ危機がポピュリズムを台頭させる上で大きな役割を果たしたのも事実だ。いまやフィンランド、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、スイスを含む、多くのヨーロッパ諸国で右派政党がすでに政権をとっている。「イギリス独立党」、フランスの「国民戦線」、「ドイツのための選択肢」など、まだ政権を手に入れていない右派政党もかなりの躍進を遂げている。中道右派と中道左派がともにより中道寄りの政策へと立場を見直したために、伝統的な右派勢力と左派勢力を党から離叛させ、いまやポピュリストがこれらの勢力を取り込んでいる。厄介なのは、ヨーロッパが直面する問題はEUの統合と協調を深化させることでしか解決できないにも関わらず、ヨーロッパの有権者たちがこれ以上ブリュッセルに主権を移譲するのを拒絶していることだ。・・・

変貌したドイツ外交
―― 「保護する責任」と「自制する責任」のバランス

2016年7月号

フランク=ヴァルター・シュタインマイアー ドイツ外相

ドイツが国際舞台で新たな役割を果たすことを望んだわけではない。むしろ、世界が大きく変化するなか、安定を保ち続けたドイツが中心的なプレイヤーに浮上しただけだ。いまやドイツはヨーロッパ最大の経済国家に見合う国際的責任を果たそうと試みている。コソボとアフガニスタンへの軍事的関与は、それまで「戦争」という言葉が禁句だった国にとって、歴史的な一歩を刻むものだった。ドイツが既定路線を見直したのは、ヨーロッパの安定とアメリカとの同盟を真剣に受け止めたからだ。それでもドイツは過去を踏まえて慎重に考える国家だ。変化に適応しながらも、自制や配慮を重視する信条と外交を重視していくことに変わりはない。過去を必要以上に償おうとしているのではない。むしろ、過去を踏まえて慎重に考える国家として、ドイツは歴史の教訓を現在の課題へのアプローチに生かそうとしている。

2016年の政治的意味合い
―― アメリカの政治的衰退か刷新か

2016年7月号

フランシス・フクヤマ スタンフォード大学国際研究所 シニアフェロー

2016年の米大統領選挙の本当のストーリーとは、経済格差が拡大し、多くの人が経済停滞の余波にさらされるなか、アメリカの民主主義がついに問題の是正へと動き出したことに他ならない。有権者の多くは、彼らが「堕落し、自分の利益しか考えない」とみなすエスタブリッシュメントに反発し、政治を純化して欲しいという願いから急進派のアウトサイダーを支持している。社会階級がいまやアメリカ政治の中枢に復活し、人種、民族、ジェンダー、性的志向、地域差をめぐる亀裂以上に大きな問題として取り上げられている。とはいえ、ポピュリストの政策を実施すれば、成長を抑え込み、政治の機能不全をさらに深刻にし、事態を悪化させるだけだ。・・・必要なのは、大衆の怒りをすぐれた政治家と政策に結びつけることだ。

イスラム国の黄昏
―― 離脱したシリア人元戦闘員たちへのインタビュー

2016年6月号

マラ・レブキン / イエール大学ロースクール博士課程 、アハマド・ムヒディ / ジャーナリスト

イスラム国を後にするシリア人戦闘員が増えている。2016年3月だけでも、数百人のイスラム国戦闘員がラッカやアレッポを離れて、戦線離脱したと考えられており、その多くがシリア人だ。離脱後、穏健派の自由シリア軍(FSA)に参加する者もいれば、紛争から離れようと、国境を越えてトルコやヨルダンに向かう者もいる。シリアのイスラム国は、現地社会や地勢などをめぐるインサイダー情報をめぐってシリア人メンバーに多くを依存してきた。逆に言えば、シリア人戦士の戦線離脱の増大は、シリアにおけるイスラム国の統治と軍事活動を大きく脅かすことになるだろう。現在トルコにいる8人の元イスラム国戦闘員たちへのインタビューから浮かび上がるのは、もはや勢いを失い、自暴自棄となったイスラム国の姿だ。

トランプ・サンダース効果と次期大統領
―― アメリカの貿易政策と外交はどう
変化するか

2016年7月号

リチャード・フォンテーヌ/センターフォーアメリカンセキュリティ会長、ロバート・D・カプラン/センターフォーアメリカンセキュリティ シニアフェロー

ドナルド・トランプとバーニー・サンダースはアメリカ社会のムードとアメリカ人が何を望んでいるかについておおむね適切に理解している。現在のアメリカ人は、終わりのない外国での戦争にうんざりし、格差に苛立ち、ビジネス・政治エリートたちに不信感をもっている。貿易を敵視し、対外介入を嫌がっている。したがって、次期大統領は貿易をめぐってはより強固な社会的セーフティネットを準備して、国際貿易批判に対する防波堤を築く必要がある。外交領域では、介入して泥沼に足をとられても、一方で行動を起こさなくても大きなコストを抱え込むことになる以上、相互に関連する慢性的な危機にうまく対処できる政策を形作らなければならない。いずれにせよ、2016年のアメリカの政治を特有なものにしているトレンドが、近い将来に終わることはなく、むしろ現状はその入り口であることを認識する必要がある。

ヒラリー・クリントンのフェミニスト外交
―― ドクトリンと現実の間

2016年5月号

スザンヌ・ノッセル 前米国務副次官補(国際機関担当)

(大統領夫人、そして国務長官としての)ヒラリー・クリントンは、女性の運命が社会のそれと切っても切れない関係にあること、女性の虐待がしばしば独裁体制や戦争の前兆となること、そしてアメリカの国家安全保障が各国の女性の健全な生活が保障されることで強化されると主張し、これを外交アジェンダの一部に位置づけることに成功した。だが、一部の社会では性差別と家父長制が深く根を張っており、外国の指導者たちが迅速に変革に応じるのは難しいことも彼女は理解している。女性の権利問題を、小さなイニシアチブから、米政府全体が真剣に受け止める政策課題へと「格上げ」した最大の功労者であるクリントンは今、大統領の座を狙い、その大義をさらに推進できる大きなパワーを手にしようとしている。しかし、この試みが実を結ぶには時間がかかるし、女性問題だけが彼女が重視するアジェンダではないことは理解する必要があるだろう。

中国国有企業改革の実態
―― 切り捨てられる企業と温存される
企業

2016年5月号

サルバトーレ・バボネス/シドニー大学社会学・社会政策准教授
I・ストーン(匿名)/中国国有企業を専門とする政治経済分析者

過剰生産能力を減らすために、北京は鉄鋼生産量を年間1億―1億5000万トン削減すると表明し、2月には鉄鋼部門において約50万人の雇用を削減する計画を発表している。石炭産業における生産量と雇用の削減はさらに熾烈なものになるだろう。そして北京が過剰生産能力を削減する主要なツールとして、中国の国有企業(SOE)改革を利用していくのは明らかだろう。損失を計上している部門については、民営化を通じて政府による監督を緩和するか、工場閉鎖と労働者の解雇が行われるだろう。中国のSOE改革とは、一般にイメージされるのとは違って、赤字国有企業を売却、清算するだけで、北京は利益をあげている国有企業についてはこれまでの関係を維持していくつもりだ。「政治的に正しい」立場をとる国有企業のエグゼクティブと最高経営責任者は法外な富を得て、「政治的に間違った」立場をとる者たちは政治腐敗の罪に問われ、失脚することになるだろう。

中国のコーポレートパワー
―― 中国企業が市場を制する日はやってくるのか

2016年5月号

パンカジュ・ゲマワット/ニューヨーク大学ビジネススクール教授
トマス・ホート/タフト大学シニアレクチャラー

最近の経済的失速と株式市場の混乱にも関わらず、「中国はいずれアメリカを抜いて世界最大の経済パワーになる」と考える人は多い。だが、このシナリオを検証するには、現実に成長と富を生み出している企業と産業の活動動向に目を向ける必要がある。世界でもっともパワフルな経済国家になるには、中国企業は資本財やハイテク部門でさらに競争力をつけ、半導体、医療用画像診断装置、ジェット航空機などの洗練された製品を製造し、市場シェアを拡大していく必要がある。繊維や家電製品など、そう複雑ではない第1世代部門同様に、中国企業はこうした第2世代部門でもうまくやれるだろうか。それを疑うべき理由は数多くある。途上国の企業とせめぎ合う製造業部門とは違って、資本財部門やハイテク部門では、中国企業は、日本、韓国、アメリカ、ヨーロッパの大規模で懐の深い多国籍企業を相手にしていかなければならない。・・・

大西洋同盟の未来
―― トランプが投げかけた波紋

2016年5月号

ヤンス・ストルテンベルグ NATO事務総長

「われわれは(NATOメンバー国を)守っている。彼ら(ヨーロッパ)はあらゆる軍事的保護を受けているが、アメリカ、そして納税者であるあなたたち(アメリカ市民)に、法外な資金を負担させている。これは問題がある。過去の分を含めて、(ヨーロッパのメンバー国は)資金を完済するか、同盟から出て行くべきだ。それがNATOの解体を意味するのなら、それはそれでかまわない」。予備選挙の共和党大統領候補、ドナルド・トランプはNATO批判を強めている。NATO事務総長、ヤンス・ストルテンベルグは、これに対する直接的なコメントは避けつつも、ヨーロッパ側が防衛予算を増やす必要があることを認めた上で、「より危険な世界に対処していく答は、これまで大きな成功を収めた強靱な同盟関係(NATO)をダウングレイドすることではなく、同盟関係をもっと強化することだ」と主張する。・・・(聞き手は、フォーリン・アフェアーズ誌のデュピティ・マネージングエディター、ジャスティン・ヴォグト)

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