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に関する論文

次期米大統領と欧州
―― なぜ欧州の自立が必要なのか

2024年3月号

アランチャ・ゴンサレス・ラヤ
カミーユ・グランド
カタジナ・ピサルスカ
ナタリー・トッチ
グントラム・ヴォルフ

ヨーロッパの指導者たちは、バイデンなら、大西洋の絆を守り、混乱する大陸と近隣諸国にヨーロッパがより大きな責任を果たすための時間と支援を与えてくれると考えている。だが今後、そうした配慮は彼からも得られないかもしれない。もちろん、トランプ大統領が誕生すれば、2期目には、ヨーロッパが直面する不安定な状況はさらに悪化するかもしれない。だが、安全保障と経済を守るために行動を起こし、具体的な措置を講じることは、ヨーロッパの手に委ねられている。誰がワシントンで政権を担おうと、一貫したパートナーとしてアメリカを頼ることはもはやできないかもしれない。ヨーロッパの指導者たちは自分たちが成長しなければならないこと、つまり、アメリカへの依存度を低下させるべきことを理解している。

世界戦争の足音
―― 歴史は繰り返すのか

2024年3月号

ハル・ブランズ アメリカン・エンタープライズ研究所 シニアフェロー

世界は、1940年代のように、複数の紛争が一つの戦争へ統合されていく局面にあるのかもしれない。東ヨーロッパと中東ではすでに戦争が勃発し、現状を否定するリビジョニズム国家の結びつきがますます強くなっている。この環境で、アジアの係争海域で軍事衝突が起きれば、別の恐ろしいシナリオが浮上する。東アジアでの戦争が他の地域ですでに進行している紛争と重なり合い、ユーラシアの三つの主要地域が一度に大規模な紛争で燃え上がれば、1940年代以来の状況が出現する危険がある。しかも、アメリカはこの課題への準備ができていない。すでにプーチンは、ウクライナと中東における紛争は「ロシアと全世界の運命を決める」一つの大きな闘争の一部だと宣言している。

抵抗の枢軸という新脅威
―― ミサイルとSNSで戦う敵の目的は

2024年3月号

ナルゲス・バジョグリ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 アシスタント・プロフェサー(中東研究)
バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 教授(中東研究)

イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニが設計し、シリア紛争で具体的なつながりをもち、ガザ戦争で一気に連帯を深めた「抵抗の枢軸」とは、いかなる軍事ネットワークなのか。欧米は、イランが(ハマス、ヒズボラ、フーシ派などを含む)「抵抗の枢軸」の黒幕だとみているが、実際には、それぞれが自立した、より緩やかなネットワークだ。それでも、メンバーたちは、イスラエル、そして間接的にはアメリカに対する同じ戦争を戦っていると信じている。それだけに、抵抗の枢軸を簡単に解体することも、それを生み出した思想を粉砕することもできない。ガザの銃声が静まり、住民への圧力が緩和され、パレスチナの主権と自決への確かな道筋が描かれない限り、アメリカは危険なエスカレーション・スパイラルから抜け出すことはできないだろう。

パスポート売買ビジネス
―― 市民権、国籍の値段と意味合い

2024年2月号

アトッサ・アラクシア・アブラハミアン ネーション誌 シニアエディター

投資による市民権獲得、つまり、外国人に政府公認のパスポートを合法的に販売する産業が急成長している。国内総生産(GDP)を押し上げる、このビジネスは、観光産業を後押しし、国の借金を減らし、天災後の復興、学校や年金制度の維持を助けている。いまや、パスポート売買は制度化され、例えば、セントクリストファー・ネービスの場合、そのGDPの約40%は国内の不動産を購入し、政府の開発基金に現金を寄付した「投資家市民」によってもたらされている。グレナダの「投資による市民権取得制度」の利用者の9割がロシア国籍保有者なのは、この島国の市民権でプーチン主義から逃れることができるからだ。しかし、このビジネスをわれわれはどうとらえるべきなのか。パスポート売買には複雑な倫理が絡んでくる。・・・。

自己を見失った超大国
―― 自ら築いた世界に背を向けるのか

2024年2月号

ファリード・ザカリア 国際政治分析者

アメリカがデザインした「ルールに基づく国際秩序」に対する憂慮すべき障害を作り出しているのは、中国でもロシアでもイランでもない。それは、アメリカに他ならない。アメリカが、自国の衰退に対する誇張された不安に駆られて、国際政治における指導的役割から後退すれば、世界で力の空白が生じ、さまざまな国やプレーヤーが混乱に足を踏み入れようとするだろう。すでに、ポスト・アメリカ世界がどのようなものかをわれわれは中東で目の当たりにしている。ヨーロッパとアジアで同じようなことが起こることを想像してほしい。しかも、この場合、地域的国家ではなく、世界の大国が混乱を引き起こし、世界的に大きな衝撃がはしることになる。・・・

欧州の戦争疲れ
―― ウクライナへの支持低下をいかに覆すか

2024年2月号

スージー・デニソン 欧州外交問題評議会 シニア・ポリシーフェロー
パヴェル・ゼルカ 欧州外交問題評議会 シニア・ポリシーフェロー

欧州市民の多く、特にウクライナから遠く離れた国の人々は、戦争を、もはや緊急事態とはみなしていない。ヨーロッパ人の多くは、ウクライナ戦争を遠くの地域の戦争、アルメニアやガザでの紛争と同じくらい遠く、抽象的なものとみなしている。欧州の全般的なウクライナ支持は、依然として揺らいでいないが、近いうちに状況は変わるかもしれない。そのような事態を避けるには、欧州の指導者たちは、どうすればウクライナは戦争に勝てるか、なぜウクライナの勝利が欧州の将来にとって不可欠なのかについて、説得力のある理論を有権者に示す必要がある。だが、そうできなければ、キーウは今後数週間、数カ月で重要な支持を失うことになるかもしれない。・・・

プーチンの立場が欧米の右派のそれと似ているのは偶然ではない。実際、プーチンのアドバイザーたちは、フォックス・ニュースのキャスターなど、米保守の扇動者たちの立場やレトリックを採用している。特に、文化戦争路線を取り入れることで、ワシントンなどのポピュリスト政治家の支持を確保し、欧米社会を内部から切り崩せると考えているようだ。欧米保守派のレトリックを受け入れることで、彼らの支持を確保し、それを基盤にロシアの国際的地位を向上させたいとプーチンは考えている。要するに、20世紀前半にソビエト革命を推進した共産主義インターナショナルに似た、「極右インターナショナル」を形成しつつある。

米中地政学とグローバル経済
―― 同盟国との経済連携の強化を

2024年2月号

ピーター・E・ハレル 元米国家安全保障会議 シニアディレクター

ワシントンは、進化する地政学的必要性に対応できるやり方で、中国との経済関係を積極的に管理していくべきだ。主要サプライチェーンでの対中依存を減らし、欧米が機微技術をめぐる優位を維持できるようにし、他の先進7カ国(G7)メンバーとの産業政策協定の締結も視野に入れるべきだろう。分野別の小型の貿易合意、同盟国とのサプライチェーン協定を結ぶ一方で、グローバルサウスを引き寄せる必要もある。世界貿易機関が地政学の時代にそぐわないことも認識しなければならない。ワシントンが経済的リーダーシップを維持し、同盟関係を強化し、破滅的な結果を回避できるかを、成功を判断する基準に据えるべきだろう。

米中戦争と台湾・第一列島線
―― 戦争の長期化・広域化と多領域化に備えよ

2024年2月号

アンドリュー・F・クレピネビッチ ハドソン研究所 シニアフェロー

アメリカとその同盟国は、核兵器によるエスカレーションの可能性は小さいとしても、何カ月も何年も続き、経済、インフラ、市民生活に莫大なコストを強いる中国との大国間戦争が何を意味するかを考え始めるべき段階にある。中国と米主導の連合軍との通常戦争は長期化し、地理的に広域化するだけでなく、その対立は、世界経済、宇宙、サイバースペース等の多くの領域に飛び火する危険がある。しかも、中国が第一列島線に沿った主要な島嶼を占領した場合、アメリカとその同盟国が許容範囲に近いコストでそれらの島々を奪還するのは非常に難しい。どちらの側にとっても決定的な軍事的勝利の見込みがない以上、この戦争は数年以上にわたって続く危険がある。・・・

トランプと地政学
―― 変化し始めた同盟国と敵対国の立場

2024年2月号

グレアム・アリソン ハーバード大学教授

バイデンと彼の外交チームは厄介な状況に直面している。交渉相手国が、あらゆる問題をめぐって、1年後にはまったく異なる米政府を相手にしている可能性を考慮した上で、ワシントンの意向を判断し始めているからだ。ロシアを含む敵対国は、いずれ、ワシントンとよりよい条件で交渉できるようになるという期待から、現状での判断を先送りしている。一方、ヨーロッパ諸国などは、トランプが大統領に返り咲けば、より劣悪な選択肢に直面する可能性が高いと考え、それに応じた対応を進めている。実際、ウクライナに送る戦車や砲弾の数をめぐっても、「トランプが当選すれば、自国の防衛のためにそれらが必要になるのではないか」と考え込むヨーロッパの指導者もいる。・・・

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