ドゥテルテの強権主義の秘密
―― ダバオモデルとフィリピンの社会契約
2019年10月号
「面倒はみる。だが質問はするな」。これが、ドゥテルテがかつてはダバオ住民に、現在はフィリピン民衆に示している社会契約だ。彼はドラッグユーザーや犯罪者対策のために「殺人部隊」を使用していると言われる。法の支配と人権は明らかに無視されている。だが、その乱暴な権力行使にもかかわらず、ドゥテルテは民衆に支持されている。任期6年の半分終えた時点で、支持率は80%近い。彼の中核的支持基盤は中間層で、これには、マニラその他の都市のコールセンターで働く人々、世界各地で働くフィリピン人の子守、看護婦、船舶乗組員、建設労働者も含まれる。ドゥテルテの支持基盤はこうした勤勉で向上心をもつ人々で構成されている。この構図のなかで、彼は麻薬との戦争、そして貧困層への戦争を試みる強権者として君臨する一方、施策をミクロレベルでとらえる「フィリピン市長」として振る舞っている。・・・
