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に関する論文

グローバル「#MeToo」ムーブメント
――女性の権利確立を促すグローバルな好循環

2018年5月号

ルディス・マーダビ デンバー大学 国際関係大学院 上席副学部長

「#MeToo」はアメリカで起きている出来事と結びつけられたグローバルなムーブメントだ。ソーシャルメディアで流された#ミィトゥーというハッシュタグがもつ意味合いを世界は直ちに受け入れ、アラビア語、ペルシア語、ヒンディー語、スペイン語を含む複数の言語で、同じムーブメントが展開されている。現在、85か国の女性たちがこのハッシュタグを使って、変革を求めている。メッセージの拡散を刺激しているのは、ソーシャルメディアだけではない。過去に築かれてきた各国の女性運動の基盤が今回のグローバルムーブメントを支えている。女性たちが団結して声を上げるなか、あまりに長い間抑え込まれてきた彼女たちの痛ましいストーリーが、変革を促す一貫した、断固たる流れを作り出しつつある。

シリア内戦と外部パワー
―― アフリンの攻防と勝者なき紛争の行方

2018年4月号

アーロン・ステイン  アトランティックカウンシル レジデント・シニアフェロー

ロシア、イラン、トルコ、アメリカというシリア内戦に介入している外部パワーは、アサド政権同様に、紛争終結を望みつつも、譲歩を拒んでいる。シリアの反政府勢力への影響力をもつトルコは反クルドの立場からアフリンに介入し、クルド人を紛争期のパートナーとしてきたアメリカは軍事的成功を政治目標に結びつけようと、米軍をシリア北東部に当面駐留させるつもりだ。ロシアは内戦を終結へ向かわせるという大きな目的から、紛争終結のカギを握る(反政府勢力への影響力をもつ)トルコの協力を失うような危険は犯したくないと考えている。一方、アサド政権とイランは、トルコの介入は反政府勢力を勢いづけると反発している。この流れを変えない限り、シリア内戦は今後も続き、さらに多くの人の命が奪われることになる。

イスラエルとヒズボラの次なる衝突
―― これまでの紛争と何が違うのか

2018年4月号

マーラ・カーリン ジョンズ・ホプキンス大学准教授

偶発的エスカレーションリスクや双方の長期的な戦略目標を考えると、イスラエルとヒズボラ間でいずれ戦争が起きるのは避けられないだろう。いまや問われているのは紛争が差し迫っているかどうかではなく、いつどのようにしてそれが起き、どこで紛争が戦われるかだ。現実に紛争になれば、忌まわしい戦闘が展開され、好むと好まざるとにかかわらず、外部アクターを巻き込んでいくことになる。しかも、これまでとは違って、戦域はレバノン南部だけでなく、ベイルートとシリアへ拡大していくだろう。レバントの安全保障はさらに揺るがされ、レバノンとシリアは今以上に、外国のアジェンダが入り乱れる場所と化し、民衆たちはより多くを失うことになるだろう。

イランを内包する新中東秩序の構築を
―― 中東の安定を取り戻すには

2018年4月号

バリ・ナスル  ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院院長

中東を規定してきたこれまでのアラブ秩序は、この7年間の社会的混乱と内戦によってすでに引き裂かれている。ワシントンでは「イランの影響力を押し返せば中東に秩序を取り戻せる」と考えられているが、これは間違っている。むしろ、今後の持続可能な中東秩序にとって、イランが必要不可欠の存在であることを認識しなければならない。イランの対外行動が、イスラム革命の輸出ではなく、国益についての冷徹な計算によって導かれていることも理解すべきだ。現在の中東政策を続けても、イランの影響力を低下させることはなく、むしろ中東におけるロシアの影響力を拡大させるだけだ。紛争に終止符を打ち、平和と安定の枠組みを作るための地域合意を仲介するための国際外交に向けたリーダーシップを発揮しなければならない。この任務をロシアに任せるべきではない。

何が内戦を長期化させているのか
―― テロと外部パワーの介入で変化した内戦の本質

2018年4月号

リセ・M・ハワード ジョージタウン大学准教授
アレクサンドラ・スターク ジョージタウン大学博士候補生

冷戦終結から9・11までは、大半の内戦が交渉によって終結したが、その後、再び国際環境が変化し、内戦の規範も変化した。テロリストとの交渉は選択肢とされず、テロ組織の粉砕が目標とされ、欧米諸国も民主化よりも安定を重視するようになった。紛争当事国政府は、全面的勝利を目指す戦略を正当化し、外部パワーからの支援を確保するために、反政府勢力にテロリストの烙印を押し、しかも外部パワーがそれぞれ対立する勢力を支援するようになった。これが、内戦が長期化している大きな要因だ。現在の内戦は、外部パワーが「こう終わるべきだ」と考える形で終結する。シリア紛争は「内戦がこれまでよりも長期化し、交渉による解決よりも(特定の紛争勢力の)一方的な勝利で終わる可能性が高い」という現在の内戦トレンドを示す具体例に他ならない。

同盟関係と国際機関の価値に目を向けよ
―― 大国間競争で勝利を収めるには

2018年4月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

冷戦初期同様に現在のアメリカは大国間競争の時代に足を踏み入れている。しかし、アメリカファーストを掲げるトランプ政権は、冷戦における勝利を西側にもたらした同盟関係や国際機関を基盤とする秩序に背を向けてしまっている。戦後戦略の中枢は「ヨーロッパとアジアで、権威主義の誘惑と脅威に対抗する力をもつ強固な民主的な同盟関係を築くことだった」。当時のアメリカは、そうすることで、軍事力に過度に依存せずに、自国の経済・安全保障利益を守れるようになると考えた。トランプ政権が大国間競争の時代の幕開けを宣言したタイミングで、アメリカが冷戦という大国間競争に勝利を収めるのを助けたツールを大統領が放棄し、その価値を否定しようとしているのは大きな皮肉としか言いようがない。

何が米戦略の立案を阻んでいるのか
―― ホワイトハウスとペンタゴンの対立

2018年4月号

ジュリアン・スミス 前米副大統領副補佐官 (国家安全保障問題担当)
ローレン・デヨング・シュルマン 前米国家安全保障会議ディレクター (国防政策担当)

北朝鮮軍事戦略の策定を阻んでいるのはホワイトハウスや米国家安全保障会議(NSC)とペンタゴンの確執なのか。おそらくそうではない。ホワイトハウスが戦略をもっていないこと、数日毎に新たな戦略の条件を示し続けていることが問題だ。さらに、機能する省庁間調整プロセス、政府の方針を維持する閣僚、高官ポストが空席でない国務省、駐韓アメリカ大使、さらにはアメリカの政策や大統領のツイートを解読するのに次第に苛立ちを感じているかにみえる同盟諸国との開放的なコミュニケーションチャンネルも必要とされている。国務省、ソウル、あるいは平壌、どこにいようと、ホワイトハウスが本当に望んでいるものが何なのかを理解できない状態にある。

大統領と核兵器
―― 核兵器発射プロセスの見直しを

2018年4月号

リチャード・K・ベッツ コロンビア大学教授
マシュー・C・ワックスマン コロンビア大学法科大学院教授

アメリカの情報機関によって北朝鮮の臨戦態勢が強化されていることが確認されれば、先制攻撃に向けた議論が高まるのは避けられない。しかし、それによって、核の使用を自粛する合理性が覆されてはならない。むしろ、そうした状況でも、政策決定者は通常戦力による先制攻撃能力を最大化することに努めるべきだろう。この側面からみても、核兵器発射の決定について「トップアドバイザーたちと協議するかどうかを大統領が決める」現行のシステムには問題がある。国防長官が核の先制使用の決定が最高司令官による本当の命令であることを確認し、司法長官が、それが合法的であること、つまり、大統領にはそうする法的権限があると保証するというもう一つのチェック機能をシステムに加える必要がある。現状では、核攻撃を固く決意した大統領の行動を阻むものは何もない。

CFR Blog
ティラーソンからポンペオへ
―― 米国務省を救うには

2018年4月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー

ティラーソンは、スティーブ・バノン(首席戦略官)やスティーブン・ミラー(政策担当上級顧問)のような、トランプ大統領を取り巻く保守・ナショナリスト系のイデオローグたちによる攻撃から国務省を守ることができなかった。こうした自称「反グローバリスト」たちは、国務省のことを、勤勉なアメリカの愛国者ではなく、アメリカの主権を価値のない合意と引き換えに売り渡す国際主義者たちが埋め尽くす、敵に乗っ取られた組織とみなした。・・・後任のポンペオは、その忠誠ゆえにトランプに好ましく思われているが、大統領が外交的カオスを作り出そうとしたり、無謀にもアメリカを脅かす脅威を無視しようとしたりしたときに、大統領の前に立ちはだかれるだろうか。ポンペオのCIAでの記録をみれば、楽観は許されない。・・・

対中冷戦戦略の誤謬
―― 対中協調の余地は残されている

2018年4月号

マイケル・D・スワイン  カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

トランプ政権は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を、あらゆる地域プレイヤーが繁栄と安全を手に入れるための包括的ビジョン、そして中国に対抗するアメリカの同盟国とパートナーのためのネットワークとして描いているが、この戦略に中身はない。アメリカとその同盟国がアジア太平洋地域におけるもっともダイナミックな大国である中国を敵として扱って、安全と繁栄が包括的なものになることなどあり得ない。中国は、アメリカとそのパートナーとの長期的な関係について何かを決断しているわけでも、グローバルな覇権国としてのアメリカに取って代わることを決意しているわけでもない。リビジョニストパワー、現状維持パワーという二つの顔をもつ中国の複雑な自己アイデンティティの片方にだけ焦点を合わせて、二つの大国間の存亡をかけた抗争をイメージするのは間違っている。

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