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に関する論文

迫り来る中台危機に備えよ
―― 米中台のレッドラインと危機緩和策

2019年4月号

マイケル・チェース ランド研究所シニアポリティカルサイエンティスト

アメリカ、中国、台湾での政治的、政策的展開によって新たな台湾海峡危機が起きる危険が高まっている。中国が1995―96年の危機の時よりも、台北を屈服させるよりパワフルでさまざまなオプションをもっているだけに、リスクは高い。台湾統一は、習近平が重視する「中国の夢」における重要なアジェンダの一部であり、国内での正統性を強化するためにも台湾問題を解決しようとするかもしれない。一方、台湾では台湾人としてのアイデンティティが高まり、一国二制度への支持も低下し、しかも、2020年に総統選挙を控えている。そして、ワシントンはすでに中国を敵視する路線にギアを入れ替えている。状況が悪化していくのを座視するのではなく、それが不可避となった場合にうまく対応できるように態勢を整え、台湾海峡危機を阻止するためオプションを実施できる態勢を整備しておく必要がある。

解体した米欧同盟
―― 新同盟形成の余地は残されているか

2019年4月号

フィリップ・ゴードン 米外交問題評議会 シニアフェロー(米外交政策)
ジェレミー・シャピロ 欧州外交問題評議会 リサーチディレクター

トランプ政権の最初の2年間にわたって、ヨーロッパの指導者たちは「虐げられた配偶者」のような状態に追い込まれた。酷い扱いを受けながらも、離婚を恐れ、状況は改善すると見込みのない期待に思いを託してきた。しかし、離婚は避けられなかった。トランプ政権にとって、大西洋関係の統合とは、ヨーロッパがアメリカの言う通りに動くことを意味するに過ぎなかった。すでに同盟は死滅している。今後、アメリカが、ヨーロッパのノスタルジックな幻想のなかに存在する利他的なパートナーになることはあり得ない。新しい大西洋関係には、同盟の価値を認識する米大統領と、域内の分裂を克服し、米欧の平等なパートナーシップにコミットするヨーロッパ人が必要になる。

ベネズエラの人道的危機と難民

2019年4月号

ロシオ・カラ・ラブラドル、ウィリアム・メロー

ベネズエラは、かつてない政治・経済危機のなかにあり、その余波は西半球に留まらない地域へ及んでいる。約40万人が政治的迫害や暴力を理由に亡命を求め、これはラテンアメリカの歴史をみても、最大かつもっとも短期間で起きた大規模な人の流出であり、国連はすでにこの事態を「人道的危機」と描写している。・・・

米財団の足跡と新しい任務
―― 多極化した世界とフォード財団のミッション

2019年3月号

ダレン・ウォーカー フォード財団会長

アメリカの財団は多くの成果を収めつつも、冷戦という環境下、欧米の思想や制度を重視するあまり、途上国の成長と安定を公正に支援できなかった部分もある。そして、いまや世界は多極化し、財団も多種多彩になっている。カーネギー、フォード、ロックフェラーなどの米ファミリー系財団が独占してきた助成活動も、21世紀に入ってブルームバーグ、ゲイツ、ソロスが設立した欧米財団だけでなく、インドのアンバニ、ナイジェリアのダンゴート、中国のマー、メキシコのスリムなどの大富豪が設立した世界の財団と共有していくことになるだろう。米財団だけでは世界の切実な問題に対応できない以上、これは希望がもてる展開だろう。アメリカの財団は他国の財団による慈善事業の拡大を支援する方法を特定し、世界の新しい富のポテンシャルを解き放つ必要がある。

イスラム世界におけるトルコのソフトパワー
―― 宗教・文化外交の目的は何か

2019年3月号

ギョニュル・トル 米中東研究所 トルコ研究センター ディレクター

トルコの政府機関と市民組織は、スンニ派イスラムとトルコのナショナリズムを融合させた宗教教育プログラムを外国で実施し、トルコの言語と文化も教えている。こうした宗教・文化活動が実施される場所にはトルコの国旗が掲げられている。活動に関わる人々は、「オスマン帝国の後継国家であるトルコは、イスラムに残された最後の要塞であり、イスラム文明復活を主導する指導国である」と自負している。このソフトパワー戦略はスーダンなどのアフリカ諸国では成功している。しかし、中東では「トルコは帝国的野望をもっている」と猜疑心で捉えられ、ヨーロッパ諸国政府は、「トルコの宗教外交は社会を分断し、トルコ系移民の社会的同化を妨げる」と怒りを露わにして反発している。・・・・

一体化する湾岸とアフリカの角
―― 反目と紛争と開発のポテンシャル

2019年3月号

ザック・バーティン ブルッキングス研究所 ドーハセンター客員研究員

アラブ首長国連邦、サウジアラビア、カタール、トルコがアフリカの角に関与するにつれて、対立関係を抱えるこの地域に中東の対立構図が持ち込まれている。しかも、かつてはのどかだった紅海西岸地域に注目しているのは、湾岸諸国だけではない。中国は最近、ジブチに初の外国軍事基地を設置し、いまや紅海は米中超大国の新たな競争の舞台でもある。紅海両岸で適切に状況を管理できれば、湾岸諸国とアフリカ諸国はともに新たなエンゲージメントから恩恵を引き出せるかもしれない。特に経済の近代化を試みるアフリカ諸国は、中東からの投資と援助を利用してインフラ整備を試み、雇用を創出し、グローバル市場にアセクスできるようになる。しかし、そこに到達するためにクリアーすべき懸案は数多く残されている。

トランプとファーウェイの「政治学」
――  「合法的逮捕」と「人質外交」の間

2019年3月号

シメーヌ・カイトナー カリフォルニア大学教授(国際法)

トランプ大統領が、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟がカナダで逮捕されて数日後のインタビューで、貿易に関して中国から合意を引き出す上で有効と考えられるなら、彼女のケースに「介入する」つもりだと語ったことは、「合法的な逮捕」と「人質外交」の線引きを曖昧にする問題発言だった。当初は、逮捕が政治的な動機に基づくものではないとみなす根拠があった。実際、米司法省は企業の不正行為を巡って個々の経営幹部の責任追及を優先的に行う方針をかねて表明していた。トランプの発言は、このような了解に水を差してしまった。こうして、北京は、逮捕は政治的な動機に基づくものだという見方を強め、これを中国の技術的な発展を妨げようとするアメリカの活動の一環とみなしている。

米中貿易戦争とファーウェイ
―― テクノロジー競争の政治学

2019年3月号

ロバート・ウィリアムズ イェール大学講師

「中国の民間企業に対する共産党の影響力が高まっていること」をワシントンは懸念し、米議会が指摘している通り、中国政府が悪辣な目的でシステムの使用やアクセスを要請した場合、ファーウェイにはこれに協力する義務があること」を問題にしている。ファーウェイがグローバル市場をリードする5Gネットワークが、スマートグリッドから自律走行車までのあらゆるものを支えるテクノロジーなだけに、懸念は高まっている。中国との貿易交渉をワシントンに有利に運ぶために孟晩舟が逮捕されたとは考えにくい。問題は、テクノロジー、経済政策、国家安全保障領域での欧米と中国間の緊張の高まりと不信感に派生しており、アメリカは、中国の経済政策、政府と民間企業の関係の構造的改革を求めている。

トランプ政権のいかさま経済学
―― 間違った予測と大言壮語

2019年3月号

N・グレゴリー・マンキュー ハーバード大学教授(経済学)

2017年12月、税制改革案を発表したトランプは「この措置で財政赤字が膨らむことはない」と主張し、その理由として経済成長率が3%、4%、5%、あるいは6%にさえ達するからだと主張した。たしかに、「税率が十分に高いレベルにあれば」、税率を引き下げ、成長率を高め、増大した歳入を恵まれない人々のために用いることができる。しかし、近年の税率がそのような高レベルにあったと考えるエコノミストはほとんどいない。トランプ政権は、包括的な政策を示すよりも、経済をもっと急速に成長させればあらゆる問題への解決策になると期待しているようだし、この経済成長は減税措置と規制緩和によって必然的に実現すると確信しているようだ。それが可能なら素晴らしいが、これは希望的観測である可能性が大きい。

米外交と政権内分裂の終わり
―― 予測可能な外交と不安定化する秩序

2019年3月号

トマス・ライト ブルッキングス研究所 米欧センター所長

トランプ政権が予測不能とみなされるのは、彼のビジョンではなく、「大統領」と「国家安全保障エリート」が政策をめぐって闘いを繰り広げてきたためだ。しかし、いまや外交チームは大統領の考えを中心にまとまりをみせ、「トランプ政権の外交政策」を特定できる環境にある。取引を重視する外国との限定的な関係、民主国家よりも権威主義国家を好ましくみなす態度、重商主義的な国際経済政策、人権と法の支配の軽視、多国間協調主義を犠牲にしたナショナリズムと単独行動主義路線。これらが、現在の米外交政策を規定している。皮肉にも、アメリカの外交政策がより一体化され、予測可能になったことで、アメリカの影響力は弱まり、国際秩序が不安定化する恐れがある。政策的に統一されたトランプ外交が世界に衝撃を与える時期が始まろうとしている。

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