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に関する論文

資本主義と民主主義は共生的か
―― 市場価値と自由

2021年4月号

ビニヤミン・アペルボーム ニューヨーク・タイムズ紙編集委員

自由な経済活動という「福音」の信者たちは「規制なき資本主義とリベラルな民主主義は共生関係にある」と主張した。半世紀後の現在、この主張を事実だと考える人を見つけるのは難しいだろう。市場経済によって経済の安全と独立を実現するという考えの問題点は(高級な)「リッツ・ホテルのように、金持ちにも貧者にも同じように門戸を開放すべきだ」という古いジョークにうまく集約されている。機会は保証されていても、誰もが代価を支払う懐の余裕があるとは限らない。しかし、アメリカ人は市場経済に代わる何を求めるべきなのか。ここに取り上げる著作によれば、市場経済は、幅広い豊かさの原動力にはならないし、政治的自由を補うものでもない。むしろ「市場へ依存すれば、自由のない状態に追い込まれる」。だが、果たしてそうなのか。・・・

イノベーション戦争
―― 衰退するアメリカの技術的優位

2021年4月号

クリストファー・ダービー 米IQT CEO
サラ・セウォール IQT 上席副社長(「政策担当」)

北京は「戦争という最終手段をとらずに目標を達成するツールとしてテクノロジーのイノベーションに挑んでいる」。5Gの無線インフラを世界各地で販売し、合成生物学に取り組み、小型で高速なマイクロチップの開発を急いでいる。これらはすべて中国のパワーを強化するための試みだ。当然、ワシントンは視野を広げ、超音速飛行、量子コンピューティング、人工知能などの明らかな軍事用途をもつテクノロジーだけでなく、マイクロエレクトロニクスやバイオテクノロジーなど、これまでは本質的に民生用とみなされてきたテクノロジーも支援し、民間部門が投資しない分野に資金を提供する必要もある。

日中戦争をいかに記憶するか
―― なぜ共産党は国民党の役割を認めたか

2021年4月号

ジェシカ・チェン・ワイス  コーネル大学准教授

「国連の創設メンバー、国連憲章に署名した最初の国として中国は国際システムをしっかりと支えていく」と習近平は発言している。もちろん、そうした役割を担ったのは共産党ではなく、国民党だった。昨今の「強硬でとかく軋轢を引き起こす路線」が国際的リーダーシップを確立したい北京の目的からみれば逆効果であるために、戦後国際システムとのかかわりを強調することで、北京は緊張を緩和したいのかもしれない。台湾との関係を育んでいくことへの関心、未解決の戦争の過去を日本に思い出させるという思惑もあるのだろう。だがリスクもある。中国が戦後秩序の擁護者として自らを描けば描くほど、中国民衆は国際社会でより中心的な役割を果たす権利があるという感覚を強く持つようになるかもしれないからだ。・・・

変異株とグローバルな集団免疫
―― 終わらないパンデミック

2021年4月号

マイケル・T・オスタホルム ミネソタ大学兼感染症研究政策センター所長  マーク・オルシェイカー  作家

ワクチンの接種がすすみ、パンデミックが収束へ向かうことが期待されるなか、コロナウイルス変異株の出現で、逆にパンデミックが長期化するリスクが生じている。危険な変異株の出現を抑え込む最善の方法は、できるだけ多くの人々を感染から守ることだが、多くの低所得国や中所得国の民衆はまだ1回のワクチン接種も受けていない。変異株は人から人への感染力が高いかもしれない。すでに追い込まれている病院や医療施設へさらに大きな圧力をかける恐れもある。もっとも厄介なのは、ワクチン接種またはCOVID19への感染から得た免疫が、変異株への感染を防げないかもしれないことだ。・・・


アジアでは日本に従え
―― 日米逆転はなぜ起きたか

2021年4月号

チャン・チェ 在上海ライター

中国が敵対性を増し、パンデミックが猛威を振るうなかで、日本は静かに地域リーダーへの台頭を遂げ、アジアにおけるアメリカの信用を回復するための鍵を握る国家に浮上している。多くのアジア諸国はアメリカをリベラルな秩序の擁護者、信頼できるパートナーとはもはやみていない。むしろ、バイデン政権は日本との関係を強化し、地域の多国間イニシアチブも日本と密接に連携して進めるなど、よりきめ細かなアプローチをとるべきだ。この4年間、日本はアジア諸国との間で信頼関係と善意の貯水池を築いてきた。アメリカがそうした好ましい環境にアクセスできるとすれば、長年の同盟国である日本の意見に耳を傾け、そのリーダーシップに従った場合だろう。

インド太平洋戦略の幻想
―― 東アジアを重視すべき理由

2021年4月号

ヴァン・ジャクソン ビクトリア大学ウェリントン 国際関係論教授

「インド太平洋」という概念が、アジアの代替表現、中国への対抗バランス形成という視点で捉えられている。「自由で開かれたインド太平洋」の目標は高貴なものに思えるかもしれないが、それを模索すれば、アメリカはおそらく道に迷う。実際には、アジアにおけるアメリカのパワーと影響力にとっての中核地域は東アジアと太平洋だからだ。世界でもっとも豊かで、軍事化され、人口の多い東アジアでの戦争を防ぐこと以上に大切なアジェンダがあるだろうか。最新の地政学的流行語のためにこの地域を見放せば、壮大な失敗を招き入れることになる。

プーチン主義というイデオロギー
―― 侮れない思想の力と米ロ関係の未来

2021年3月号

マイケル・マクフォール 元駐ロシア米大使

ロシアに関するアメリカの考えはミスパーセプションによって歪んでいる。専門家の多くは、例えば、ロシアは衰退途上国家だと誤解している。現実には、ほとんどの米市民が考えるよりもはるかに強大な軍事、サイバー、経済、イデオロギー領域のパワーをもつ、世界有数の強国の一つとしてロシアは再浮上している。事実、プーチン主義はヨーロッパだけでなく、アメリカでも新たな支持者を獲得しつつある。ワシントンは、あまりにも長い間、米ロ間競争のこのようなイデオロギー的側面を軽視してきた。ワシントンは、ロシア社会全体との結びつきを深めながらも、プーチンのイデオロギー・プロジェクトに対抗していく必要がある。

追い込まれた民主主義
―― 台頭する権威主義、後退する民主国家

2021年3月号

ヤシャ・モンク  ジョンズ・ホプキンス大学准教授

冷戦終結以降、世界が目の当たりにしてきたのは、民主主義の後退と言うよりも、むしろ、中ロなどの権威主義国家の復活だった。アメリカとその民主的同盟諸国は、この歴史的瞬間の重要性を理解し、民主体制から民主国家が後退していくのを食い止める一方で、中国やロシアのような権威主義体制に対する統一戦線を維持していかなければならない。今後数十年は、民主主義と独裁体制間の延々と続く長期的競争によって特徴付けられることになる。実際、内に権威主義諸国を抱えるようになったEUとNATOは機能不全に陥り、価値を失っていくかもしれない。民主国家が大胆な行動を起こさない限り、さらに憂鬱な未来に直面する。

ジェノサイド認定の意味合い
―― 中国のウイグル人弾圧問題の行方

2021年3月号

ジョン・B・ベリンジャーIII  元国務省法律顧問

トランプ政権末期、ポンペオ国務長官は、中国政府は新疆ウイグル自治区でウイグル人やその他の少数民族に対するジェノサイド(民族大量虐殺)に手を染めており、ウイグル人を含むマイノリティに対して「人道に対する罪」を犯していると表明した。ジェノサイド認定が表明されると、歴史的に、制裁や軍事介入を含む重要な行動をとるように政府に求める議会、市民団体、メディア、大衆の圧力は大きくなる。だが、ジェノサイド認定は、トランプ政権が末期にとった他の行動同様に、バイデン政権の対中関係改善能力を封じ込める作用をしており、実際に、それがポンペオの意図だったのかもしれない。そうでなくても、バイデン政権はウイグル人に対する中国の行動を力強く非難しただろうが、ジェノサイドの認定を支持すれば、政権が中国に対してより懲罰的な行動をとることを求める市民の圧力を高めるのは避けられない。

なぜ世界はパンデミックに敗れたのか
―― 国際協調を阻んだナショナリズムと保護主義

2021年3月号

ヤンゾン・ファン  米外交問題評議会シニアフェロー (グローバルヘルス担当)

「協調性のない、混沌とした国中心の反応」。これが、世界のCOVID19パンデミック対策の特徴だった。必要とされる「グローバルな危機へのグローバルな対応」からはかけ離れていた。国際協調体制がうまく築かれなかったことについて、世界保健機関(WHO)を非難する分析者もいる。しかし、最大の理由は、米中対立によって対応が政治化され、ナショナリスティックで保護主義的な対応がとられたことにある。米中間の緊張は、アウトブレイクに関する調査だけでなく、ウイルスの拡散を封じ込めるための協調行動をまとめるWHOの能力も抑え込んでしまった。必要なのは、パンデミックコントロールを、あらゆる国が貢献すべき「グローバルな公共財」として位置づけることだろう。

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