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に関する論文

中ロの行動をいかに抑えるか
―― 国際システムとアウトサイダー

2022年6月号

ステーシー・E・ゴダード  ウェルズリー大学教授(政治学) オルブライト研究所所長

中ロは連携しているが、まったく異なるタイプのリビジョニストであることを認識する必要がある。中国の攻勢はそれほど暴力的ではないが、大きな影響力をもっている。モスクワが破壊と暴力の戦略に依存してきたのに対し、北京はネットワークの拡大と国際秩序における地位を通じて影響力を行使してきた。冷戦後のアメリカは、現状に挑戦する手段と動機を兼ね備えたリビジョニスト国家を秩序に取り込む戦略をとってきたが、いまや新たなアプローチが必要だろう。アメリカは、国際秩序をライバルの基本的キャラクターを変革する枠組みではなく、こちらの意向を伝え、紛争を解決し、明確なレッドラインを設定するフォーラムとみなすべきだ。中国やロシアを変えるという高邁な計画でなくても、制度への取り込みを放棄しなくても、このやり方でリビジョニストを抑制できる。

そして「欧米と中露」の対立へ
―― 現状を規定する歴史の源流とは

2022年6月号

スティーブン・コトキン プリンストン大学教授(歴史学)

変化の源流は第二次世界大戦期にあり、冷戦期に流れは大きくなった。西側を基盤に戦後に形成された欧米の勢力圏が各国に繁栄と平和を提供しているのに対して、ロシアがウクライナで、中国がアジア地域およびアジアを越えて形成しつつある勢力圏は閉鎖性と強制を特徴とする。現在の中国は、外からの封鎖や制裁に耐えられるように、戦争を別とすれば、ナチス・ドイツや帝国日本が模索した戦略をとっている。プーチンが世界にロシア包囲網を築かれるなか、習近平はそうした努力をさらに強化していくはずだ。帝国は消えては現れるが、(経済・政治)ブロックは存続していく。だが、欧米は明確な優位をもっている。それは失敗から学べることだ。

人口減少に苦しむ中国
―― 一人っ子政策は放棄したが・・・

2022年6月号

カール・ミンズナー 米外交問題評議会 シニアフェロー(中国研究)

長年にわたる産児制限策を撤廃すれば、出生率は上昇し、人口は増えると北京は考えていた。2013年、夫婦のどちらかが一人っ子の場合、二人の子どもを持つことを認めると発表し、2016年には一人っ子政策は正式に廃止され、二人っ子政策となった。そして2021年には三人っ子政策が導入された。だが、どれも十分な効果はなかった。共産党が「伝統的なジェンダー規範」を復活させたことも、出生率低下の根本原因を悪化させるだろう。北京は、女性を苦しめるイデオロギー的な政策転換をやめ、人口の高齢化を受け入れるべきだ。定年退職年齢を引き上げて、持続不可能な年金額を引き下げ、高齢者、特に貧しい農村の高齢者のための介護制度を改善して少子高齢化の余波に対処する必要がある。そうしない限り、中国の人口動態はさらに悪化し、最終的には、一段と過激で痛みを伴う政策転換が必要になる。・・・

領土征服時代への回帰?
―― 世界秩序の未来を左右するウクライナ

2022年6月号

タニシャ・M・ファザル ミネソタ大学教授(政治学)

いまやロシアの侵攻によって、領土の侵略と征服を禁止する規範が、第二次世界大戦以降、もっとも深刻に脅かされている。国際社会がロシアによるウクライナ領土の編入を許せば、各国はより頻繁に国境線を武力で変更しようと試みるようになり、戦争が起き、帝国が復活し、消滅の危機に瀕する国が増えるかもしれない。侵略と征服を禁止する規範が薄れてゆけば、世界は領土紛争のパンドラの箱を開け、数百万の市民が無差別攻撃の標的にされる恐れもある。だが、国際社会は経済制裁と国際法廷を利用して、ロシアの粗野で違法な侵略行為にペナルティを科すことができる。国際社会が領土の征服を禁止する規範を擁護できなければ、大国と国境を接する諸国はかなりの消滅リスクに直面することになる。

ウクライナ戦争と中国の選択
―― 軍事と経済を区別したバランス戦略

2022年6月号

閻学通 清華大学 教授 国際関係研究院 学院長

「経済制裁で威嚇してもロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかったアメリカは、いまや紛争の終結から長期化へと目標を見直している」と北京では考えられている。バイデン自身、「この先長い戦いに備えなければならない」と発言している。オースチン米国防長官が「ウクライナに侵攻できない程度にロシアが弱体化することを望んでいる」と発言したことも、アメリカはロシアの弱体化を優先しているという中国側の確信を高めている。北京は「ロシアを泥沼に引きずり込もうと(ワシントンは)ウクライナでの紛争を長引かせるつもりではないか」と懸念する一方、ロシアのウクライナ戦争についての中国の言動がどのようなものであれ、ワシントンが対中封じ込め戦略を緩めるとは考えにくいとみている。

中国経済は低成長期へ
―― 世界経済への意味合い

2022年6月号

ダニエル・H・ローゼン ロジウム・グループ パートナー

企業投資、家計や政府の支出、貿易黒字からみても、中国の国内総生産(GDP)がこれまでのような成長を持続できるとは考えにくい。現実には、2022年に2%の成長を維持することさえ難しく、正確に計測すれば、2022年はゼロ成長、あるいは景気後退に陥る危険もある。基本的な財政・金融・その他の改革を遂行せずに、政治的に決定された高い成長目標を永続的に達成できると信じる理由はどこにもない。ワシントンは「中国経済が問題に直面している」という現実への関心を責任ある形で喚起すべきだろう。中国の経済成長の鈍化は、14億の中国人だけでなく、世界の多くの人の経済的繁栄を損なうことになるのだから。・・・

新しいアラブ・イスラエル関係
―― アブラハム合意のポテンシャル

2022年5月号

マイケル・シン ワシントン近東政策研究所 マネージング・ディレクター

2020年、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン王国はアメリカの仲介で国交を正常化した。アブラハム合意として知られるこのアレンジメントは、これまで経済統合がなかなか実現しなかった中東地域での奥深い経済統合を促すだろうし、世界の投資家を魅了し、この地域全体の成長に貢献すると考えられる。すでにモロッコとスーダンが、UAEに続いてイスラエルと国交正常化合意を結んでいる。一連の和平合意は、かつては望みようもなかったイスラエルとアラブ諸国との政治・安全保障協力に道を開き、地域紛争を抑え、イランを抑止できる地域国家連合の形成へとつながっていくポテンシャルを秘めている。・・・

ウクライナ危機と北朝鮮
―― 金正恩の思惑、変化した半島情勢

2022年5月号

スー・ミ・テリー 元米中央情報局(CIA)分析官

ロシアのウクライナ侵攻を前に、北朝鮮の指導者、金正恩は核の兵器庫を増強する決意をさらに強くしたはずだ。核を保有していれば、ロシアがあえてウクライナを攻撃したはずはないと彼は考えている。この半年間、北朝鮮は新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、鉄道発車式弾道ミサイル、新型地対空ミサイルシステム、長距離巡航ミサイル、極超音速ミサイルを実験し、3月24日には米全土と欧州を射程に収めると考えられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試射している。一方、次期韓国大統領の尹錫悦は文在寅よりもバイデンに近い立場をとると考えられ、平壌が核実験を行えば、2人はより積極的な制裁の実施に向けて連携するだろう。日米韓の連携を強化するために、ソウルが東京との関係を修復する必要性でもバイデンと次期韓国大統領は一致している。

秩序の崩壊と再生
―― 生き残るのは米中どちらの秩序か

2022年5月号

マイケル・ベックリー タフツ大学准教授(政治学)

ストレスの多い仕事をし、太った喫煙者の習近平は2030年代初頭には、生きていたとしても80代だ。中国の人口危機が本格化し、現在から2030年にかけて生産年齢人口は7000万程度減少し、高齢者人口が1億3000万増えると予測されている。これほど多くの課題に直面している国が、世界の富裕国からの断固とした反対を前にしても、独自の国際秩序を長く維持できるとは考えにくい。だがアメリカが主導する民主的秩序が維持されるという保証もない。2024年の米大統領選挙で憲政危機が起き、アメリカが国内闘争に陥る危険さえある。そうならないとしても、アメリカとその同盟国は立場の違いによって分断されていくかもしれない。よくも悪くも、明らかなことが一つある。それは、中国との競争が新しい国際秩序を形成しつつあることだ。

ウクライナ・エクソダス
―― 欧州難民政策を改善するチャンス

2022年5月号

アレクサンダー・ベッツ オックスフォード大学教授(国際関係論)

すでに欧州連合(EU)はウクライナ難民に一定の保護を与え、少なくとも3年間はEU圏に滞在できる措置をとっている。EUから離脱したイギリスでさえ、数万の市民がウクライナ難民を自宅に受け入れると申し出て、厳格なビザ発給制限を緩和するように政府に求めている。こうした大きな連帯意識は、ヨーロッパの指導者たちが、難民や移民によりうまく対処する、より公平な難民政策を導入する機会をもたらしている。シリア紛争などの戦争で荒廃した国からヨーロッパに数百万の難民が押し寄せたとき、当初の歓迎が結局は激しい反発とナショナリズムの高まりにとってかわられたことを忘れてはならない。同じような流れが起きるのを避けるための施策が必要になる。

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