西洋と中東
―― 近代化と文明の受容
1997年6月号
近代性とはそれぞれの時代における力強くて支配的な文明の規範や基準にほかならない。そして支配的な文明の受容をつうじた近代化は、戦場における西洋の軍事技術の優位に注目したイスラム世界の指導者たちがそれを導入したように、多くの場合切実な必要性によって導かれ、やがてさまざまな領域へと広がりをみせていく。ここで常に問題とされるのは支配的な文明の規範や基準にほかならない近代性が、それを導入する側の文化や文明にどのような影響を与えるかである。「近代化と西洋化」をめぐる長期にわたる議論は、「自らの固有の文明を汚さずにいかに近代化をはかるか」という、文明の「受容と拒絶」をめぐる判断についての議論にほかならない。だが、同時代における議論は、近代性が「それに先立つ文明の遺産を継承した」現代文明の規範・基準であることをとかく忘れがちだ。かつてはイスラムがそれを定義づけ、現在は西洋が、そしていずれ過去の諸文明の上に成り立つ西洋文明の遺産を継承するまだ見ぬ文明がそれを規定することになるだろう。