国を盗んだロシアのエリート
1999年11月号
ソビエト崩壊期にすでに巨万の富を手にしていた旧ソビエトの特権階級は、国の崩壊こそ気にかけなかったが、その後、ロシアという新生国家そのものを買収してしまった。規制の悪用、特権的輸出、補助金と、新興成り金たちが国から大金をせしめ、個人の懐に収める機会はいくらでもあった。彼らは数多くの政治家や役人に賄賂をばらまいては富を増やしていくとともに、「自分たちの利益独占状態に終止符が打たれるのを恐れて」、経済成長を促し国民の生活向上につながるはずだったリベラルな経済改革路線を妨害する試みにでた。こうした窃盗行為と無分別な外貨の流入の結果が、一九九八年の金融危機だった。ロシアの問題を市場が自由化されすぎたことに求めるのは、お門違いである。問題は、自由化が進展せず、大きな政府がつくりだす過剰な規制がいまだに存在し、それが汚職の温床となっていることなのだ。経済・金融危機はこうした現実をどのように変えたのだろうか。そうした変化は、ロシア経済と社会を健全化へと導くのだろうか。