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に関する論文

ジョナサン・シェル論文によせて
核兵器は平和のための道具である

2001年1月号

アーネスト・W・レフィーバー

核兵器はグローバルな舞台のドラマにおけるアクターではなく、間違いを犯す人間が、うまく利用することも、あるいは間違った使い方をすることもできる道具にすぎない。潜在的な危険を秘めているとはいえ、これまでのところ核兵器は平和を維持する手段として機能してきている。

冷戦期の核ドクトリンは、今となっては意図とは反対の結末しかもたらさない。すでに相互確証破壊に基づく抑止の時代は過ぎ去っており、むしろアメリカは「相互確証安全」という新概念を生みだす機会を手にしている。

「核廃絶か 止めどない核拡散か」(「フォーリン・アフェアーズ」、二〇〇〇年九/十月号、「論座」二〇〇〇年十月号)のなかで、ジョナサン・シェルは、いつもどおり歴史の流れを踏まえた知的な見解を示し、核保有国がともに核廃絶のための計画を立ち上げて、それを実行に移さない限り、国際社会の流れが核拡散へと向かいかねないと警鐘を鳴らした。ワシントンによる(核不拡散と抑止を抱き合わせた)戦略は、世界の核トレンドを拡散容認という方向へと向かわせかねない、と。さらに、シェルは、大統領が(核廃絶、あるいは核の削減についての)現状の政策の改革案を示さないかぎり、

核政策をめぐる世論を巻き込んだ広範な議論が実現したとしても、そうした機会が無為に費やされかねないと指摘した。ホワイトハウスが現行の戦略を見直し、官僚機構内の抵抗を克服するには、まず核の専門家たちが政府に、詳細を押さえた賢明な政策構想を示すべきだろう。

グローバル時代の大いなる交渉を開始せよ

2001年1月号

デビッド・サンガー ニューヨーク・タイムズ紙記者

新政権は、アメリカの圧倒的な経済優位を維持していくとともに、アメリカの力に対する世界の反発をいかに緩和するかという、大きな課題に直面する。シアトルでの交渉決裂は、発展途上国が自らの立場を表明し始めたためであり、いまやわれわれは全く新しい貿易環境における新たな取り決めを必要としている。グローバルな経済秩序が途上国に恩恵を与えない限り、日米欧がそこから利益を引き出すのも不可能になる。

Review Essay
アジアの資本主義と文明の変容

2001年1月号

外交問題評議会シニア・フェロー
ウォルター・ラッセル・ミード

企業家の野心を解き放ち、社会的つながりを弱めていく、あたかも台風のような資本主義の創造的破壊力がアジアを引き裂いている。資本主義と西洋の源流思想が、どちらもアジアの大半の地域にはまだ目新しい存在であるために、これが外来思想、あるいはおそらく不法侵入者のように受け止められることも多い。二十一世紀が、アジアの興隆に特徴づけられる可能性もあれば、一方でアジアの終焉によって記憶されることになる可能性も十分にある。間違いなく言えるのは、すべてをのみ込んでしまう資本主義や西洋の源流思想が、「地理的アジア」の人々に深い社会的・文化的変化を強い、この地域の諸文明を弱め、変容させていく可能性が高いことだ。

終わりなきカシミール紛争の本質

2001年1月号

ジョナー・ブランク/人類学者

かつてカシミールは、ヒンズー教徒とイスラム教徒が調和のなかでともに暮らす、世俗的な多宗教国家としてのインドの可能性を示す模範地域だった。しかし今やここでは、インドとパキスタン間の核戦争の引き金となりかねない武力衝突が頻繁に起きている。パキスタンの支援の下で活動しているといわれるイスラムゲリラがヒンズー教徒を攻撃し、これにインド政府の治安部隊が反撃するというパターンが終わることなく悪循環のように繰り返されており、民間人を含むすべての人々が暴力に手を染めている。カシミールが安定しないかぎり、インド、パキスタンの安全は確保されず、両国民衆の協調がなければカシミールが安定することもない。たとえ政府間の合意が成立したところで、それは臨界に達していない核爆弾も同然である。本質的問題は宗教対立よりも、むしろこの地域の経済的貧困にあるからだ。事実、多くの若者が食いぶちを稼ぐ「仕事」としてゲリラ活動に参加している。テロによって、カシミールの最大の資源である自然を生かした観光産業も台なしとなり、復興しようにもテロリズムを根絶するのは事実上不可能である。核戦争の危険を排除し、カシミールの平和を取り戻すには、まず、悪循環の根源であるカシミールの経済的貧困に世界は目を向けなければならない。

資源の利用効率改善が育む「新資源」

2001年10月号

エモリー・B・ロビンス ロッキーマウンテン研究所研究担当最高経営責任者
L・ハンター・ロビンス ロッキーマウンテン研究所戦略分析担当最高経営責任者

エネルギーの利用効率の改善ペースが石油資源の枯渇ペースを上回り続ければ、いずれ石油は低価格であっても市場で見向きもされない資源になる。利用効率の改善によって節約される資源は、いまや米国内のエネルギー供給の五分の二に匹敵する規模に達しており、これこそもっとも急速に拡大している新しい「資源」だ。石油価格を引き下げ、安定させることができるのは、唯一需要サイドでのエネルギー利用効率の改善促進だけだし、利用効率レベルをほんの少し引き上げるだけでそれは実現する。石油の供給を増やすのではなく、使用効率の改善に重点を置いた需要管理措置とクリーンな代替エネルギー促進策を政策の基盤に据えるべきだ。

世界の森林を守るには

2001年1月号

デビッド・G・ビクター
外交問題評議会シニア・フェロー
ジェシー・H・アズベル
ロックフェラー大学

古代文明の時代以来、人間は森林を伐採して生活してきたが、いまや世界の人口に食物を供給し、木材やパルプを供給するのにかつてのように自然の森林資源を浪費する必要はない。農業の生産性を高めることで農地を縮小し、人工林の生産性を高めることで、森林の面積を大幅に増大させるとともに、乱伐されている森林の面積を減らしていく道が存在するからだ。そのために行動を起こすべきは今で、G8を枠組みにして、新たな森林保護のための国際協調枠組みをつくるべきである。

アジアの資本主義と文明の変容

2001年1月号

ウォルター・ラッセル・ミード
外交問題評議会シニア・フェロー

「非公式なやり方に依存して、膨大な資本を呼び込んだうえに、経済行動を拡大するためであれば収益への配慮を無視するような傲慢な姿勢が生まれたため、結局、流れ込んだのと同じ速さでアジアから資本が逃避してしまった」かつて「奇跡」を実現したのと同じ文化的価値が、どうして今は「大失敗」を招いているのか。アジア危機を経た世界は、「質素、勤勉、家族中心の価値観、権威への尊重」という美徳が、「強欲、硬直性、情実主義、あからさまな腐敗」といった悪徳へと変貌しうることを知っている。それでも、アジア的価値の優越性を唱え続け、アジア危機を契機として欧米批判の論陣を張る人物たちの真意は、どこにあるのか。

中国はデフォルトに陥るのか

2001年1月号

ウィリアム・ギャンブル  エマージング・マーケット・ストラテジーズ社プリンシパル

景気刺激策、軍事予算の拡大など、中国政府の歳出が増大しているにもかかわらず、歳入はますます先細りとなりつつある。中国では脱税行為が「制度化」されているために、税を負担することはむしろ危険な行為なのだ。
権限を持つ個人や集団が国家資源に寄生し、私腹を肥やし、社会を貧困化させる――これが今日の中国の姿なのだ。最終的に財政難が国庫を干上がらせ、国内の安定が大きく脅かされるばかりか、混乱は国外に波及するに違いない。

平和維持活動は紛争の近隣諸国に委ねよ

2000年12月号

マイケル・ハーシュ ニューズウィーク誌外交担当チーフ・コレスポンデント

人道的な介入の必要性は今後もなくならないが、アメリカも国連も世界の警察官にはなれない。アメリカにはその意思がなく、国連にはそうする能力がないからだ。
しかし、世界の警察官はいなくても、「地域的警察官」に国連が正統性を与えることで、問題に直接的な利害を有する地域諸国が地域的な平和維持に努力すれば、問題の多くを解決できるはずだ。
国連の承認をとりつけた地域的な警察官による取り締まりで、すべてではなくとも、世界における多くの残虐行為をやめさせることができる。

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