外交問題評議会タスクフォース・レポート
アメリカと東南アジア
2001年8月号
以下は二〇〇一年六月に公開された、アメリカの東南アジア政策に関する米外交問題評議会タスクフォースによる大統領へのメモランダムと、リポート本文の要約・抜粋。反対意見を含む英文の全文はhttp://www.cfr.orgからアクセスできる。
1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。
2001年8月号
以下は二〇〇一年六月に公開された、アメリカの東南アジア政策に関する米外交問題評議会タスクフォースによる大統領へのメモランダムと、リポート本文の要約・抜粋。反対意見を含む英文の全文はhttp://www.cfr.orgからアクセスできる。
2001年4月号
アジアにおける親密な個人関係と血縁を基盤とする社会関係は、この地域の経済発展に一役買った。この二つの要素が相まって、欧米の法と独立した司法がはぐくんできたのとまったく同質の、商取引に必要とされる安心感と信頼が作り出された。戦後のアジア諸国はこうした家族支配の企業へ依存することによって、アジア諸国は「商法の整備を待たずに、経済成長を加速できた」。問題なのはアジアが急成長しすぎたため、こうしたシステムでは間に合わなくなっていることだ。
2001年4月号
アジア企業が欧米流の改革を断行していないとすれば、それは欧米の改革を理解していないからではなく、単に彼らが置かれている状況下で改革を行うことが意味をなさないからだ。欧米の批評家たちは、アジアの企業が、この地域の社会、制度面での特異性に合理的に対応してきたことを見落としている。こうしたやり方が過去における成長を呼び込み、今でも、短期的な成長の基盤を提供している可能性がある。 だが、資金を調達できない状況が続けば、アジア企業も資本市場にアクセスするために自己変革を余儀なくされる。グローバル経済にむけた自己変革に成功した企業が収益と生産性の伸びを示すことこそ、改革の妥当性を示す根拠となり、改革を促進する刺激となるだろう。
2001年4月号
グローバル化のなかで、世界には三つの貿易ブロックが形成されつつある。アメリカ経済が大幅にスローダウンすれば、ヨーロッパとアジアはより大胆に独自の道を歩み始めるだろうし、実際に東アジアは歴史上始めて自分達の経済圏を構築しつつある。「資金もたいして出さず、自国の法律ややり方を変えることもなく、他国に命令だけを下す」。アメリカに対するこのような不満が、世界中でより一般的な反米主義と混じり合い、それを強化している。だからこそ、ヨーロッパと東アジアは自分たち独自の経済圏づくりに乗り出しているのだ。問題は、アメリカが無気力なままであれば、伝統的に多国間プロセスにもプラスの方向で作用してきた地域的自由化の試みが、しだいに地域ブロック間の反目と敵意によって彩られかねないことだ。
2001年3月号
人々のグローバリズムに対する不満が高まっているのは、世界の指導者たちが民主的統治へのコミットメントを示しつつも、民衆生活に影響を与えるようなグローバルレベルでの決定に対して市民が発言権を持っていないからである。グローバルな民主的フォーラム(グローバル議会)が誕生して初めて、環境・労働基準について討議したり、南北両方の観点から経済的公正さについて考えたりできるようになる。社会正義や人道的な世界秩序の形成に関心のある人々にとって、グローバル議会を中核とする民主的なグローバル統治が持つ魅力はこれまでになく高まっている。
2001年3月号
2001年3月号
十万の前方展開兵力を維持することがアメリカのコミットメントのシンボルになると結論したナイ・リポートから6年、今やこの数字を見直してもよい状況にある。日本の米軍基地を現状のまま維持しようと試みれば、大変な反発を招き、朝鮮半島や台湾海峡での危機の際に大きなアセットとなる沖縄の嘉手納空軍基地や日本本土の海・空軍基地の使用権を失うことになりかねない。ワシントンは沖縄における海兵隊の兵力を五千程度へと削減すべきだし、海兵隊の設備や訓練・演習場も日本側に返還すべきだろう。
2001年2月号
中国の民主改革路線派の人物によって、ひそかに中国から持ち出された膨大な量の中国政府機密文書を英訳・編纂した『天安門ペーパー』が書籍(The Tiananmen Papers, Public Affairs, New York)として二〇〇一年一月にアメリカで出版され、その抜粋がフォーリン・アフェアーズ二〇〇一年一/二月号に掲載された。この議事録は一月十一日にニューヨークの外交問題評議会で開かれたこの文書に関するディスカッションの要約・抜粋である。二人の元大使を含む五人の出席者はすべて中国専門家で、アンドリュー・ネーサンとオービル・シェルは天安門ペーパー編纂プロジェクトに直接かかわり、英語版の『天安門ペーパー』の序文とあとがきをそれぞれ書いている。またジェームス・リリーは天安門事件当時の駐北京アメリカ大使。
2001年2月号
アメリカの将来にとって中国ほど重要な国はない。それだけに、中国との対立をもくろむ勢力がアメリカの政策立案過程を牛耳ることになれば、世界は大きく不安定化するだろう。朝鮮半島の情勢変化は、中国が受け入れるような形で、東アジア諸国とのアメリカの安全保障同盟を再定義・強化し、アメリカ軍の前方展開を維持できるような地域安全保障枠組みを構築する必要を高めている。新大統領は、対中政策を政治的論争から外すことの重要性を訴え、北京と台北に関するアメリカの死活的な利益が何であるかを明確にし、こうした複雑な関係を取り扱うための明確なビジョンを表明すべきである。
2001年2月号
金大中は南北首脳会談を通じて北朝鮮を孤立から救い出し、日本を安心させ、韓ロ双方にとって互恵的な経済取り決めによってロシアの利益認識も刺激してみせたが、北東アジアでの新たな力学はより大きくて予期せぬ変化を表へと引きずり出すかもしれない。一九九〇年代半ばに二十基だった台湾海峡地域に配備された東風二号などの短距離ミサイルの数は、九九年までに二百に達し、いまや一週間に一基ずつ増え続けている。現在形成されつつある流動性に満ちた北東アジア秩序には、一連の二国間安保関係だけでなく、トラック二プロセスを含む、より幅広い包括的安全保障メカニズムが必要である。