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に関する論文

グローバル経済の格差をなくすには

2002年2月号

ブルース・R・スコット ハーバード大学ビジネス・スクール教授

現在のグローバル経済では、勝ち組と負け組が必然的に出てくるし、1日1ドル足らずしか稼げない人々が世界にはほぼ10億人もおり、世界的な所得格差はますます拡大している。しかも、これを市場メカニズムで是正していくのは不可能である。問題の核心は、富裕国が移民と農産品輸入に対する障壁を設け、 一方で、発展途上世界の多くの政府が無能で効率性を欠いているために、外国資本を呼び込めずにいることだ。経済発展のためには制度の改革が必要であり、そのためには政治的・社会的近代化も必要になってくる。制度的不備こそが発展途上諸国の経済発展を妨げている大きな障害であり、外部からの助言や援助も制度面での整備に配慮したものとする必要がある。

グローバル化が世界の貧困層を救う

2002年2月号

デービッド・ダラー 世界銀行開発研究グループ・エコノミスト  アート・クライ 世界銀行開発研究グループ・エコノミスト

最近のグローバル化の潮流が、世界の所得格差を縮小し、貧困撲滅を進める上で強力な武器になってきたことをすべての人々が認識すべきである。反グローバル化勢力の主張とは全く逆に、途上国が貿易と投資領域の開放・自由化を行い、国内の制度改革を行えば、先進国と貧困国の所得・経済格差が縮まることは立証されている。現在問われているのは、このグローバル化の流れがよどまぬように、先進諸国が開発途上国のグローバル経済への統合を推進する意図をもっているかどうかだ。

人間の顔をしたグローバル化をめざせ

2020年2月号

ジャグディシュ・バグワティ 米外交問題評議会国際経済担当シニア・フェロー

資本主義、グローバル化、多国籍企業の行動に対する間違った思い込みが、知識に裏打ちされた議論によって論破されていかない限り、反グローバル化運動は今後も大きな問題を作りだす。だが、グローバル化や資本主義が、開発途上世界で貧困などの社会的問題を作りだし、こうした問題を悪化させているわけではないと主張するだけでは不十分だ。貧困国における問題のある労働慣行をやめさせるには、制裁ではなく、メディアやNGOと連携して説得を試み、企業は、自らの行動領域での社会貢献を強化すべきだろう。

強い大統領を誕生させるには

2000年2月号

セバスチャン・マラビー  「ワシントン・ポスト」論説委員

アメリカ大統領制は今や機能まひに陥る寸前の状態にある。メディアが大統領の演説を敬意を持って報道することもなくなり、ケーブルテレビは「専門家」による政策批判をトークショーとして流し続ける。そして、インターネットを巧みに利用して民意に訴えかける利益団体が、マスコミによるさらなる政府批判のエスカレーションを誘う。現職の大統領が無能なわけでも、アメリカが言われるほど孤立主義的なわけでもない。アメリカ外交が大きな揺れを見せているのは、マスコミや利益団体が大統領包囲網を形成し、敵対意識をますます強める議会や司法部によって、「抑制と均衡」がバランスを失い、大統領が一貫してイニシアチブを発揮できないような環境に置かれているからだ。問題は、今や構造的に弱くならざるを得ないこの国の大統領が、それでも世界に残された唯一の超大国の指導者であることだ。アメリカと世界が指導者を失って漂流し出す前に、強い大統領を登場させるべく、アメリカの政治制度改革を断行する必要がある。

イスラム世界へと引き込まれたアメリカ

2002年2月号

マイケル・スコット・ドーラン プリンストン大学教授

イスラム過激派は、世俗主義という形で西洋の大衆文化を広く拡散し、イスラム世界の政治経済に最も深く関与しているアメリカを激しく批判したが、彼らの本当の狙いは中東地域の「背教的」政権だった。アメリカとの戦争は、ビンラディンにとって本質的な目的ではなく、それは彼が標榜するイスラム過激主義が、イスラム世界で大きな流れを形成できるようにするための手段にすぎなかった。つまりアメリカは、イスラムという他人の内輪もめに引きずり込まれたのだ。

それを、殺人へと突き進む四つ足の野獣都市と呼ぶがいい。歴史的にも、ニューヨークは片手に自由という名のぼろ切れを握りしめ、もう一つの手で地球を握りつぶす女神なのだから。――アドニス(アリ・アハメド・サイド)「ニューヨークの葬式」一九七一年

中国のWTO加盟という機会と危機

2002年1月号

ジェフリー・L・フィードラー 米労働総同盟・産別会議顧問   ロバート・D・ホーマッツ ゴールドマン・サックス&カンパニー副会長 ケビン・ニーラー 国際政策フォーラム上級研究員  デービッド・E・サンガー ニューヨーク・タイムズ紙ホワイトハウス担当記者

以下は十月中旬に公開された米外交問題評議会のリポート「中国のWTO加盟と米中関係の行方」(日本語インターネット版二〇〇一年十二月号掲載)の公表を受けて開かれた討論会の議事録からの抜粋。スピーカーはいずれもリポートの作成にかかわったタスクフォース・メンバー。発言部分の前に名前を記していない議論は匿名によるもの(匿名と表記)。

朝鮮半島の平和的進化への道筋──米軍の全面撤退を検討せよ

2002年1月号

セリグ・ハリソン センチュリー財団研究員

未来がいかなるものであっても、朝鮮半島は米中間そして日中間の緊張の焦点であり続ける。北朝鮮の脅威がなくなった後も半島での軍事プレゼンスをアメリカが維持すれば、北京政府が、それをアメリカによる中国封じ込めだと考えてもおかしくはないし、中国と日本の旧来の敵意を再燃させることにもなる。まず、経済交流と三十八度線での軍事的緊張緩和に必要とされる法律的枠組み、交渉枠組みの条件を整えるべきである。次に、南北間の緊張が低下し、南北国家連合形成の流れが勢いを持ち始めたら、アメリカは朝鮮半島の非核化構想とともに米戦力の朝鮮半島からの撤退を申し入れ、アメリカと中国はそれぞれソウルと平壌との相互安全保障同盟を同時に解消すべきだろう。

WTOの透明性を高めよ

2002年1月号

ブルース・ストークス 米外交問題評議会準シニア・フェロー パット・チョート 米議会経済リーダーシップ研究所副理事

以下は二〇〇一年十一月に公開された「アメリカの貿易政策の自由化を」というタイトルのタスクフォース・リポートの一章「WTOの透明性を高めよ」の邦訳文。リポートでは、世界貿易機関(WTO)の問題以外にも、アメリカの貿易政策をめぐるコンセンサスの崩壊、国内規制その他数多くのトピックが扱われている。

北朝鮮の意図を確認せよ
――朝鮮半島政策の次なる課題

2002年1月号

モートン・I・アブラモウィッツ センチュリー財団上席研究員   ロバート・A・マニング  米外交問題評議会シニア・フェロー

二〇〇〇年六月の歴史的な南北首脳会談から一年、当時の熱い期待はまだ少しは残っているが、朝鮮半島情勢は厄介なほどに先の読めない状況にある。こうしたなか、ブッシュ政権は対朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)外交を新たに開始した。南北首脳会談は、南北朝鮮の関係に新たな一章を開くとともに、大量破壊兵器問題の背景にある、南北間の「緊張」という朝鮮半島の根本問題の解決への糸口を切り開き、真の和解の可能性も浮上させた。しかし、五十年に及ぶ不信と対決の歴史を少しずつ解きほぐしていくという困難な作業を前に、首脳会談の際に高まった期待と約束もいまや色あせてきている。ブッシュ政権が受け継いだのは、長く続いてきた軍事的膠着状態だけではなかった。新政権は、緊張の大幅な緩和、安定した抑止状況、緊密な米韓同盟、そして十三年の歴史を持つ北朝鮮との交流という側面も受け継いだ。南北首脳会談は、北朝鮮の対外姿勢や戦術を大きく変化させることをわれわれに予想させるものだった。たしかに、かつては謎に包まれ、嘲笑の的とされることも多かった金正日だが、いまや数多くの外国の指導者たちと丁々発止やり合える、まともな政治家として表舞台に登場している。北朝鮮はイギリス、イタリア、ドイツなどアメリカの同盟国を含む二十カ国を超えるアジア・ヨーロッパ諸国との関係正常化のため、特徴には欠けるとはいえ、見事な外交攻勢に打って出た。しかし劇的な戦術上の変化を別にすれば、平壌の全方位外交が北朝鮮の政権内での重大な方向転換を意味するのか、経済利益や安全保障と引き換えに軍備削減交渉に応じる気があるのか、予断を許さない状態にある。今回のタスクフォース・リポートは、朝鮮半島情勢がこの三年間でどのように推移したかを軸に、米韓の政策がそれぞれどのような経緯をたどってきたか、現状に対処するための最適の政策は何なのか、を中心に分析している。

Classic Selection 2002
1940年体制の弊害を克服するには

2002年1月号

ウィリアム・H・オーバーホルト ハーバード大学アジアセンター研究員

現在、日本を機能不全に陥れている制度上のルーツは、現行の制度の多くをいまだに支配している1937~45年に作られた「1940年体制」に求めること ができる。この体制は日本の戦時経済を動かすために合理的に作られ、実際にうまく機能した・・・だが、かつては日本の再建と成長にうまく貢献した体制上の 特質が、いまやこの国を崩壊の瀬戸際へと追い込んでいる。

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