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に関する論文

論争 テロリストは「敵の戦闘員」か、犯罪者か

2004年6月号

ラス・ウェッジウッド ジョンズ・ホプキンス大学教授(国際法・外交)
ケネス・ロス ヒューマン・ライツ・ウオッチ事務局長

 ケネス・ロスは、「境界線のない戦争――対テロ戦争に戦時ルールを適用すべきか」(フォーリン・アフェアーズ日本語版二〇〇四年五月号)で、ブッシュ政権はアルカイダの幹部を拘束するために戦時ルールと軍事力を用いていると批判している。「対テロ戦争」が本当の戦争であるかどうかは定かでなく、いずれにせよ、テロリストの拘束には戦時ルールではなく、アメリカの刑法(平時の法執行ルール)で十分対処できるはずだ、というのが彼の言い分だ。

 しかし現実に激しい戦争は起きているし、刑法でテロリストに対処していくのではあまりに心許ない。これこそ、十年間にわたってテロ容疑者の逮捕と起訴を試みつつも、結局は、9・11を防げなかったアメリカが遅まきながら得た教訓に他ならない。事実、米連邦捜査局(FBI)のテロ問題に関するタスクフォース議長は、「アルカイダによるテロを通常の殺人事件として扱ってきたが、これでは爆破テロは防げなかった」とコメントしている。たしかに平時ルールでも、テロ容疑者の何人かを活動できないようにすることはできたが、アルカイダがリクルートした要員たちに戦闘方法や爆発物のつくり方を教える訓練キャンプを粉砕することはできなかった。パキスタンやサウジアラビアの情報機関がタリバーンやアルカイダに資金援助するのを、アメリカの司法当局がやめさせられたわけでもない。いまも昔も、アルカイダの活動基盤を破壊するには、刑法(平時ルール)だけでなく、外交、そして武力(戦時ルール)の発動を必要とする。

……

アメリカ帝国という幻想

2004年6月号

G・ジョン・アイケンベリー/ジョージタウン大学教授

帝国論争がまた盛んになってきた。アメリカがかつてない形で世界を支配している以上、当然のことかもしれない。地政学的にもイデオロギー的にも、冷戦後に唯一の超大国となったアメリカの向こうを張っていけるだけの相手はいない。ヨーロッパは内向きとなり、日本も停滞したままだ。半世紀前にアメリカの占領を経験した日独はそれぞれ世界で二番目、三番目の経済大国に成長したが、それでも、安全保障面ではまだアメリカに依存している。

世界で何が起きているのか。それを告げるのは米軍基地と空母の動きである。ロシアもいまやアメリカのほぼ公的な安全保障パートナーだし、中国もこれまでのところは、アメリカの支配的優位を現実として受け入れて自らの行動を決めている。世界の最強国が他の大国の制約を受けずに行動するようになったのは、近代に入ってから初めてのことだ。つまり、われわれはまさにアメリカ率いる単極構造(一極支配型の)世界にある。

オクシデンタリズム
――敵の目に映る西洋の姿

2004年6月号

イアン・ブルマ/バードカレッジ教授
フォアド・アジャミー/ジョンズ・ホプキンス大学教授

アジャミー オクシデンタリズムについて定義してほしい。それは反米主義のことなのか。

ブルマ いや、そうではない。オクシデンタリズムを反米主義ととらえるのはアメリカにありがちな誤解というものだ。実際、アメリカだけでなく、アメリカに敵対的な地域を含む世界の多くの地域で西洋とはアメリカのことで、オクシデンタリズムとは実際にはアメリカの外交政策やハリウッド映画に対する敵意を意味すると考えられている。アメリカの外交政策を批判したり、ハリウッド映画に嫌悪感を抱いたりするのは人の自由であり、何も問題はない。それはわれわれの言うオクシデンタリズムではない。

 オクシデンタリズムとは、もっと古い時代からある、西洋のことを、冷酷でコスモポリタン的で個人主義的な心なき世界とみなす考えのことだ。西洋世界は金儲けと快適さを探し求めることに血道を上げるばかりで、他の固有の社会に有毒な影響を与えるという西洋へのイメージともいえるだろう。もっとも、私がここで指摘しているのは幻想であり、現実に存在する文明の衝突とは違う。オクシデンタリズムとは、自らの社会に深く根ざした固有の価値観に対して西洋が毒をまき散らすという幻想のことだ。実際、あるイランの知識人は、毒をまき散らす西洋という意味を込めて、ウエストキシフィケーション(西洋の毒による汚染)という造語をつくり出している。



*邦訳文は、二〇〇四年四月二十二日にニューヨークの米外交問題評議会で開かれたミーティング・プログラムの議事録からの抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

外国へのアウトソーシングと雇用

2004年6月号

ダニエル・W・ドレズナー/シカゴ大学政治学助教授

経済の伸び、とりわけ雇用の伸びが低迷しているために、評論家は企業による外国へのアウトソーシングと国内失業率間の因果関係を突き止めようと試みている。だが、外国へのアウトソーシングが国内での雇用喪失につながると考えるのは、明らかに間違っている。こうした間違った主張には根気よく反論していかなければならない。さもなければ、保護主義が台頭し、低成長、低所得、そして雇用不足という、労働者にとって悲惨な事態に直面することになる。

中国の政治改革は進んでいるのか  
――変貌する中国にどうかかわっていくか

2004年6月号

エリザベス・エコノミー/米外交問題評議会アジア研究ディレクター

かつて中国指導層は、経済成長さえ実現すれば、民衆に医療や社会保障を提供し、基本的人権や環境を守るという責務から自分たちは放免されると考えてきた。しかし、その結果、政府の腐敗や犯罪が広がりをみせ、社会保障システムが形骸化し、人々の政府への信任が失われていった。こうした社会的不満を和らげていかないことには、体制を存続できないことを理解した中国の指導者たちは、政治改革路線で状況に対応しようと試みだしている。

民主党大統領で米外交は変わる  
――強制ではなく、説得によるリーダーシップを

2004年5月号

サミュエル・バーガー/クリントン政権国家安全保障問題担当大統領補佐官

「われわれは、アメリカの目的の実現を損なわないような手段をとる指導者を必要としているし、同盟諸国をわれわれから離反させていったイデオロギー的な硬直性とは無縁な前向きの現実主義を必要としている」

「世界におけるアメリカの道徳的・政治的な権威と権限を回復しなければならない。そうした権限を回復できれば、われわれが行動を起こすと決断した場合に、アメリカと協調行動をとるように他国を説得できるようになる。国益以上の大きな何かにワシントンがコミットしない限り、他の諸国を説得することはできない」

キッシンジャーとサマーズが描く米欧関係の未来像

2004年5月号

タスクフォース共同議長 ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャー・アソシエーツ会長
ローレンス・サマーズ ハーバード大学総長 プロジェクト・ディレクター
チャールズ・カプチャン 米外交問題評議会シニア・フェロー

米欧関係は、これまでになく緊張した局面にある。ヨーロッパ人の多くは、アメリカ人はヨーロッパに悪意をもっていると考え、一方アメリカ人の多くはヨーロッパ人の行動に反発し、ヨーロッパ側の脅威認識を的はずれだと切り捨てる。ヨーロッパでは、アメリカというハイパー・パワーを封じ込めるべきだという議論さえある。イラク戦争開始直後の二〇〇三年三月、米外交問題評議会は、キッシンジャー元米国務長官、サマーズ元米財務長官を共同議長に迎え、新しい局面を迎えている米欧関係に関するタスクフォースを組織した。邦訳文は、二〇〇四年三月に公表されたリポートに関するプレス・ブリーフィングからの抜粋・要約。リポート本文、プレス・ブリーフィングの全文(ともに英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

境界線のない戦争
――対テロ戦争に戦時ルールを適用すべきか

2004年5月号

ケネス・ロス/ヒューマン・ライツ・ウオッチ事務局長

誰をどのような基準で「敵の戦闘員」とみなすのか。どのような状況でなら戦闘員を殺害したり、あるいは、裁判を経ずに無期限で拘束したりできる戦時ルールが適用されるのか。アメリカの軍事路線を対テロ「戦争」と呼ぶことで、ブッシュ政権は、平時に許されることと、戦時であれば容赦されることを区別する境界線を取り払ってしまっている。その役割も活動も闇の中で、特定の攻撃と個人の関係がはっきりしないことが多いテロ組織を一体どのような基準で判断すればいいのか。ブッシュ政権は、アメリカをより安全にしようと試みるなか、すでにすべてのアメリカ人、そして世界中の人々の自由に制約を加えている。

イラクの衝撃

2004年5月号

CFRイラク問題アップデート

スンニ派・シーア派の蜂起、シーア派内部の権力抗争、外国人人質事件など、六月三十日に予定されているイラク人への主権移譲を控えて、四月以降、イラクでは各勢力の思惑が一気に表面化し、大きな混乱が生じている。主権移譲プロセスの主導権も、アメリカから国連の手に委ねられつつある。国連による主権移譲プロセスはどのようなものになるのか、なぜこの時期に騒乱が起きたのか、イラク国内集団間の合意は形成されるのか、武装蜂起は収拾へと向かうのか。邦訳文は米外交問題評議会のインタビュー、Q&A、タスクフォース・リポートなどを資料に、フォーリン・アフェアーズ・ジャパンで再構成し、Q&A形式でテーマに沿ってまとめた。参考文献については文末を参照。

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