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に関する論文

イランの国内政治力学と核問題
―― テヘランは何を警戒し、何を望んでいるのか

2006年7月号

レイ・タキー 米外交問題評議会(CFR)中東担当シニア・フェロー

イランの「戦争世代」強硬派の代表的人物であるアフマディネジャド大統領の世界観は、イスラム主義のイデオロギー、ナショナリズム、国際秩序への不信感で成り立っている。「戦争世代」は、アメリカとの紛争は避けられないとみており、アメリカを抑止するには、戦略兵器を保有するしかないとみている。一方、「インド・モデル」に注目する「現実主義者」たちは、国際社会とグローバル経済への統合を果たすには、核開発に対する制約も受け入れざるを得ないと考え、核拡散防止条約(NPT)の許す範囲内で開発を進めることを求めている。必要なのは、「イランとアメリカが心配する懸案のすべてを網羅するような交渉」において、両国が合意できる部分を増やしていくことではないか。核問題を、より広範なアメリカとイランの関係における病の症状の一つとみなし、根本の病を治していくような路線が必要だ。イランの核問題を解決できるとすれば、アメリカとイランの全般的関係が大きく改善した場合だけであることを認識する必要がある。邦訳文は、米外交問題評議会(CFR)のレイ・タキーが、米上院の「連邦金融管理・政府情報及び国際安全保障に関する小委員会」に、7月20日に提出したイラン問題に関する書簡証言。

CFR Meeting
国境を超えて
――グローバル化のなかの企業提携モデル

2006年7月号

スピーカー
カルロス・ゴーン 日産自動車社長兼最高経営責任者(CEO)、ルノー社長兼CEO
司会
デイビッド・M・ルービンスタイン カーライル・グループ共同創業者兼マネージング・ディレクター

「新しいパートナーから何も学ぶことはないと考えたら、企業提携、アライアンスは早晩失敗に終わる。自らのアイデンティティーが相手のパワーに食い潰されてしまうと感じたら、最善の努力をするパートナーはいない。どんなパートナーシップも、すべての関係者のアイデンティティーと自尊心を尊重しなければ成功しない。したがって、あらゆる要素をひとまとめにして溶かしてしまうのではなく、文化的な相違をフルに生かして心理的な距離を縮め、最終的には価値を生み出すリーダーシップが必要になる。……合併でも買収でもなく並存する二つの会社を持ち、フランス人には誇りを持ってルノーで働かせ、日本人には誇りを持って日産で働かせる。二つの会社は、互いに反発するのではなく、協力する。これを8年間やってきて、このアライアンスにはきわめて優れた部分があると確信するようになった。……相互依存が深まっていることを踏まえて互いのアイデンティティーと文化を尊重し、互いを高め合い、互いの弱点を改善する相乗効果を探り当てることによって、意義深い恒久的な成果を達成することができる」

核の優位を確立したアメリカ
――核抑止時代の終わりか

2006年6月号

ケイル・A・リーバー/ノートルダム大学政治学助教授
ダリル・G・プレス/ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーションでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

対ロシア路線を見直し始めたブッシュ政権

2006年6月

アンドリュー・クーチンス/カーネギー国際平和財団・ロシア・ユーラシア研究ディレクター

現在のクレムリンは、1970年代初頭にソビエトがアメリカとの核パリティーを達成して核の超大国となって以降、最も自信を深めている。「石油高騰がロシア経済に大きくプラスに作用しているのは間違いなく、これが米ロ関係のダイナミクスを変化させている」とみるアンドリュー・クーチンスは、ロシアの権威主義路線、対外干渉路線を前に、ブッシュ政権は対ロシア関係の見直しに入っており、最近「チェイニー副大統領が、ロシアは民主主義から後退しており、エネルギー供給を外交戦略の道具としていると批判したことは、ブッシュ政権の対ロシア路線見直しの一環とみてよい」と指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

ウゴ・チャベスとは何者だったか
(2006年6月発表)

2006年6月号

マイケル・シフター
米大陸対話フォーラム政策担当副会長

ラテンアメリカにおけるウゴ・チャベスの影響力は「ベネズエラ、そしてラテンアメリカのアジェンダ(課題)が何であるかをうまく特定して定義する能力」に根ざしている。社会格差、お粗末な状況にある教育や医療制度など、ラテンアメリカ地域の社会的病巣を彼がうまく、しかも正当な形で表現するからこそ、チャベスは人々への大きな訴求力を持っている。この地域の社会的病巣に関する彼の診断は正しいし、彼の意図は誠実なものかもしれない。しかし、彼が示している処方箋は、まやかしである。実際、チャベスは、石油の富を場当たり的に、あるいは政治的思惑でばらまくだけで、社会問題に長期的に対処するモデルをうまく考案できていないし、彼の政策は失望を禁じ得ないほどに小さな成果しか上げていない。必要なのは、この社会問題を建設的に解決していける、より適切な処方箋を示すことではないか。

イラクでスンニ派とシーア派の抗争が激化するなか、レバノンからイラク、イランへといたる地域を「シーア派三日月地帯」とみなす地政学的とらえ方が大きな注目を集めている。事実、ヨルダンのアブドラ国王は「スンニ派が支配する中東は、ベイルートからテヘランにいたるシーア派三日月地帯の出現によって分断されることになるかもしれない」と発言している。イラクにおけるシーア派の台頭と宗派間抗争がきっかけとなって、中東全域でシーア派対スンニ派の宗派間の緊張が高まるなか、宗派間バランスが今後の中東秩序を左右するようになると考える専門家は多い。9・11を引き起こしたイスラム現状維持派と過激派の内戦は、いまや「イラク、イラン、レバノン」そして「ヨルダン、サウジアラビア、エジプト」を中心とする宗派間抗争へと構図を変えつつある。

原油価格を政策で低下させよ  ――環境規制の一時緩和とエタノール混合ガソリンを

2006年5月号

フィリップ・K・バレジャー 国際経済研究所(IIE)シニア・フェロー

大気汚染緩和のために、例えば、カリフォルニアの環境規制当局は、環境を特に悪化させるような、発ガン性物質であるベンゼンや、硫黄化合物をガソリンから取り除くことを義務付けている。「問題は、環境基準をクリアできるようなガソリンを作り出せる精製所が少なく、これがガソリンの供給を逼迫させている原因の一つとなっていることだ」と国際経済研究所の石油問題の専門家、フィリップ・K・バレジャーは指摘する。今年もまたハリケーンで精油所に被害が出るようなら、またガソリンの供給が乱れる。だが「環境規制を一時的に緩和させれば、供給の逼迫を回避できる」とバレジャーは言う。また、「ガソリンに25%のエタノール含有を義務付けるだけで、一日当たり250万~300万バレルの原油消費を節約することができ、その結果、原油価格の低下にも繋がる」と指摘した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

ブッシュ政権が北朝鮮との平和条約交渉の可能性を示唆したことで、北朝鮮の核問題をめぐる外交的膠着状態が打開されるかに思われたが、専門家の多くは、そうした並行協議で貿易、人権、紙幣偽造などの厄介な問題が解決しやすくなるとは考えていない。むしろ、「アメリカに次期政権が誕生するまで待つのが北朝鮮の戦略のようだ」とみる専門家もいる。中国と韓国が北朝鮮に対する強硬路線をとることに難色を示すなか、平壌は交渉に参加するか離脱するかを勝手に決め、離脱した場合には、交渉復帰の条件を示すというやり方を繰り返している。「ゼロサム的な世界観しか持っていない北朝鮮から色よい返事を引き出すには、われわれの目的のすべてを断念し、彼らの目的のすべてを受け入れなければならない」と北朝鮮の頑迷さに、半ばさじを投げる専門家もいる。

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