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に関する論文

CFRインタビュー
イラクの今後を左右する
スンニ派とシーア派の関係

2006年2月号

シブリー・テルハミ メリーランド大学教授

「少数派に歩み寄ってこそ、多数派としての価値を生かせるようになる。イラクのシーア派もイラク統一を望むのなら、未来に思いをめぐらして今を考え、少数派のスンニ派に手を差し伸べるべきだろう」。アラブ政治の専門家シブリー・テルハミはこう指摘しつつも、イラクの今後は楽観を許さないとみる。「現時点では、スンニ派の指導者のなかに、シーア派との妥協を受け入れるという英断を下せるような人物はみあたらないし、シーア派の指導者のなかにも、スンニ派に妥協を提示できるような人物はおらず、依然として、イラクの政治は民族や宗派で規定されている」と彼は指摘する。イラク中部にあるシーア派の聖地「アスカリ聖廟」の爆破事件の余波のなか、2月下旬にはシーア派の武装手段がスンニ派モスクを襲撃する事件が頻発し、いまやスンニ派とシーア派の緊張は一層高まっている。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

「政府の内外から専門家を集めて改革を進め、新たな作戦地域にすぐれた広報チームを迅速に派遣し、新聞、ラジオ、テレビ、インターネットすべてを使った広報を展開できるようにしなければならない。戦略的コミュニケーションラインの確立が遅れれば、その空白を埋めるのは敵か、何が起きているかを正確に伝えることなどあり得ない情報提供者たちとなる。……24時間体制のプレスセンターをつくり、インターネットなど新しいコミュニケーション手段をもっと重視するべきだ。世界中の多くの人々にとって新聞はもはや最も重要な情報源ではない」(D・ラムズフェルド)

アメリカは対テロ戦争の観点から東南アジア諸国との軍事関係の強化を望み、一方、中国は東南アジアでの鉄工業、天然ガス資源、森林伐採事業への直接投資を拡大させ、FTA構想を積極的に展開している。日本もベトナム北部など、東南アジアへの投資を積極化させている。しかし、中国の経済成長が、東南アジアの経済成長の原動力となっている部分があり、「あと3~5年もすれば、この地域における日本やアメリカの経済、貿易上の影響力を脅かすようになるかもしれない」とみる専門家もいる。軍事関係をテコに関係強化をめざすアメリカと、経済攻勢を強化する中国と日本。自立を高めたい東南アジア。今後の流れはどこへ向かうのか。

ロシアの若者の歴史認識を問う
――高まるスターリンへの評価

2006年2月号

サラ・E・マンデルソン/戦略国際問題研究所(CSIS)シニア・フェロー
セオドア・P・ガーバー/ウィスコンシン大学マディソン校社会学教授

ロシアの若者の多くは、スターリンに対してあいまいで、一貫性に欠ける、不安定な見方をしている。だが、こうしたあいまいな態度に危険が潜んでおり、実際、若者のスターリンへの評価は次第にプラスへと転じつつある。これらが問題なのは、歴史的な記憶、あるいは歴史的な記憶の喪失が、具体的な政治的流れをつくり出しかねないからだ。国や社会が過去をどうとらえるかで、歴史をいかに今に位置づけるかが決まる。若いロシア人がスターリン時代に何が起きたかについて無知だったり、ソビエト・ロシア全域での恐怖政治を制度化した凶暴な独裁者を前向きに評価したりしているようでは、ロシアが近代的な民主社会に変貌していくのは難しい。

人類は殺し合うサルか
――霊長類の平和と人類の平和

2006年2・3月号

ロバート・M・サポルスキー/スタンフォード大学神経学・生物科学教授

人類が他の霊長類と比べ、特段ユニークなわけではない。人類も、緊密で豊かな社会生活を送る霊長類の一種にすぎない。霊長類には平和的な種も暴力的な種もおり、その行動は、社会構造とエコロジカルな環境に左右されるが、人類は、穏やかな霊長類よりも、暴力的な霊長類との共通点のほうが多い。彼らの本質はわれわれの本質なのだ。だが、より重要なポイントは、本質的に暴力的な性向をもっていても、平和を実現できる霊長類もいるということだ。考えるべきは、どのような状況なら霊長類は平和を実現できるのか、そして人類がそのような平和を実現できるかどうかだ。
協調する小集団内で暴力ざたが起きる可能性は低いが、一方でこの集団は対外的に大きな問題を引き起こす。実際、価値を共有する小規模の均質的な集団の存在は、社会全体の調和という点からみれば悪夢だし、アウトサイダーにとっても危険である。だが、アウトサイダーを他者として位置づけずに、小集団内の協調を維持する方法はある。一つの方法は交易だ。自発的な経済交流は利益を生み出すだけでなく、社会的紛争の発生を低下させる。集団間の境界線があいまいで、メンバーが入れ替わる分裂・融和型社会構造も、アウトサイダーを他者として位置づけずに、小集団の協調を維持するためのモデルになる。

アフリカでの影響力を模索する中国

2006年2月号

共同議長
アンソニー・レーク 元米国家安全保障問題担当大統領補佐官
クリスティーン・トッド・ホイットマン 元米環境保護庁長官
プロジェクト・ディレクター
プリンストン・N・ライマン 米外交問題評議会(CFR) シニア・フェロー(アフリカ担当)元駐南アフリカ、駐ナイジェリア米大使
J・スティーブン・モリソン 米戦略国際問題研究所(CSIS)アフリカ担当ディレクター

中国は、スーダンやジンバブエなど、目に余る人権弾圧を行う「ならず者国家」に保護の手を差し伸べ、資源確保のために無条件で融資を提供してアフリカ諸国から改革の動機を奪っている。収益だけでなく、中国の国益の確保を目指す中国企業は採算度外視の入札を行い、他国の企業を締め出している。中国は、相手国にキャッシュ、技術だけでなく、安保理常任理事国の立場を利用して国際的圧力からの盾さえ提供している。中国が天然資源を調達しようとするのは正当な試みだとはいえ、早急に策を講じる必要がある。

アンソニー・レーク、クリスティーン・トッド・ホイットマンを共同議長に迎えて組織された、アフリカ問題に関する米外交問題評議会(CFR)タスクフォースは、「人道支援を超えて――アフリカへの戦略的アプローチを考える」(More than Humanitarianism : A Strategic U.S. Approach toward Africa)というタイトルのリポートを2005年12月に発表した。リポートの内容は、アフリカにおける安全とテロ、紛争解決と平和維持活動、HIV・エイズ、中国の影響力増大、民主主義と人権、投資と多岐にわたる。邦訳文は同リポートの一章「アフリカでの影響力を模索する中国」からの抜粋。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

ヨーロッパの文化的ジレンマ
―― 欧州と大中東の関係をどう規定するのか

2006年2月号

クリス・パッテン 前対外関係担当欧州委員会委員
ロックウェル・シャナベル 前駐欧州連合アメリカ大使
リチャード・バート 元駐独アメリカ大使

「イスラム系移民たちの伝統、宗教、文化を尊重しつつも、われわれがキリスト教文明を軸にヨーロッパを再定義しようと試みていないことが問題だ。われわれは寛容を軸にわれわれの文化を定義しており、他の文明への理解と尊重を示すには、(われわれの価値を守るために)一部で不寛容でなければならないということをヨーロッパ人は受け入れられずにいる」。(C・パッテン)

「ヨーロッパのイスラム系移民たちは、厳しい経済的現実のなかで雇用に就けないからこそ、経済的に同化できず、社会から阻害されている。ヨーロッパ経済が成長し、雇用がつくり出されるようになれば、ヨーロッパのイスラム教徒の経済的同化、社会的同化が進み、問題は緩和されていく」。(R・シャナベル)

CFRインタビュー
中国は北朝鮮とイランをどうみているか
―― 北京の核不拡散路線と米中関係

2006年1月号

アダム・シーガル
米外交問題評議会シニア・フェロー

現在の中国が北朝鮮の非核化を望んでいるのは明らかだが、一方で中国には、北朝鮮崩壊というシナリオを回避したいという思惑もある。その理由についてアダム・シーガル(CFRシニア・フェロー)は次のように述べる。「中国が恐れているのは、(北朝鮮が崩壊すれば)大量の難民が中朝国境に押し寄せ、すでに朝鮮民族が数多く暮らす国境地域をますます不安定化させてしまうことだ。北朝鮮の崩壊とともに、(すでに38度線付近に駐留している)在韓米軍が朝鮮半島を北上してきたら、どうなるかという不安もある」。一方イランの核問題については、「中国にとって、イランよりもアメリカのほうがはるかに重要な国であり」、「イランに対する経済制裁には反対しつつもその旗振り役にはロシアになってほしいと北京は考えていると思う」とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRリポート
北朝鮮の核保有を受け入れるのか?
―― そして、世界は核拡散へと突き進む

2006年1月号

スピーカー
スティーブン・ボスワース 元駐韓米大使 / ゴードン・チャン ジャーナリスト / ドナルド・グレッグ コリア・ソサエティー理事長
司会
エバンス・レベール 米外交問題評議会シニア・フェロー

北朝鮮の核開発はこの国が抱える問題の象徴に過ぎない。問題の本質は、北朝鮮が国家として破綻途上にあることだ。したがって、北朝鮮問題の究極の解決策は韓国との国家統合しかない。(S・ボスウォース)

中国をホストにした交渉が悪いとは言わないが、話し合うことは一方でコストを伴う。……中国は交渉プロセスを続けることには関心があっても、解決策は持っていない。これまでのような交渉なら、話し合いを続ければ続けるほど、状況は悪化する。(G・チャン)

北朝鮮をどうしたいのかについてアメリカが統一的な見解を持っているのかどうか、私にはわからない。クリストファー・ヒルが何を望んでいるかと、ディック・チェイニーが何を望んでいるかは随分違うと思う。(D・グレッグ)

世界のエネルギー需要がたかまるなか、アメリカ、欧州連合(EU)、日本などの石油市場の主要なプレイヤーたちは、長期的なエネルギー資源調達をめぐる新たなライバルの登場という事態に直面している。それは中国に他ならない。急速な成長を続ける中国は、経済成長を持続させるのに必要な資源を世界各地から調達することを外交政策の目的に据え、各国の資源を自国への供給のために押さえようとしている。中東の不安定な情勢が長期化するなか、中国は、これまで世界がリスク要因の多さゆえに敬遠してきたアフリカの資源に目を向けている。中国のエネルギー調達戦略はアフリカをどのように変えているのか。

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