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に関する論文

核拡散後の世界

2006年10月号

スティーブン・ピーター・ローゼン/ハーバード大学・ジョン・オリン戦略研究所所長

イランが弾道ミサイルで中東全域を射程に収め、アメリカやヨーロッパに対しても(船舶その他の方法で)核攻撃を行う力を得る。サウジアラビアとトルコも、恐怖、あるいはライバル意識に突き動かされて、核武装する。アジアでも、中国、インド、北朝鮮、パキスタン、ロシアという核保有国に加えて、日本と台湾がアジアの核保有国の仲間入りをする可能性もある。仮に現実がこのように推移するとしたら、この新しい世界における戦略的な流れはどのようなものになるだろうか。核大国の一方で、数多くの核小国が共存するようになれば、冷戦期の抑止理論、軍備管理論は陳腐化する。

NATOをグローバルな軍事同盟に変貌させよ
――豪州、日本、ニュージーランドのNATO加盟を

2006年10月号

アイボ・ダールダー ブルッキングス研究所シニア・フェロー
ジェームズ・ゴールドゲイアー ジョージ・ワシントン大学政治学教授

グローバルな課題や脅威に対処していくには、オーストラリア、日本、ニュージーランドなどの民主国家をNATOに参加させることで、NATOを大西洋同盟の枠を超えたグローバルな存在とする必要がある。冷戦が終結し、世界がグローバルな課題に直面している以上、NATOのメンバーシップを、大西洋同盟という地理的制約にとらわれず、民主主義の政治経済原則という価値を共有する国に広げていくべきだ。考えるべきは、どのようにすれば、世界有数の国際的軍事機構を、大西洋共同体の利益だけではなく、世界の安定を求める民主国家で構成されるグローバルな共同体の利益を促進できるような存在へと変え、時代の要請に対応できるように変化させられるかだ。

指導者に求められるリーダーシップと戦略
――政策ビジョンと文脈を読む知性

2006年10月号

ジョセフ・S・ナイ
ハーバード大学政治学教授

指導者には、未来を正確に描き出し、その意味を人々に知らせる政策ビジョンが必要になるし、そのような、すぐれたビジョンを示すには、世界情勢を的確に分析し、現実主義とリスク、理念と能力間のバランスを適切に判断することも求められる。そして、「感情的な知性」も「コミュニケーションスキル」も必要だ。これは人々を魅了する指導者の知識と原則、そして表現力と言い換えることができる。さらには、政策を立案し、遂行するために政府を管理する能力も必要になる。とりわけ重要なのが、「文脈を読む知性」だ。これは、変化する環境を理解し、流れに即して目的を実現するための資源投入量を判断する能力のことだ。かつてビスマルクはこれを、指導者が歴史を切り開き、部下の掌握を試みる際に必要になる「神の足音に耳を傾ける責務」と呼んだ。

アメリカは神の国か?
―― キリスト教福音派台頭の政治・
外交的意味合い

2006年10月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー

アメリカのプロテスタンティズム内の保守派の信徒が増え、20世紀半ば当時は、アメリカの主流派だったリベラル派プロテスタントの信徒が減少している。この宗教勢力地図の変化は、すでにアメリカの外交政策を大きく変化させている。第二次世界大戦、そして冷戦期におけるアメリカの政治を支配していたのは、教義よりも道徳律を重視するリベラルなプロテスタンティズムの思想だった。だが、いまやキリスト教リベラル派は、かつての影響力を失い、リベラル派よりも教義を重視し、例えば、イスラエルを擁護することで、自分たちが神によって支えられると感じ、そうすることで世界を敵に回してもかまわないと考える福音派が台頭している。福音派の台頭で、アメリカの政治・外交路線はどのように変わるのか。それは政策の幅を広げることになるのか、それとも……。

米印関係は反中同盟の布石なのか
――台頭するインドとバランス・オブ・パワー

2006年9月号

C・ラジャ・モハン/インド国家安全保障諮問委員会メンバー

インドは、米中間の中立を維持しようとするだろうか、それとも現在のインドの大戦略に即してアメリカの側につくだろうか。米印原子力合意は、この設問への最終的な答えを左右しようとするアメリカの試みだった。インドはアジアやインド洋地域で、中国の2番手に甘んじることだけは避けたいと考えているし、むしろ遠く離れた超大国との協調に安定的な利益を見いだしている。ワシントンとの安全保障関係の強化を望むのは、こうした構造的な理由がある。だが、利益を共有しているからといって、それだけで同盟関係が成立するわけではない。両国間のパワーに格差があり、政治的協調の歴史がなく、より踏み込んだ米印の協調に抵抗する官僚が両国に存在する以上、米印の戦略的な協調関係の進化のペースと、規模の広がりは段階的なものになる。

イラク・ラウンドテーブル
――全面的内戦に陥るのを回避するには

2006年9月号

ラリー・ダイアモンド フーバー研究所シニア・フェロー
ジェームズ・ドビンズ ランド研究所国際安全保障・防衛政策研究センター所長
チャイム・カーフマン リーハイ大学国際関係学助教授
レスリー・H・ゲルブ 米外交問題評議会(CFR)名誉会長

中央集権化しようと無駄な努力を重ねてさらにイラクの分断状況を深刻化させるのではなく、イラクの分権化を進めるべきだ。クルド人地域、スンニ派アラブ人地域、シーア派アラブ人地域をつくり、それぞれの地域が立法や行政の大部分に責任を持つようにするのだ。外交、国境警備、石油およびガスの生産と歳入の管理分配など、中央政府の権限を全地域の利益に明らかにかかわる分野に限定・制限する。こうすれば、クルド人は自治権、スンニ派はある程度の自治権と歳入源、そしてシーア派は自らの地域を統治する歴史的自由と将来の富を手に入れることができる。(L・ゲルブ)

インドはアメリカの戦略的パートナーだ
――米印核合意の本当の目的

2006年8月号

アシュトン・B・カーター/ハーバード大学ケネディ・スクール教授(科学、国際関係)

ワシントンが核の平和利用をめぐってインドに譲歩したのは、別の領域でもっと多くのものを勝ち取るためだった。イランの脅威、政情不安定なパキスタン、そしてとかく行動が読めない中国などの国々が将来引き起こすであろう課題に対処していくうえで、戦略的な要地に位置し、めざましい経済成長を遂げる民主国家インドの支援と協力を確保することをワシントンは重視した。核保有国としての地位を認めることと引き換えに、インドを戦略的パートナーとして取り込むという取引は、アメリカにとって妥当な決断だった。この合意が成功するかどうかは、ひとえにインドの将来の行動にかかっている。

北東アジア戦略環境を検証する

2006年8月号

FAJブリーフィング

日米を中心に各国が対北朝鮮金融制裁を強化するなか、今度は北朝鮮が核実験を準備しているという情報も出てきている。だが、今後を考える上で、7月のミサイル実験を境に、北朝鮮をとりまく戦略環境がすでに変化していることにも目を向ける必要がある。日本は地上配備型ミサイル防衛システムの配備にますます積極的になり、一方、北朝鮮の不安定化を恐れ、これまで慎重な姿勢をとってきた韓国と中国の立場も明らかに変化してきている。韓国はこれまでの北朝鮮関与政策を見直し始め、中国も北朝鮮関係口座の凍結へと踏み切った。ウィリアム・ベリー元国防長官は、「北朝鮮が核実験に踏み切れば、①北朝鮮は核兵器、核関連物質の輸出を試み、②アジア太平洋全域で核の軍拡レースが起き、③イランの核開発を事実上黙認せざるを得なくなり、その結果、イスラエルのイランに対する先制攻撃の可能性を含むまったく新しい問題がつくりだされる」と指摘している。

イスラエルの新戦略とは何か
――占領地撤退戦略の真意

2006年8月

バリー・ルービン/学際研究所・国際関係グローバルリサーチセンター所長

占領地からの撤退に反対し、占領地はいずれ取引材料になるという議論に対して、シャロンは「取引相手がいないのに、取引材料を持っている価値がどこにあるのか」と反論した。占領地からの撤退と防護壁に即した防衛ラインの強化というイスラエルの新路線について、シャロンの後継を担うオルメルトは次のように述べている。分離壁の外側にある入植地は最終的には解体され、これら入植地の住民は「イスラエルの支配下にある入植地ブロックにまとめられる。……それ以外の占領地にイスラエルのプレゼンスはなく、これらの地域が将来のパレスチナ国家の領土となる」。イスラエルは、1967年以前の境界線に極めて近い境界線を引こうとしている。

グローバルに統合された企業

2006年8月号

サミュエル・J・パルミサーノ IBM取締役会長

どこまでグローバル化できるかについての企業の認識が変化した結果、企業の関心は、どのような製品をつくるかよりも、いかにそれを生産するか、どのようなサービスを提供するかよりも、どのようにサービスを提供するかに移っていった。いまやアウトソーシングが一般的になり、企業は自らを、調達、生産、研究、販売、流通などの特定部門が並列するネットワークとみなしている。ここにおける真の技術革新とは、新しい製品を開発し、生産するための創造力だけに左右されるわけではない。いかにサービスを提供し、ビジネスプロセスを統合するか、いかに組織やシステムを管理し、知識を移転するかでその多くが左右されることになる。

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