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に関する論文

石油戦略備蓄の効果を最大化するには
――備蓄量ではなく、備蓄の管理体制に目を向けよ

2008年7・8月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー
サラ・エスクレイス・ウィンクラー 元米外交問題評議会・国家安全保障担当研究員

「石油の供給ショックに備えた石油の備蓄を準備しておけば、世界の石油供給の混乱に対する内外のショックへのバッファーにできる」。これが戦略備蓄の構築に向けたロジックだった。たしかに、カトリーナやリタなどのハリケーン災害など、短期的な危機の場合には、戦略備蓄の放出をめぐる国際協調がうまくいくこともあるが、石油供給がひどく混乱し、何としてもまず自国を救いたいと各国が考えるような切実な危機の際には、うまく協調できないことが多い。より優れたシステムをつくるには、備蓄の量ではなく、むしろ、この備蓄をどれだけうまく管理できるか、つまり、いかにタイミングよく備蓄を積み増し、あるいは放出するかを判断する、政府から独立した組織を新たに持つ必要がある。そして、資金の流動性を独自の判断で調整する中央銀行こそ、石油の戦略備蓄を管理する組織の格好のモデルとみなせる。

アメリカの国益を再考する
――新しい世界とアメリカ特有のリアリズム

2008年6月号

コンドリーザ・ライス  米国務長官

アジア・太平洋地域でも民主化が進展するとともに、同盟関係のネットワークが拡大し、われわれが共有する目的が促進されている。多くの人が中国の台頭がアジアの将来を左右すると考えているが、同様に、アジアでしだいに広がりをみせている民主国家コミュニティーの台頭も将来を左右する重要な要因だし、ともすれば、後者のほうが中国の台頭以上に、今後を左右するファクターになるかもしれない。
 われわれはオーストラリア、東南アジアの主要国、日本との強固で民主的な同盟関係を築き上げている。日本は、いまや普通の国家としても台頭しつつある経済大国で、アジア、そして広くアジアを超えてわれわれと共有する価値を守り、推進していく力を持っている。
 ……アジア・太平洋でのこうした展開は、われわれの価値と戦略利益にとって劇的なブレークスルーである。

21世紀の資源争奪戦

2008年6月号

スピーカー
ポール・J・カーン
コーエングループ・シニアカウンセラー
レオン・S・ファース
ジョージ・ワシントン大学教授
デビッド・G・ビクター
スタンフォード大学教授

司会
ポール・スタレス
米外交問題評議会紛争予防センター所長

「イリノイ大学の研究によれば、現在12億人が飲料水不足に苦しみ、26億人が不衛生な環境で生活しており、しかも、状況はますます悪化している。……地球が水で覆われているにもかかわらず、地球の飲料水資源は不足している」(P・カーン)

「原材料や資源確保への不安が日本を戦争の道へと駆り立てた。現在においても、重要な資源へのアクセスをめぐる不安が、戦争を誘発する危険はある」(L・ファース)

「資源争奪をめぐる紛争のリスクを心配するのであれば、人間の行動を規定する枠組みである統治制度を是正する必要がある。ダルフール危機を資源の側面からは解決できない。暴力を抑えるようにこの国の統治体制を見直すことが不可欠だ」(D・ビクター)

石油の富と呪縛
―― なぜ資源保有国は貧困から抜け出せないのか

2008年5月号

マイケル・L・ロス カリフォルニア大学政治学部准教授

途上世界の資源保有国のほとんどは貧しく、非民主的だし、まともな統治体制を持っていない。そこに石油資源からの富が流れ込めば、往々にして紛争が誘発されるか、すでに起きている紛争を長期化させる。資源がもたらす富が建設的投資にまわされることはなく、結果的に貧困が続く。史上例のない原油価格の高騰は、棚ぼたの経済利益を資源保有国にもたらし、これが逆に紛争を助長してしまう危険がある。必要なのは、こうした資源国に輸出の対価として政治腐敗と紛争を助長するキャッシュを与えるのではなく、インフラ整備や社会サービスなどを提供し、成長の基盤を整えることではないか。

アメリカの相対的衰退と無極秩序の到来
――アメリカ後の時代を考える

2008年5月号

リチャード・N・ハース 米外交問題評議会会長

現在の国際システムの基本的特徴は、国がパワーを独占する時代が終わり、特定の領域における優位を失いつつあることだ。国家は、上からは地域機構、グローバル機構のルールによって縛られ、下からは武装集団の挑戦を受け、さらには、非政府組織(NGO)や企業の活動によって脇を脅かされている。こうしてアメリカの一極支配体制は終わり、無極秩序の時代に世界は足を踏み入れつつある。そこでは、相手が同盟国なのか、敵なのかを見分けるのも難しくなる。特定の問題については協力しても、他の問題については反発し合う。協調で無極化という現象を覆せるわけではないが、それでも、是々非々の協調は状況を管理する助けになるし、国際システムがこれ以上悪化したり、解体したりしていくリスクを抑え込むことができる。

人道的悲劇にどう対処する
――人間の安全保障と「保護する責任」

2008年5月号

スティーブン・グローブズ ヘリテージ財団研究員
スチュワート・M・パトリック グローバル開発センター研究員

「大量虐殺、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する犯罪から」他国の人々を「保護する責任」を引き受ければ、「アメリカの主権、国家安全保障や外交政策をめぐる意思決定権の一部を、国際社会の気まぐれに委ねることになる」。「保護する責任」は、説明責任を負わない市民社会のアクターが盛り上げた正統性のない規範であり、この規範は、アメリカの行動の自由を制約し、不必要にアメリを紛争に巻き込んでしまう。(S・グローブズ)
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「もちろん、問題が起きている地域のすべてにわれわれが介入するわけにはいかない。だが、これをどこにも介入しないことのいいわけとしてはならない。大量虐殺や人道に対する犯罪が起きないように努め、それでも悲劇的な事件が起きた場合には、介入してそうした行動をやめさせることは、アメリカの道徳的利益に合致する」(S・M・パトリック)

コペンハーゲン・コンセンサス
――デンマークでアダム・スミスを読む

2008年4月号

ロバート・カットナー
アメリカン・プロスペクト誌共同編集長

現在のデンマークモデルの中核は、労働市場の柔軟性(フレキシビリティー)と雇用保障(ジョブ・セキュリティー)のバランスをうまく組み合わせた「フレキシキュリティー」という概念、つまり、労働市場の柔軟性と雇用保障を両立させていることにある。労使協調路線がとられ、極端に高い課税率も結局は、社会サービスとして市民に還元されている。世界でもっとも平等で社会格差が小さく、それでもきわめてリバタリアンな思想を持つこの国は、どのようにして平等と効率、社会的正義と自由貿易を両立させているのか。グローバル化がつくりだす問題に対処するために、資本主義国がデンマークモデルを取り入れる余地はあるのか。

独裁体制と経済成長に因果関係はあるのか
――ロシア権威主義経済モデルの虚構

2008年3月号

マイケル・マクフォール   スタンフォード大学民主主義・開発・法治センター所長
キャサリン・ストーナー=ウェイス  スタンフォード大学民主主義・開発・法治センター副所長

1990年代のロシアでは民主化が進められたものの経済が低迷し、逆にこの10年は独裁体制が強化されたのに経済は大きく改善している。 しかし、現在のロシア政府のパフォーマンスはきわめて低く、治安、公衆衛生、腐敗、財産権の保障という面でみれば、現在のロシアの暮らし向きは、10年前よりも相対的に悪くなっている。ロシアの国際的な経済競争力、進出先あるいは取引先としての経済環境も悪化し、情報公開は進まず、政治的腐敗も深刻になっている。原油、天然ガスなど、原材料価格の高騰がロシア経済の大きな追い風となっているのは事実だが、それだけの話だ。ロシアの独裁体制と経済成長の間に何らかの因果関係があるとすれば、独裁制が成長に悪影響を及ぼしているということだ。

北極の海氷後退と資源争奪競争
――地球温暖化の経済・安全保障的意味合い

2008年3月号

スコット・G・ボルガーソン 外交問題評議会国際関係フェロー

地球温暖化が進むなか、北極の海氷の後退が速いペースで進んでおり、いまや北極海の航行ルートが開けるかどうかではなく、いつそのルートが定期的な海洋運輸のためのシーレーンとして確立されるか、石油や天然ガスなどの魅力的な北極の天然資源の開発がどの段階で正式に可能になるかが注目されている。これほど権利関係が曖昧で、劇的に変化し、限りなき経済的ポテンシャルを秘めている海域はかつて存在しなかった。手つかずの資源と大きな経済的ポテンシャルを持つ北極地方が、大西洋と太平洋を結び、これまでよりも距離の短い航路で結ばれるとなれば、今後、この地域が国際政治の大きな争点とされることは間違いない。

「うまく経営されている企業が利害を有し、その本質を理解しているアジェンダに莫大な資源、専門知識、技能、マネジメントのスキルを投入すれば、他の組織や慈善団体よりもはるかに大きな社会的利益を導き出すことができる」。気候変動や水不足、感染症その他の地球の将来に大きな影響を与える問題に対処するうえで企業が応分の役割を果たすこと。これがグローバル・コーポレート・シチズンシップと呼ばれる概念の本質だ。たしかにグローバルアジェンダに対処するおもな責任は今も政府や国際機関にある。だが企業は、政府や市民社会グループと適切なバランスのパートナーシップを組んで、問題解決に大いに貢献できるはずだ。…グローバル・コーポレート・シチズンシップは社会における企業の前向きな役割を強化し、長期的な利益を高める企業の社会的関与の一形態であり、いずれ、企業をおもなステークホルダーに組み込んだ、新しいグローバル統治のモデルを示すこともできるようになる可能性を秘めている。

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