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に関する論文

働き口とよりよい生活を求めて、数多くのアフリカの人々が、危険を顧みずに、ヨーロッパを目指して地中海の旅へと繰り出している。アフリカからの移民・難民が殺到しているヨーロッパ諸国は、経済移民および政治・経済難民の受け入れ制度を改革し、域内で調和させる必要性に直面しつつあり、欧州連合(EU)も、これを経済、人道上の緊急課題と捉えだしている。だが、ヨーロッパ各国がこの問題をめぐって、立場を共有しているわけではない。殺到するアフリカからの難民に特に悩まされているのが、地中海沿岸に位置する南ヨーロッパ諸国だ。一方、移民、難民の増大に悩まされる一方で、ヨーロッパ社会の高齢化が進み、出生率が低下するなか、EUは、近い将来に労働力不足に陥ると考えられている。つまり、そこには、アイデンティティーを脅かすアウトサイダーとしての移民、貴重な労働力としての移民という認識上のジレンマがあるだけでなく、その受け入れをめぐって加盟国間に立場の違いがある。

穏健派ムスリム同胞団との対話を試みよ

2007年6月号

ロバート・S・レイケン ニクソン・センター、 移民・国家安全保障プログラムディレクター
スティーブン・ブルック ニクソン・センター、リサーチアソシエート

ザワヒリのようなジハード戦士たちは、ムスリム同胞団のことを、「グローバルなジハード(世界聖戦)を拒絶して、民主主義を擁護する」団体とみなし、毛嫌いしている。そうだとすれば、同胞団はまさにアメリカがイスラム世界で必要としている味方、つまりイスラム「穏健派」ではないのか。同胞団を理解する最初のステップは二つ。まずは同胞団を、急進的イスラム主義から離して考えること。次に、異なる国々で活動する同胞団系列のグループの間には、大きな違いが存在することを知ることだ。これらの多様性は、ワシントンが「同胞団」に対して是々非々のアプローチをとる必要があることを示唆している。

時は1940年代のヨーロッパ。目の前には困窮したユダヤ人がいる。上司からはビザに「許可」印を押さなくて済むように手を尽くせと命令されている。ユダヤ人を本国政府は受け入れたくないと考えている。「許可」を出し過ぎれば、あなたの今後のキャリアに影響が出る。だが、本国からの指令に忠実に従えば、多くのユダヤ人を死に追いやることになる……。多くの外交官は保身に走ったが、勇気ある人々もいた。ブラジル、中国、オランダ、イタリア、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スイス、トルコ、バチカン、ユーゴスラビアの外交官だけでなく、日本やドイツの外交官のなかにも、窮状にある人々を救うために、自分のキャリア、名声、ときには生命さえも危険にさらした人々がいた。

石油シーレーンの安全確保と海軍力

2007年5月号

デニス・C・ブレア 元米太平洋軍司令官
ケネス・リーバーサル ミシガン大学政治学教授

ますます多くの国が中東からの輸入石油への依存を高めるなか、グローバルな石油シーレーンの安全確保が注目されるようになり、中国やインドのように、石油タンカーを守るために外洋展開型海軍の整備を検討している国もある。だが一般に考えられているのとは逆に、テロ集団の行動や紛争によって、石油シーレーンの航行が脅かされるリスクはかなり小さくなってきている。タンカーが大型化し頑丈につくられるようになったために、機雷、潜水艦、そしてミサイル攻撃に対しても打たれ強くなっているし、仮にテロリストが石油タンカーをシンガポール海峡に沈めることに成功しても、海峡を封鎖できるわけではない。唯一、海洋の交通路を完全に遮断する力を持つ米海軍も、公海上の航行の安全を守ることを心がけており、国際輸送に干渉するような行動をとることはあり得ない。

この数年来、アメリカとロシアは、事あるごとに衝突してきた。最近も、チェコとポーランドにミサイル防衛網を配備しようとするワシントンの計画に、ロシアは激しく反発した。プーチン大統領は4月末の年次教書演説でも、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を批判した上で、欧州通常戦力(CFE)条約の履行義務を停止すると表明し、イワノフ第一副首相も5月3日に、ロシア軍は今後、「部隊の移動をNATOに通報しない」と発言した。だが、CFE条約の凍結を含むプーチンの攻撃的路線は、全般的な米ロ関係の悪化という問題が引き起こした現象にすぎず、CFE条約そのものが問題ではないとする見方もある。「米ロ関係が緊張しているのは、原油価格の高騰と経済成長をバックに、ロシアが主要な地政学的プレイヤーとしての地位を取り戻しつつあること、プーチン政権が、ロシアが弱体化していた時期に弱者の立場から結んだ条約や契約を改訂するか、反故にしていく戦略をとっていることに関係がある」とみる専門家は多い。

イラクの内戦を終わらせるには
 ――マリキ政権への支持をやめよ

2007年5月号

ジェームズ・D・フィーロン スタンフォード大学教授

いまやシーア派主導のイラク政府はスンニ派との内戦をめぐって公然とシーア派寄りの路線をとりだしている。こうした状況下、ブッシュ政権が現イラク政府の成功に肩入れすればするほど、シーア派に味方することになり、これは道義的にも疑わしい路線であり、アメリカの利益にもならなければ、中東地域の長期的な安定と平和にも資するところがない。だが、イラク政府への絶対的なコミットメントを緩和させて、米軍を主要な戦域から撤退させれば、イラク内の各勢力も権力分有合意に前向きになるだろう。長期的にはスンニ派、シーア派、クルド人の利益をうまく代弁する政府を樹立するための妥結に向けて、アメリカは仲介役、バランサーの役割を果たせるようになる。「いかなる集団も、権力と資源を他の勢力と共有しないことには勝利を手にすることはない」という認識を定着させるために、アメリカは、外交、経済、そして必要なら軍事的手段を駆使して、イラク内の各勢力間のバランサー役を果たすべきだ。

エタノール燃料は本当に人と地球に優しいのか

2007年5月号

C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学・法学教授
ベンジャミン・セナウアー ミネソタ大学応用経済学教授

原油価格が高いレベルで推移し、一方で環境問題への関心が高まるなか、世界的に代替燃料としてのエタノールが注目を集めている。しかし、トウモロコシや大豆を原料とするエタノール生産は世界の穀物供給を逼迫させ、価格を高騰させている。メキシコのトルティーヤ粉だけでなく、サハラ砂漠以南、その他のアフリカ、アジア、ラテンアメリカの貧困地域の主食であるキャッサバの価格も2010年までに33%、2020年までに135%上昇すると考えられている。バイオ燃料の需要増によって主要産品の実勢価格が1%上昇するごとに、世界で食糧難に苦しむ人々の数は1600万人ずつ増えていく。しかも、栽培・生産のために多くのエネルギーを必要とするトウモロコシや大豆は、環境を汚染する作物だ。エタノールを真にグリーンで持続可能な代替燃料とするには、木や草のセルロースからの生産の実用化を期待するしかない。

ロシアの帝国的野心を封じ込めよ

2007年5月号

ユリア・ティモシェンコ
ウクライナ元首相

プーチン大統領は、これまで一貫して「偉大なるロシアを復活させる」という目的を掲げ、国内的には権威主義体制を強化し、対外的にもエネルギー資源と軍事力を武器に近隣諸国を自国の勢力圏に取り込むことで超大国の地位を取り戻すことを狙っている。原油価格の高騰を追い風に再生したロシアは、いまやエネルギー資源供給を武器にヨーロッパさえも脅かしつつある。考えるべきは、ロシアに政治・経済改革を求める欧米のこれまでの路線では、ロシアの伝統的な膨張主義、そして近隣諸国を犠牲にして超大国の地位を取り戻そうとする戦略には太刀打ちできないということだ。パワーにはパワーで対抗するという外交の鉄則を思い出し、欧米、とくにヨーロッパは、ロシアの資源外交による揺さぶりにも動じない結束を持つ必要がある。

CFRインタビュー
なぜパキスタンは タリバーン対策に
乗り気ではないか

2007年4月号

ダニエル・マーキー 米外交問題評議会シニア・フェロー (インド、パキスタン、南アジア担当)

アフガニスタンとの国境地帯にあるパキスタンの部族地域は、いまやタリバーンやアルカイダの聖域とされている。イスラム過激派は、この部族地域を拠点にアフガニスタンへの攻撃を繰り返しており、アフガニスタンだけでなく、アメリカも部族地域をうまく管理できないパキスタンに対する不満を高めつつある。一度は国軍を部族地域に投入したパキスタンだが、現地での駐留が長引くにつれて、部族地域の住民の反発を買うようになったため、「政府の代理人と部族長の交渉」という従来の路線に戻る一方で、「部族地域の治安部隊を強化して、こうした部隊がテロリストや民兵を取り締まることを期待している」。だが、「地方に配備されているパキスタンの治安部隊は装備も貧弱で、自動小銃で武装したアルカイダがジープで走り去るのを、50年前の銃を抱えて見逃すしかない状況だ」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
北朝鮮との外交交渉の行方

2007年4月号

ドン・オーバードーファー
ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール 朝鮮研究所理事長

「私は北朝鮮の核実験は(外交交渉へと流れを向かわせる)ある種の『触媒』の役目を果たしたと考えている」。実験後の状況が危険な対立状況、武力衝突の危険によって支配されたわけではなく、アメリカ、アジア諸国、そして世界の関係国は比較的冷静な対応をみせた。実際、核実験後には、北朝鮮と各国の対立よりも、むしろ、外交路線が活性化した。核実験から6者協議での北朝鮮との合意へと向かった流れをこう描写するオーバードーファーは、「アメリカとの外交関係の正常化が実現するのなら、北朝鮮は核開発計画を部分的、あるいはすべて解体することにも否定的ではない」としながらも、「行く手には大きな困難が待ち受けている」と指摘し、「どちらが先に行動を起こすか」「どのような手順を踏んで合意を履行していくかをめぐって暗雲が立ち込めだしている」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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