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に関する論文

ミャンマー軍事政権への多国間アプローチを調整せよ

2008年1月号

マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
デレク・ミッチェル 戦略国際問題研究所上級研究員

麻薬・武器の密輸、HIVの拡散など、ミャンマーの軍事政権は国内の人権問題や抑圧だけでなく、国境地帯を不安定化させて近隣諸国も脅かしている。これまで、アメリカはミャンマーとの外交関係を制限し、ヨーロッパも政治改革の断行を強く求めてきたが、アジア諸国の多くは、軍事政権との貿易、援助、外交関係を拡大してきた。幸い、こうした国際社会の矛盾したアプローチも変化しつつある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本はすでにミャンマーへの建設的関与路線を見直しつつある。内政不干渉の原則を固持し、資源調達がらみの思惑からミャンマーを支援してきた中国とインドにも再考を促す必要がある。各国がそれぞれ一定の譲歩を示し、政策を調整することによって、共通の目標に向けて状況を進めていかなければならない。ミャンマー制裁を他の関与策とバランスよく組み合わせて包括的に実行しなければならない。ミャンマーがさらに孤立して自暴自棄に陥り、失われた世代が生まれるのを傍観するわけにはいかない。人道的な理由もさることながら、ミャンマーは東南アジアの安全保障と統合を阻む未解決の深刻な課題なのだから。

ロシアとの新冷戦を回避するには
―― なぜロシアは対米不信に陥ったか

2008年1月号

ディミトリ・K・サイメス ニクソンセンター所長

アメリカが犯した最大の間違いは、ロシアを「敗北したかつての敵」として扱ってしまったことだ。だが、ロシアは変貌を遂げた国ではあっても敗戦国ではなかった。ロナルド・レーガンがクレムリンへの圧力を強化することで、解体プロセスを後押ししたのは事実だが、ソビエト帝国の歴史に終止符を打ったのは、ホワイトハウスではなく、ゴルバチョフだった。この点を理解しなかったワシントンは、ロシアのことを潜在的なパートナーとしてではなく、財政力に欠け、機能不全に陥った弱体な国家とみなし、ソビエトの新生国家を可能な限りアメリカ側に取り込むことで、ソビエトの解体というトレンドをさらに間違いのないものにしようと考えてしまった。そしていまや、再生したロシアがアメリカの敵対勢力になるリスクは現実味を帯びてきている。そうした現実に直面するのを回避するには、ワシントンは何が問題だったのかを理解すべきだし、関係悪化という流れを覆すための適切な措置をとる必要がある。

CFRミーティング
ワールド・エネルギー・アウトルック
――石油の安定供給と地球温暖化対策

2007年12月号

スピーカー
ファティ・ビロル/国際エネルギー機関チーフエコノミスト
司会
デビッド・G・ビクター/米外交問題評議会 科学技術担当非常勤シニア・フェロー

現在のエネルギー消費路線を各国が変えなければ、2030年の二酸化炭素排出量は42ギガトンになり、この場合、地球の気温は6度上昇する。これでは人類社会はもたない。一方で、エネルギー利用効率が改善され、再生可能エネルギーや原子力エネルギーがより多く利用されるようになれば、二酸化炭素排出量は34ギガトンへと減少するが、この場合でも地球の気温は3度上昇する。一方、世界の指導者は排出量をもっと低下させたいと考えているし、何とか気温の上昇を2度に抑えたいと考えている。この場合、排出量を23ギガトンに抑え込まなければならないが、そのためには、2012年以降に建設される発電施設のすべてを二酸化炭素を排出しない施設にし、利用効率の改善レベルを2倍に引き上げ、排出削減を実現するための政治的意思と理解を世界規模でとりまとめる必要がある。これはいずれも非常に実現するのが難しい課題だ。(ファティ・ビロル)

Review Essay
経済にいかに介入すべきか、それが問題だ
――大恐慌とニューディールの真の教訓とは

2007年12月号

チャールズ・W・カロミリス/コロンビア大学ビジネススクール教授

ニューディールが大恐慌から経済を立ち直らせたと考えるのは間違っている。それどころか、「政策の失敗、とりわけ、どのような政策が採られるかが予想不能だったことが、経済の不確実性を増幅させ、企業と消費者の投資と消費を抑制する結果となった」。大恐慌を長期化させた理由の一つは、1930年代に受け入れられ始めた経済への政府介入を肯定的にとらえる新たなイデオロギー志向だった。それは、経済を計画し、形作ることを目的とする(政府介入型の)政策実験を行っても、ダメージは軽微なものにとどまり、むしろ大きな可能性を期待できるというイデオロギーにほかならない。こうしたイデオロギーゆえに、政府の経済介入策が、特に一貫性に欠け、予測不能なやり方で実施される場合、経済に大きなダメージを与え得ることが見えなくなり、うまく機能している市場が経済的問題に自律的に対応していくメカニズムを備えていることが軽視されてしまった。

CFRディベート
原子力エネルギーは地球温暖化対策の切り札になるか

2007年11月号

マイケル・マリオット 原子力情報資源サービス所長
スティーブ・ケレケス 原子力エネルギー研究所広報部シニア・ディレクター

環境保護派の多くにとって、原子力発電という言葉はいまも呪いの言葉に等しい。彼らの多くは、原子力発電所が環境に与えるダメージをいまも心配している。だがここにきて、地球温暖化対策という新しい基準が政策領域に持ち込まれたことで、環境保護の観点からも二酸化炭素を排出しない原子力発電が見直されつつある。だが、温室効果ガスを排出しないとはいえ、原子力発電には原子炉の安全性、放射性廃棄物、核拡散リスク、コストの問題がともなうと考える専門家もいる。環境をこれ以上汚染せずに、電力の必要性をいかにして満たしていくのか。それは、原子力発電なのか、それとも、同様に温室効果ガスを排出しない風力やソーラー(太陽光)エネルギーなどの再生可能エネルギーなのか。あるいは、原子力と再生可能エネルギーの組み合わせなのか。二人の専門家が議論する、エネルギーと地球環境の将来とは。

中国の環境破壊はなぜとまらないか

2007年10月号

エリザベス・C・エコノミー
米外交問題評議会アジア研究担当ディレクター

中国の指導者は大胆な環境対策の目標を設定し、環境保護に向けた投資を増やすと表明し、企業や地方政府にそれぞれ環境浄化に努めるよう強く求めだしている。国際社会も「北京も環境保護に向けた新たな路線をとりだした」と思い込んでいるようだ。しかし、こうした国際的反応は、「北京が号令をかければ物事が進む」という誤った思い込みを前提にしている。北京は国としての目標は設定できても、政策の実施面を管理しているわけではない。現実には、地方政府が北京の環境保護指令に注意を払うことはめったにない。むしろ、地方政府はもっぱら経済成長のさらなる推進にエネルギーと資源を注ぎ込んでいる。中国の環境保護政策の方向転換を図るには、環境保護に向けた目標を設定したり投資したりするよりもはるかに困難な、抜本的な政治経済制度の改革が最終的には必要になる。

経済成長と技術革新だけで、人は幸せになれるのか。リバタリアン(自由意思論)の立場をとる人々はこれにイエスと答える。市場経済のなかで、国が豊かになって技術革新が進めば、市民は健康になってよりすぐれた教育を受け、よい食事をして長生きし、環境に関心を払うようになる、と。だが、これはいかにも、規制をつくる政府を市場の敵とみなすアメリカ人特有の見方ではないか。実際、規制による適切な動機づけがあれば、経済成長と技術革新は環境にプラスに作用するが、市場のロジックだけではそうしたインセンティブは生じない。アメリカにおける環境への配慮も、力強い経済に必須の産物ではなく、激しい政治論争で環境保護派がかろうじて勝利を収め、規制が導入された結果である。富をつくりだすメカニズムとしての市場経済の作用に疑いはないが、規制緩和を進めて自由化路線をとれば、状況を先へ進められるのかどうか、その因果関係は明快ではない。

Classic Selection
21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか

2007年8月号

アザル・ガット テルアビブ大学教授

現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

アメリカのリーダーシップを刷新する

2007年7月号

バラク・オバマ/米民主党予備選大統領候補

「アメリカだけでは21世紀型の脅威に対処できないし、また世界もアメリカ抜きではそうした脅威に対処していけない。われわれは孤立主義へと逃げ込むべきではないし、傲慢な態度で世界を押さえつけようとすべきでもない。われわれは行動を起こし、模範を示すことで、世界を主導していかなければならない。……アメリカ人の安全と繁栄は、アメリカの国境の外側に住む人々の安全と繁栄とますます一体化してきている。アメリカの使命は、『世界が安全保障と人間性を共有している』という理解に根ざしたグローバルなリーダーシップを提供することにほかならない。アメリカの時代はまだ終わっていない。だが、新たなパワーを確立しなければならない。アメリカのパワーが衰退に向けて低下しているとみなすのは、世界におけるアメリカの任務と歴史的目的を無視することになる。私が大統領になれば、就任した当日からそうした任務と目的の刷新に取り組んでいく」

グローバルな新世代の課題に立ち向かうには

2007年7月号

ミット・ロムニー
米共和党予備選大統領候補

「イスラム過激派の狙いはただ一つ、近代的なイスラム国家のすべてをカリフの統治に置き換え、アメリカを破壊し、人々を力ずくでもイスラム教に改宗・帰依させることだ。この計画は不合理なように思えるが、実際、彼らの運動はこれを実現することを目的に据えている。……イスラム過激派の脅威はいまそこにある実存的な脅威である。……大統領に選ばれれば、私は真っ先に、中東問題に対処していくための、サミットの開催を求める。……目的は、イスラム過激派を打倒しようと試みるイスラム穏健派を支援する世界戦略を考案することだ。私は、このサミットの結果、繁栄と進歩のためのパートナーシップ構想が誕生すると考えている」

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