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に関する論文

アメリカ衰退論は間違っている
―ワシントンは国際システムの改革を主導せよ

2009年5月号

スティーブン・G・ブルックス/ダートマス大学准教授 ウィリアム・C・ウォルフォース/ダートマス大学教授

アメリカ帝国論をめぐって専門家が論争を展開していたのはわずか2~3年前のこと。それが今は、アメリカを唯一の超大国とする一極システムは急速に終焉に向かっていると広く考えられている。だが、事実を冷静に見つめれば、アメリカ帝国論がアメリカのパワーを過大評価していたのと同じくらい、最近の衰退論はアメリカのパワーを過小評価していることがわかる。……世界は新たな課題に満ちあふれているが、現在の国際システムではこれらにうまく対応できない。国際システムを新しい課題に適応できるように変革するには力ある国家のリーダーシップが必要であり、その任務に向けた協調を主導できるのは、衰退などしていないアメリカを置いて他にはない。

米中G2構想という幻想
―― 対中多国間アプローチを

2009年05月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会アジア担当ディレクター
アダム・シーガル 米外交問題評議会中国担当シニア・フェロー

グローバルな課題に対応していく上でアメリカは中国の協力を必要としている。だが、この観点から米中の二国間関係を強化しようと試みても、利益認識や価値観の違い、政策遂行能力の違いが災いして、うまくパートナーシップを形成するのは現実には難しい。中国との協力という言葉は心地よい響きを持つが、実際にはそれが一筋縄ではいかないことを認めなければならない。結局は混乱に直面して双方が反発しあうことになる。こうした関係悪化の下方スパイラルの渦にはまるのを避けるには、ワシントンは中国への対応をめぐって世界各国から支援を引き出すべきだ。現状における重要な問題のすべてに中国が影響を与えているとみなし、台頭途上のグローバルなパワーである中国からより多くの協調を引き出したいと考えているのはアメリカだけではない。アメリカが中国との関係を前に進めたいのであれば、他の国も中国との交渉に参加させる必要がある。

2008年前半まではサブプライムローン危機が実体経済に影響を与えるかどうか、リセッションがどのくらい長引くかを争点に考えられていた危機が、いまや大恐慌以降、もっとも深刻なグローバル経済・金融の危機と化している。危機は、各国の経済・貿易構造の再編を強いるだけでなく、経済モデルもドル基軸通貨体制も変化させるかもしれない。景気刺激策の後には、インフレとドル危機が待ち受けている危険もある。しかも、危機は、経済・金融領域だけでなく、地政学秩序さえも動揺させる恐れがある。また危機を緩和させ、再発を防ぐという目的からの国際協調が、国や地域を単位とする政治対立や保護主義の台頭によって行く手を阻まれる危険もある。危機のなかで世界の知性は何を考え、今後をどのように見通しているか。未曾有の危機のなかで将来を見通すための必読の書 。

イラクかアフガニスタンか、それが問題だ
――オバマ政権の困難な選択

2009年4月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会国防政策担当シニア・フェロー

「2009年2月末にオバマ大統領が発表したイラクからの撤退計画、つまり、19カ月で戦闘旅団を撤退させ、3万5千から5万の部隊を2011年まで残留させるというやり方は、様々な矛盾する要請のなかで、妥当なバランスを大統領が見極めた結果だと思う」。こう語るCFRの安全保障問題の専門家スティーブン・ビドルは「イラクでの平和維持活動の成功の可能性をどこまで低下させることを受け入れるのか。そして、さらなる増派をすれば、アフガニスタンでの成功の見込みをどこまで高められるか。大統領はこのふたつの矛盾する要請の間のバランスをとろうと試みている」と指摘する。問題はアフガンへの戦力増強が、イラクの不安定化というリスクを伴うことだ。アフガニスタンへの戦力増強のためにイラクから必要以上に速いペースで撤退すれば、イラクは再び内戦へと逆戻りしてしまうかもしれない。「そこにリスクフリーの選択肢はなく、バランスをとるしかない」と同氏は語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

アメリカは日本の「失われた10年」と同じ道をたどるのか
―― 日米のバブル崩壊を検証する

2009年4月号

リチャード・カッツ/オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

日本経済の「失われた10年」はその政治経済体制に深く根ざしていた。雇用を保護し、生産性の低い国内の企業と産業を守るために規制が張り巡らされ、企業間の談合がまかり通っていた。結局は、このような政治経済システムが生産性の向上と経済成長のポテンシャルを抑えこんでしまった。対照的に、2007年~2008年に起きたアメリカのサブプライム・モーゲージ・ローンをめぐる大失策は、日本のような「手に負えない構造的問題」ではなく、主に行き過ぎた(規制緩和)イデオロギーと金融ロビイストの影響力が重なり合って引き起こされた政策上の間違い、それも修正可能な間違いに派生している。もちろんアメリカの金融危機には、日本の場合よりもはるかに憂慮すべき側面が一つある。それは、アメリカの金融危機がグローバルな波及効果を持っていることだ。だが、悲観論に陥る必要はまったくないし、「アメリカの失われた10年」を懸念する必要もない。……

Classic Selection 2009
地球温暖化対策の切り札としての地球工学オプション

2009年4月号

デビッド・ビクター スタンフォード大学教授
M・グランジャー・モーガン カーネギーメロン大学 工学・公共政策学部・学部長
ジャイ・アプト カーネギーメロン大学工学・公共政策学部教授
ジョン・ステインブルーナー メリーランド大学教授
キャサリン・リック カーネギーメロン大学博士課程在籍

世界各国の二酸化炭素排出量削減が思うに任せず、地球環境が急激に悪化する「ティッピング・ポイント」を超えてしまう危険が迫りつつある以上、政策決定者は、地球温暖化の余波を少しでも和らげるための緊急対応戦略として(太陽光の一部を遮断するために)反射性の粒子を大気中にちりばめたり、あるいは、地球を冷やすためのサンシェード(日よけ)を設けたりするなど、地球規模のスケールで工学システムを配備することの恩恵とリスクの分析を開始すべきだ。ただし、地球工学的なやり方で地球を冷やすことはできるが、大気中に蓄積される二酸化炭素の排出量を減らすことはできないし、その余波がどのようなものになるかもはっきりしない。その時に備えた地球工学の実証的研究を今から進めておく必要がある。

イラクを超えて
――中東への包括的な新アプローチを

2009年3月号

リチャード・N・ハース  米外交問題評議会会長
マーチン・インディク  ブルッキングス研究所セバン中東センター所長

イランは、秩序を不安定化させる危険な核開発プログラムの開発に向けて着実に歩を進めている。オバマ政権は、条件をつけることなく、テヘランに公式に交渉を申し入れるとともに、イラクのこれまでの進展を維持するために米軍撤退を慎重に進め、中東和平、特にイスラエルとシリアの和平に力を入れていく必要がある。これらを連動させ、成功へと導くには一つの領域での行動の結果が、他の領域でアメリカが実現しようとしていることにどう作用するかを想定し、避けられない混乱に直面しても路線を維持できるような統合戦略をとる必要がある。

Classic Selection 2009
台頭する中印とインド洋の時代
――21世紀の鍵を握る海洋

2009年3月号

ロバート・D・カプラン アトランティック・マンスリー誌記者

世界の人口の75%が沿岸から200マイル以内の陸地で生活していることを思えば、世界の軍事的未来は遠大な海域で活動する能力をもつ海軍力(と空軍力)によって左右される。しかも、海軍の場合、空・陸軍以上に経済利益、貿易システムを守る上で大きな役割を果たせる。……1890年、アメリカの軍事理論家のアルフレッド・セイヤー・マハンは「海上権力史論」で、「商船を守る海軍力が世界の歴史を形作る大きな要因になる」と指摘したが、現在、中国とインドの海軍戦略家は、マハンの著作をむさぼるように読んでいる。……いまやインドと中国のインド洋をめぐるライバル競争は、あたかも海洋版「グレート・ゲーム」の様相を呈している。

CFRミーティング
北朝鮮が権力継承に失敗すれば……

2009年3月号

パネリスト
ポール・B・スターレス
CFR紛争予防担当シニア・フェロー
スコット・A・スナイダー
CFR朝鮮半島研究非常勤シニア・フェロー
司会
アニア・シュメマン
CFRコミュニケーションディレクター

「米中双方が安心できるような戦略的安定のためのプロセスを準備しておくべきだ」とわれわれはリポートで提言した。そうした枠組みがあれば、相手が朝鮮半島においてどのような意図を持っているかをより適切に理解できるようになるし、危機のなかでミスパーセプションや誤解から問題が生じるのを回避できる。このプロセスを慎重に静かに進める必要がある。……米中協議の目的は北朝鮮への懸念を共有するとともに、危機の際に相手がどう行動するかの双方の懸念を緩和し、この点での安心感を醸成していくことにある。(P・スターレス)

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