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に関する論文

イランの行動論理を解明する
―― イランとの和解を
 実現する直接交渉を

2009年8月号

モフセン・M・ミラニ 南フロリダ大学政治学教授

イランとアメリカはポーカーゲームをしているようなものだ。テヘランは核開発に関する手の内を見せようとせず、一方ワシントンは、イランに対する軍事攻撃という選択肢を外そうとはしない。ワシントンが有利な情勢にあるが、有利な側がつねにゲームに勝つとは限らない。ワシントンは、アルカイダを打倒し、アフガニスタンとイラクを安定させるというイランとの共有認識をもとに、30年に及んでいるイランとの敵対関係にピリオドを打つべきだろう。テヘランも、アメリカが重視する問題をめぐってワシントンとの合意を形成しないことには、地域大国に台頭したことからの恩恵を引き出せないどころか、すでに手に入れているものの多くを失うリスクが生じることを理解しなければならない。両国が共有する利害に注目し、残された立場の違いを埋めていくための直接交渉枠組みを立ち上げるべきだ。

タリバーンを切り崩して、
平和を勝ち取るには
―― アフガンの国民和解に向けて

2009年8月号

フォティニ・クリスティア マサチューセッツ工科大学政治学助教授
マイケル・センプル 南アジア研究者

いまやタリバーンはカブールに近づきつつあり、攻略した地域に新たな行政組織を樹立し、イスラム法廷システムを持ち込みつつある。オバマ政権によるアフガンへの米軍増派策が、現地でのこうした厄介な流れを食い止めることに一時的には貢献できるかもしれない。だが、タリバーン勢力を打倒するための軍事・政治戦略に国民和解というアジェンダを埋め込む必要がある。和解に応じる気のあるタリバーンの信頼を勝ち取るとともに、和解を拒絶する勢力は粉砕するか、拘束しなければならない。国を占領して、武装勢力をいくら殺害し、拘束しても、彼らを粉砕することはできない。敵の中から友人にできる勢力を探しださなければならない。アフガンでは、信頼できる国民和解戦略をとるほうが、軍事力や戦場での軍事的勝利にだけこだわるやり方よりも、安定を実現できる可能性ははるかに高い。

Classic Selection 2008
グローバル化のたそがれ?
―― アジアからアメリカへの貿易の流れは停滞する

2009年8月号

マーク・レビンソン
エコノミスト 元ニューズウィーク誌経済担当ライター

グローバル化の後退を促している要因は二つある。運輸コストの上昇と国際物流への信頼性の低下だ。原油価格の高騰に加えて、これまでグローバル化を支えてきたコンテナ輸送を受け入れる港湾インフラ、国内輸送インフラが逼迫し、テロ対策、環境対策もとらざるを得ない状況にある。これらのすべてがグローバルなサプライチェーンの流通・輸送コストを引き上げている。その結果、世界の反対側にある工場から部品を調達し続けることが賢明なのかどうか、企業も疑問に感じるようになり、グローバル規模でのアウトソーシングもかつてのような魅力を失いだしている。すでに先進国市場のための製品や部品を作ってきたアジアに進出している企業はこれまでのビジネスモデルを見直し、工場から商店の棚に並ぶまでのサプライチェーンの距離を短くしようと試みている。実際、アメリカのメーカーは国内、そして、メキシコ、中央アメリカなど、米市場に近い地域へと生産拠点を移そうとするかもしれない。いまや「グローバル化の黄金時代」は終わりつつある。

Review Essay
インドの将来を「思い描く」
―― 弱点を優位に変えた国の将来は

2009年8月号

エドワード・ルース
フィナンシャル・タイムズ紙 ワシントン支局長

「とてつもなく大きな課題を前にして萎縮しつつも、そうした課題に正面から取り組めば大きな機会を手にできると期待している。インドはこの二つの思いの間で揺れている」とニレカニは言う。彼は、お粗末な公衆衛生政策、エネルギー供給の欠陥、環境対策への無関心をそうした課題として指摘する。「長期的にみて、潜在力を開花できずに失望にくれるか、期待を上回る成果を挙げるか。インドの行き着く先は、そのどちらかだ」とみる彼は、かつては短所や欠陥とみられていたものが、むしろ長所、強みとなっていると彼は言う。人口の多さ、混沌とした民主主義、植民地時代の屈辱を思い出させる英語、これらの短所がいまや大きな資産となっている。だが、今後の多くは、環境悪化とエネルギー問題にどう取り組んでいくか、そして有能な人材を海外から呼び戻せるように国内の体制を整備できるかによって決まる。

米ロ関係の歴史的転換は実現するか
―― 戦略的パートナーシップを実現させるには

2009年8月号

ロバート・レグボルド  コロンビア大学名誉教授(政治学)

下手をすると、アメリカ、ロシア、中国間のせめぎ合いが今後の世界を規定することになりかねない。そんな事態にならないようにすることがアメリカの現大統領、そして次期大統領の重大な外交課題だ。オバマ大統領は、摩擦と対立という局面を繰り返した米ロ関係の不毛な10年に終止符を打ち、両国を前途有望な未来へと向かわせる大きなチャンスを手にしている。ワシントンは、対ロ政策を小手先でいじるのではなく、新しいページをめくるべきだし、そのためには戦略的ビジョンが必要になる。そうしたビジョンを基にロシアとの協力関係を実現できれば、アメリカとロシアは、広大な旧ソビエト圏内外の動揺を緩和し、一方で中国やインドなどの新興国を新しい国際秩序に取り込んでいくことに向けて協調できるはずだ。米ロの戦略的パートナーシップの本質はこうした目的を実現することにある。

CFRミーティング
金融危機の教訓
― ドルの暴落とインフレの危機がやってくる?

2009年7月号

スピーカー
ベン・ステイル 米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー(国際経済担当)
プレサイダー
セバスチャン・マラビー CFR地政経済学研究センター所長

「今回の(金融)危機の進展と政府の政策の余波は重なり合っている。たとえば、低所得世帯向けローン拡大策が、米投資銀行のレバレッジの拡大を招いた。・・・低所得世帯やマイノリティーの持ち家比率を上げることは政策の優先課題だった。ハイリスクローンの拡大を未然に防ごうとしても、おそらくそれを押さえ込もうとする政治的抵抗を受けていただろう。・・・いずれ米政府は自らが市場に吐き出した資金を吸い上げようと、最大1兆ドルの民間資産をあわただしく市場で投げ売りすることになるだろう。しかし、実際のFRBの行動は迅速性と積極性を欠くものになる可能性がある。そうなれば、米国債は大幅に下落し、長期金利の急上昇とドルの急落を招き、その半年後から1年後にはインフレ率が大幅に上昇することになる」。

「核のない世界」と核拡散という現実
――北朝鮮、イランと核不拡散

2009年7月号

スピーカー
 ウィリアム・ペリー
元米国務長官
ブレント・スコークロフト
元国家安全保障担当大統領補佐官
司会
ジャクソン・ディール
ワシントン・ポスト紙論説ページ副編集長

「核のない世界の実現にもっぱら焦点を合わせれば、戦争や危機を回避するという目的に目がいかなくなってしまう。・・・私に言わせれば、核兵器が存在しなかった時代とは、第一次世界大戦、第二次世界大戦に象徴される時代だ。核廃絶という目的にコミットする前に、それが何を意味するかをもっと具体的に検討する必要がある」。(B・スコークロフト)

「核のない世界を実現するという目的を表明し、それに取り組んでもイランや北朝鮮の行動を変えることはできないだろう。だが、イランや北朝鮮に対処していく上でその協力が必要な諸国の支持を得ることができる。だからこそ、核のない世界という目的は重要だし、私が核のない世界を支持しているのもこうした理由からだ」。(W・ペリー)

中国は市場改革路線をすでに放棄している
―― GDP成長に取り憑かれ、改革を忘れた中国

2009年6月号

デレク・シザーズ ヘリテージ財団アジア経済担当リサーチ・フェロー

胡錦涛と温家宝は2002~2008年に、経済が停滞していなかったにも関わらず、国の経済への介入路線を強めていった。……市場改革の要である価格の自由化は部分的に覆されているし、当初から緩慢なペースでしか実行されていなかった民営化はすでに放棄されている。企業間の競争を促す構想も帳消しにされている。中国政府は、外国からの投資を制限し、輸出に課税することで、比較的開かれていた貿易部門への介入さえも強めつつある。中国で市場改革路線が放棄されたのは、一つには、指導層が他の全てを犠牲にしてでもGDPの成長を実現しようと試みているからだ。

フォーリン・アフェアーズ・コラム
対北朝鮮制裁を行い、金正日後に備えよ

2009年5月号

ビクター・チャ 前米国家安全保障会議アジア担当部長

「短期的には平壌のミサイル発射に対する制裁にむけた圧力をうまく作り出し、一方で、自由で民主的な統一朝鮮に備えた準備を長期的な観点から始める必要がある。……オバマ政権は北朝鮮を再度「テロ支援国家」にリストアップすることも検討すべきだし、金正日後の北朝鮮にどう対処していくかをめぐって中国、韓国との本格的な交渉を水面下で始め、北朝鮮が建設的な路線をとれば、その見返りに安全の保証と経済援助を与えるという取引を示すことで、(日本とともに)、潜在的な平壌の新指導層への接触を試みていくべきだろう」。

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