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に関する論文

コペンハーゲンの「不都合な真実」
―― グローバルな合意への期待を引き下げ、国単位の対策を優先させよ

2009年10月号

マイケル・レビ 米外交問題評議会シニア・フェロー (エネルギー、環境問題担当)

温室効果ガス排出量削減の世界的取り組みが、一つのグローバルな条約を基盤に展開していくことはあり得ないし、2009年12月に包括的な合意が成立する見込みもほとんどない。地球環境対策を強化したいと考えている政府官僚や活動家は戦略を見直すと同時に、コペンハーゲン会議への大きな期待を引き下げるべきだ。グローバルな条約ではなく、野心的な国単位の政策と、排出量削減のための特別な機会に焦点を合わせたクリエーティブな国際協調を組み合わせた「ボトムアップアプローチ」を試みるべきだ。コペンハーゲンでの交渉の目的を、先進国の排出量削減へのコミットメントを強化し、途上国の環境対策を経済成長、安全保障、大気汚染など、途上国の指導者がすでに心配し始めている他の領域の問題へとリンクさせる程度へと引き下げない限り、会議はなんの成果も得られないまま終わることになる。

CFRインタビュー
新型インフルエンザ・ワクチンの不足を
いかに埋め合わせるか

2009年10月号

デビィッド・フェドソン アドベンティス・パスツール社 前医療研究ディレクター

世界のワクチンメーカーは、2009年にパンデミック(世界的流行)が宣言されたH1N1のワクチン生産に力を入れている。だが、「現在9カ国(アメリカ、カナダ、西ヨーロッパの5カ国、オーストラリア、日本)に存在するワクチンメーカーは、合計すれば8億4000万人分のワクチンを生産できるだけで、・・・これでは、数十億の人々にワクチンを提供することは到底できない」。「ワクチンメーカーを国内にもつ9カ国の総人口は7億5000万。・・・ワクチンの生産国は、国内用の十分なワクチンを確保した上で、他の諸国のワクチンを輸出することになるだろう」。十分なワクチンと抗ウイルス薬が存在しない以上、呼吸器疾患その他、インフルエンザが関わってくる疾患への対策をグローバルレベルで考える必要がある。

米中露トライアングルの勝者は誰か
―中国の影響力拡大は続く

2009年10月号

スティーブン・コトキン
プリンストン大学歴史学教授

ポスト・ソビエト時代における衰退からはすでに立ち直っているが、依然として地域大国のレベルに甘んじているロシアは、それでもグローバルな大国として振る舞おうとしている。その結果、ロシアはアメリカの中央アジアその他での影響力拡大を阻止することに気を奪われ、結果的に中国に足元を脅かされている。一方、中国は、すでにグローバルな大国へと変ぼうを遂げているにも関わらず、多くの場合、地域大国として振る舞うことに徹している。北京は、米ロのジュニアパートナー役を受け入れることで、利益と影響力の最大化を狙っている。ロシアは、アメリカのジュニアパートナーに甘んじることを拒絶することで、図らずも、中国のジュニアパートナーになってしまった。この枠組みは、北京がそうすることが都合がよいと判断する限り続くだろう。

地球温暖化が問題になっているとはいえ、いまや風力、地熱エネルギー、ある特定の太陽光エネルギー技術を含む、数多くの技術が、石炭のような従来のエネルギー源ほど安価ではないにしても、十分な量のクリーンエネルギーを供給できるところまで成熟している。問題は、資金へのアクセスが十分でないことだ。だが、市場メカニズムをうまく利用した排出権取引システムがあれば、この問題に正面から対応できる。・・・排出量割り当てが減少していけば二酸化炭素の価格は上昇し、排出主体が負担するコストは、排出削減のために負担するコストと反比例して増大していく。・・・市場は、資金を分配し、富を創出する強力なメカニズムだ。地球温暖化が地球全体に脅威をもたらしている現在、市場は社会変革を推進するメカニズムにもなる。

ブラックカーボンと低層オゾン対策を
―― もう一つの温暖化対策

2009年10月号

ジェシカ・セドン・ワラック 金融管理研究所(IFMR)開発金融センター所長
ビーラバドラン・ラマナタン カリフォルニア大学サンディエゴ校教授(気候・大気科学)

二酸化炭素排出量削減の恩恵は世界全体で享受できるが、削減コストは各国が負担しなければならない。このコストと恩恵のバランスの見極めが難しいために国際条約をまとめるのは難しい。一方で、リスクが小さく、費用対効果が高く、大きな成果が得られるのに、ほとんど注目されていないオプションがある。それは、光を吸収し(温暖化を進める)「ブラックカーボン(=黒色炭素)」として知られる炭素粒子、そして低層オゾンを形成するガスの排出を削減することだ。黒色炭素と低層オゾン前駆物質の排出量削減はさまざまな意味で有望だ。コストが比較的小さくて済む上に実行しやすく、何十年分もの温室効果ガスの悪影響を相殺し、数多くの恩恵が直ちに得られ、しかも、いますぐに着手できる。

Classic Selection 2009
脅かされる基軸準備通貨、ドルのジレンマ
―― ユーロ、SDR、人民元の台頭

2010年9月号

バリー・エイケングリーン カリフォルニア大学バークレー校 経済学教授

基軸準備通貨は1通貨でなければならないという考え方は、歴史を見れば間違っていることが分かる。歴史的にみても、複数準備通貨制の下では、準備資産を求める新興市場国から唯一の準備通貨供給国へと膨大な資金が流入し、これによって資産バブルが起きるという、最近、アメリカで見られたような混乱は起きていない。第二次世界大戦後のドルの地位は、アメリカ経済のグローバル市場における圧倒的なプレゼンスに支えられていたが、もはやこの例外的な状況は存在しない。短期的には、ユーロがヨーロッパ域内と近隣地域において準備通貨としてのシェアを伸ばしていくだろうし、長期的には、人民元が特にアジアにおいて影響力を拡大していくと考えられる。しかし、予見できる将来について言えば、ドルが他よりも一頭抜きんでた準備通貨であり続けるだろう。

NATOを中枢に据えた
グローバルな安全保障ネットワークを形成せよ

2009年9月号

ズビグネフ・ブレジンスキー 元米国家安全保障担当大統領補佐官

第二次世界大戦後のグローバル秩序が形骸化すると同時に、パワーが分散し、世界の大衆の政治的覚醒に伴う状況への反発が高まっている。これらが重なり合って、一触即発の危険な状態が生じている。この現実を踏まえて、NATOの集団安全保障条項を再定義し、NATOとロシア・旧ソビエト諸国の関係、NATOと中国、日本、インドとの関係を、グローバルな安全保障ウェブの一部として関連づけていく必要がある。中国、日本、インドとNATOの共同理事会の立ち上げも視野に入れるべきだろう。だが、一部で提言されているように、NATOをグローバルな同盟関係に変貌させたり、グローバルな民主国家連盟へと拡大させたりするのは良い考えではない。そうではなく、NATOが様々な地域的安全保障協調枠組みのネットワークの中枢を担う経験、制度、手段を備えていることを認識した上で、ロシア、旧ソビエト諸国、中央アジア、アジアとの安全保障上の連携を試みるべきだ。

米軍は東アジア海域とペルシャ湾に介入できなくなる?
―― 危機にさらされる前方展開基地と空母

2009年9月号

アンドリュー・F・クレピネビッチ 戦略・予算評価センター所長

アメリカが死活的に重要な利益を有する地域・海域に、伝統的な作戦概念で戦力を展開させるのが次第に難しくなってきている。事実、米軍は、東アジア海域とペルシャ湾に次第に立ち入れなくなりつつある。中国は、沖縄の嘉手納空軍基地、グアム島のアンダーセン空軍基地などの前方展開基地から米軍が自由に作戦行動を取れないようにするために、これらの基地をかなりの精度で攻撃できる通常兵器を装填した弾道ミサイルの大がかりな配備を進めている。東アジアの海域はゆっくりとだが、それでも着実に米海軍、とくに空母が立ち入れない海域になりつつある。・・・ワシントンの政策決定者は今後における真の脅威を軽くみている。このままでは、いずれ「驚きを禁じ得ない戦略状況」に直面する。冷戦初期に試みられた戦略見直しと同様の奥深さとビジョンを持つ、アメリカの世界戦略に関する包括見直しがいまや必要とされている。

アフリカの資本主義革命
―― 危機のなかで成長を維持するには

2009年9月号

イーサン・B・カプスタイン 仏インシード・ビジネススクール・チェアー

権威主義的な政府のもとである程度うまくやっている東アジア諸国とは対照的に、アフリカ諸国は総じて国家運営に失敗している。これは、アフリカの独裁者の多くが、出身部族の生活を向上させることしか頭にないからだ。しかし、いまやアフリカでは急速な都市化が進行しており、市場経済と民主主義の前提である多様な社会の形成が刺激されている。指導者たちも、従来の「家産的なやり方」はコストが大きすぎて維持できなくなりつつあることを理解している。この資本主義革命の流れを加速させるには、援助よりも、貿易を通じてアフリカを助ける必要がある。この点を先進諸国が認識し、アフリカでの改革の進展を保護主義で抑え込まないようにしなければならない。

エリート集団内の新興勢力と旧勢力が権力闘争を繰り広げ、都市生活者と農村部が反目し、北部と東北部がバンコクや南部と対立し、貧困層と富裕層の亀裂も深まっている。しかも、これまで社会を束ねる役目を果たしてきた王室も、王位継承問題を抱えている。これに経済危機が重くのしかかるようになれば、タイの将来はますます不透明化していく。タイの政治危機が社会闘争の様相を呈するようになった最大の理由は、タクシンが貧困層、特に貧しい東北部の苦境を権力抗争に利用したからだ。しかし、タクシン派同様に、反タクシン派も大きな問題を抱えている。現在の闘争は、経済階級闘争というよりも、政治闘争や地域闘争の色彩が強く、政治危機も二つのエリート集団間の権力闘争と考えるのが真実に近い。現状では、タイの危機が収束していくとは考えにくい。

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