1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

に関する論文

イラクかアフガニスタンか、それが問題だ
――オバマ政権の困難な選択

2009年4月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会国防政策担当シニア・フェロー

「2009年2月末にオバマ大統領が発表したイラクからの撤退計画、つまり、19カ月で戦闘旅団を撤退させ、3万5千から5万の部隊を2011年まで残留させるというやり方は、様々な矛盾する要請のなかで、妥当なバランスを大統領が見極めた結果だと思う」。こう語るCFRの安全保障問題の専門家スティーブン・ビドルは「イラクでの平和維持活動の成功の可能性をどこまで低下させることを受け入れるのか。そして、さらなる増派をすれば、アフガニスタンでの成功の見込みをどこまで高められるか。大統領はこのふたつの矛盾する要請の間のバランスをとろうと試みている」と指摘する。問題はアフガンへの戦力増強が、イラクの不安定化というリスクを伴うことだ。アフガニスタンへの戦力増強のためにイラクから必要以上に速いペースで撤退すれば、イラクは再び内戦へと逆戻りしてしまうかもしれない。「そこにリスクフリーの選択肢はなく、バランスをとるしかない」と同氏は語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

アメリカは日本の「失われた10年」と同じ道をたどるのか
―― 日米のバブル崩壊を検証する

2009年4月号

リチャード・カッツ/オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

日本経済の「失われた10年」はその政治経済体制に深く根ざしていた。雇用を保護し、生産性の低い国内の企業と産業を守るために規制が張り巡らされ、企業間の談合がまかり通っていた。結局は、このような政治経済システムが生産性の向上と経済成長のポテンシャルを抑えこんでしまった。対照的に、2007年~2008年に起きたアメリカのサブプライム・モーゲージ・ローンをめぐる大失策は、日本のような「手に負えない構造的問題」ではなく、主に行き過ぎた(規制緩和)イデオロギーと金融ロビイストの影響力が重なり合って引き起こされた政策上の間違い、それも修正可能な間違いに派生している。もちろんアメリカの金融危機には、日本の場合よりもはるかに憂慮すべき側面が一つある。それは、アメリカの金融危機がグローバルな波及効果を持っていることだ。だが、悲観論に陥る必要はまったくないし、「アメリカの失われた10年」を懸念する必要もない。……

Classic Selection 2009
地球温暖化対策の切り札としての地球工学オプション

2009年4月号

デビッド・ビクター スタンフォード大学教授
M・グランジャー・モーガン カーネギーメロン大学 工学・公共政策学部・学部長
ジャイ・アプト カーネギーメロン大学工学・公共政策学部教授
ジョン・ステインブルーナー メリーランド大学教授
キャサリン・リック カーネギーメロン大学博士課程在籍

世界各国の二酸化炭素排出量削減が思うに任せず、地球環境が急激に悪化する「ティッピング・ポイント」を超えてしまう危険が迫りつつある以上、政策決定者は、地球温暖化の余波を少しでも和らげるための緊急対応戦略として(太陽光の一部を遮断するために)反射性の粒子を大気中にちりばめたり、あるいは、地球を冷やすためのサンシェード(日よけ)を設けたりするなど、地球規模のスケールで工学システムを配備することの恩恵とリスクの分析を開始すべきだ。ただし、地球工学的なやり方で地球を冷やすことはできるが、大気中に蓄積される二酸化炭素の排出量を減らすことはできないし、その余波がどのようなものになるかもはっきりしない。その時に備えた地球工学の実証的研究を今から進めておく必要がある。

イラクを超えて
――中東への包括的な新アプローチを

2009年3月号

リチャード・N・ハース  米外交問題評議会会長
マーチン・インディク  ブルッキングス研究所セバン中東センター所長

イランは、秩序を不安定化させる危険な核開発プログラムの開発に向けて着実に歩を進めている。オバマ政権は、条件をつけることなく、テヘランに公式に交渉を申し入れるとともに、イラクのこれまでの進展を維持するために米軍撤退を慎重に進め、中東和平、特にイスラエルとシリアの和平に力を入れていく必要がある。これらを連動させ、成功へと導くには一つの領域での行動の結果が、他の領域でアメリカが実現しようとしていることにどう作用するかを想定し、避けられない混乱に直面しても路線を維持できるような統合戦略をとる必要がある。

Classic Selection 2009
台頭する中印とインド洋の時代
――21世紀の鍵を握る海洋

2009年3月号

ロバート・D・カプラン アトランティック・マンスリー誌記者

世界の人口の75%が沿岸から200マイル以内の陸地で生活していることを思えば、世界の軍事的未来は遠大な海域で活動する能力をもつ海軍力(と空軍力)によって左右される。しかも、海軍の場合、空・陸軍以上に経済利益、貿易システムを守る上で大きな役割を果たせる。……1890年、アメリカの軍事理論家のアルフレッド・セイヤー・マハンは「海上権力史論」で、「商船を守る海軍力が世界の歴史を形作る大きな要因になる」と指摘したが、現在、中国とインドの海軍戦略家は、マハンの著作をむさぼるように読んでいる。……いまやインドと中国のインド洋をめぐるライバル競争は、あたかも海洋版「グレート・ゲーム」の様相を呈している。

CFRミーティング
北朝鮮が権力継承に失敗すれば……

2009年3月号

パネリスト
ポール・B・スターレス
CFR紛争予防担当シニア・フェロー
スコット・A・スナイダー
CFR朝鮮半島研究非常勤シニア・フェロー
司会
アニア・シュメマン
CFRコミュニケーションディレクター

「米中双方が安心できるような戦略的安定のためのプロセスを準備しておくべきだ」とわれわれはリポートで提言した。そうした枠組みがあれば、相手が朝鮮半島においてどのような意図を持っているかをより適切に理解できるようになるし、危機のなかでミスパーセプションや誤解から問題が生じるのを回避できる。このプロセスを慎重に静かに進める必要がある。……米中協議の目的は北朝鮮への懸念を共有するとともに、危機の際に相手がどう行動するかの双方の懸念を緩和し、この点での安心感を醸成していくことにある。(P・スターレス)

CFR インタビュー
オバマ政権の北朝鮮問題への関心は低い

2009年2月号

ドン・オーバードーファー ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール米韓研究所理事長

「すくなくとも、オバマ政権が北朝鮮の核問題を外交上の優先課題に据えそうな気配はない。新政権が取り組むべき課題は山積している。問題は、北朝鮮問題を短期間で具体的な成果に結びつけるのが非常に難しいことだ。この点からも大きな問題として取り上げられるとは思わない。 ……アメリカの政府関係者が北朝鮮に関してもっとも懸念しているのは、北朝鮮がどこかの国を核兵器で攻撃することよりも、核兵器、あるいは核関連物質が全く信頼できない国や非国家アクターの手へと流れていくことだ。・・・私の知る限り、北朝鮮が韓国やその他の国を核攻撃する可能性が高いと考えている米政府関係者は誰もいないが、核分裂物資の拡散については非常に警戒している」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

21世紀を制するのは中ロか、欧米か
――権威主義的資本主義国家の復活という虚構

2009年2月号

ダニエル・デューデニー  ジョンズ・ホプキンス大学政治学教授
G・ジョン・アイケンベリー  プリンストン大学教授

ネオコンサーバティブの理論家が提言するように、権威主義国家の復活に対して、リベラルな民主国家が団結して封じ込め、軍事競争、排他的なブロック形成という路線で対抗しても、そうした国々における非自由主義的なトレンドを強化するだけだ。対照的に、地球温暖化、エネルギー安全保障、(感染症などの)疾病などの、世界が共有するグローバルな問題に彼らと協調して取り組んでいけば、権威主義国家が現在のリベラルな秩序に見いだしている価値をさらに高めることができる。つまり、民主主義国家は、相手とのイデオロギー上の違いに注目するのではなく、現実の問題、共有する問題に実務的に協調して取り組んでいくべきなのだ。政治体制ではなく、共有する利益に基づく連帯を模索すれば、反自由主義的な権威主義国家がブロックとしてまとまっていくのを回避することもできる。何よりも、リベラルな民主主義国家は歴史の流れが依然として自らの側にあることを忘れてはならない。

Page Top