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に関する論文

CFR政策メモランダム
もしイスラエルがイランを攻撃すれば

2010年4月号

スティーヴ・サイモン 米外交問題評議会中東担当非常勤シニア・フェロー

「イランの核開発はイスラエルの存在を脅かす実存的脅威であり、イラン空爆作戦を実施してもアメリカとの関係が大きく動揺することはなく、一方で状況を放置すれば、民衆と国家が大きな危険にさらされる」。イスラエルがこう判断すれば、軍事行動をとるべきだという意見が趨勢になる。たしかに、核施設への空爆を実施しても、イランは核開発計画を立て直して再開し、今後は、核開発の多くを地下施設で進めて防衛態勢を強化し、イスラエルはこれに応じて情報収集・軍事能力を高めていかなければならなくなるだけだ、という考えもある。だが、核開発計画の完成を先送りし、時間を稼ぐことの価値も無視できないと考える人もいる。・・・イスラエルに自制を求める上でもっとも必要なのは、イスラエルを安心させ、彼らが一人だと感じさせないことだ。

さらなる台頭を目指すインドが克服すべきハードルとは
―― 政治、経済的台頭と対米関係

2010年4月号

エバン・A・フェイゲンバーム
米外交問題評議会アジア担当シニア・フェロー

インドは、経済成長を持続させるための国内改革への政治的支持を得ようと、格差対策として、社会保障制度の充実を試み、さらなる成長の基盤を整備するために、インフラ投資も増やしている。台頭したインドは、混乱の絶えない近隣地域よりも、むしろ、東アジアに目を向けるようになった。パキスタン以上に、中国を警戒するインドは、オーストラリア、日本、シンガポール、ベトナムという、同様に中国の台頭を警戒する諸国との関係を重視している。中国の強大化を警戒する東アジア諸国も、大きくて豊かなインドのことを、地域的なパワー・バランスの支えとみなしている。しかし、経済であれ、外交であれ、インドが今後のさらなる台頭を確実なものにしていくには、国内の教育・労働・治安問題を改善し、アメリカとの立場の違いを克服していく必要がある。米印は、アフガニスタン、パキスタン、中国をめぐって次第に明らかになりつつある立場の違いをうまく調整し、管理していく必要がある。

複雑系の崩壊は突然、急速に起きる
―― グローバル経済とアメリカという複雑系の将来

2010年4月号

ニーアル・ファーガソン ハーバード大学歴史学教授

歴史は循環的で、その流れはゆっくりとしか変化しないという考えがもし間違っていたら。周期性がなく、静的であるとともに、スポーツカーのように、急発進するとしたら。崩壊プロセスが数世紀という時間枠で進むのではなく、夜の泥棒のように、突然にやってくるとしたら。複雑系には一定の特徴がある。小さな刺激で非常に大きな、そして、しばしば予期せぬ変化が急激に起きることだ。グローバル経済はまさしく複雑系だ。格付け会社による米債券の格付けの引き下げといった、突然の悪い知らせが、緊急ニュースとしてヘッドラインを飾る日がやってくるかもしれない。今後を考える上で、非常に重要な鍵を握るのは、こうした突然の変化だ。過去の帝国や現在のグローバル経済のような複雑適応系では、それを構成する一部の有効性に対する信頼がなくなっただけでも、システム全体が非常に大きな問題に直面する。

CFRインタビュー
輸出を増やすのは為替か貿易自由化か
――環太平洋パートナーシップの実現を

2010年4月号

ゲリー・C・ハフバウアー 国際経済研究所シニアフェロー

オバマ大統領は2010年の年頭教書演説で、5年間でアメリカの輸出を倍増させることを目標にすると表明し、3月には関係閣僚会議、財界指導者による大統領輸出評議会の設置も決め、中国の人民元の切り上げの必要性にも言及している。確かに、1970年代に5年という時間枠で輸出が倍増したことはあるが、この時期にはインフレが起きていたし、実質為替相場が低下していた。したがって、輸出倍増目標を実現するには、かなりのインフレかドル安、あるいはその双方が必要になる。「為替の見直しをせずに、輸出を倍増できると考えるのはナンセンスだが」、中国が人民元の切り上げに応じるかどうかはっきりしないし、インフレにはなりそうにはない。むしろ、「自由貿易路線を進めることこそ、輸出入のバランスをとる最善の策だ」。各国との自由貿易協定を実現し、ドーハ・ラウンドを決着させるとともに、(アジア・太平洋自由貿易圏への道を開く)「環太平洋(戦略的経済)パートナーシップ」のような優れたプロジェクトを現実に立ち上げる必要がある。

ワシントンは、鳩山政権が普天間問題をめぐる結論を出すのに、もっと時間を与えるべきだ。より全般的には、民主党が選挙で勝利を収めたことを、アメリカが手助けをして蒔いた民主主義の種が日本で根を張ったことの証しとして、もっとも祝福して評価すべきだ。この点での認識ができれば、日本がペンタゴンの要請に対してこれまでのようにおとなしく従うと期待すべきではないこと、そして、日本の政党が安全保障問題をめぐって独自の見解をもつ権利を持っていることを理解できるようになるはずだ。・・・日本における米軍部隊と基地のプレゼンスを小さくしていく代わりに、日本政府は相互安全保障と世界の平和のためにより大きな貢献をしなければならないし、集団的自衛のための活動に参加する権利を持っているとはっきりと表明すべきだろう。

オバマ政権は「金融機関によるヘッジファンドなどへの危険な投資を許してはならない」と金融機関への規制強化案を発表し、米議会でも、金融規制法案の整備が続けられている。だが、CFRのエコノミスト、マーク・レビンソンは、現在の規制案では、システミックリスクの大きな要因を取り除けないと言う。システミックリスクの根っこは「証券に組み込まれた住宅ローンのデフォルトが増えてくると、証券そのものが焦げ付き始め、債券保険会社に巨額の保険金を支払う十分な資金がないのではないかとの懸念が広がり始めた」ことにある、とレビンソンは指摘する。そして「政府の危機管理担当者が遅ればせながら債券保証会社が問題に直面していることを認識した時、別の問題が出てきた。連邦政府はこの問題に関する情報をほとんど持っておらず、対応しようにもその手段を欠いていた。債券保証会社は州政府の監督下にあり、連邦政府は権限を持っていないからだ」。当然、規制案を見直して、保険産業への米連邦政府の監督権限を明確に確立しないことには、システミックリスクを取り除けず、米政府は「今後も危機に対応できないままだろう」と同氏は警鐘を鳴らしている。

世界は再び食糧不足の時代へ
――結局、マルサスは正しかったのか

2010年3月号

チャーリスル・フォード・ランゲ ミネソタ大学教授
チャーリスル・ピエール・ランゲ イエール大学学生

2009年の穀物生産がかつてないレベルへと増大したことで、価格の高騰は一時的に抑えられているが、今後数年間のうちに再び世界は食糧不足に陥り、市場価格が高騰し始めるようになる。緑の革命を経て、多くの人が、これで食糧の安定供給は確保されたと考えるようになったが、実際にはそうではなかったことはすでに最近の食糧価格高騰によって実証されている。ますます多くの穀物がバイオ燃料の原料として用いられ始め、中国や南アジアでの人口や所得が上昇するにつれて食糧需要はさらに高まっている。途上国、とくに最貧国は絶望的な状態に追い込まれている。すでに食料価格を高騰させるメカニズムは動き出している。

「北京コンセンサス」の終わり

2010年3月号

姚洋(ヤン・ヤオ)
北京大学国家発展研究院 副所長

一般に途上国の一人当たりGDPが3000~8000ドルに達すると、経済成長は頭打ちになり、所得格差が拡大して社会紛争が起きがちとなる。中国はすでにこの危険水域に入っており、すでに厄介な社会兆候が現れている。要するに、国の経済は拡大しているが、多くの人々は貧しくなったと感じ、不満を募らせている。特権を持つパワフルな利益団体やまるで企業のように振る舞う地方政府が、経済成長の恩恵を再分配して、社会に行きわたらせるのを阻んでいるからだ。経済成長と引き替えに共産党の絶対支配への同意を勝ち取る中国共産党(CCP)の戦略はもはや限界にきている。CCPが経済成長を促し、社会的な安定を維持していくことを今後も望むのであれば民主化を進める以外に道はない。

女性を助ければ、途上世界が救われる

2010年3月号

イソベル・コールマン 元米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー

途上国の女子教育への投資は、経済成長を促し、貧困の悪循環を断ち切るうえで極めて有効な策だ。教育を受けた女性たちの場合、一人あたり出生数は少なく、産婦死亡率も低く、彼女たちは、家族の食事、健康、教育にも力を入れる。その結果コミュニティー全体に好循環が生まれる。こうした事実に世界銀行、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、CAREといった主要な援助機関だけでなく、企業も気づき始め、途上国の支援対象としての女性の役割に注目するようになった。女性のエンパワーメント(権利擁護と社会的解放)を大きな社会経済的成果へと結びつけた中国とルワンダという実例もある。途上国の女性への教育に援助の焦点を合わせるべき根拠は数多くある。

CFRミーティング
新たな世界経済のシステミックリスクとしての各国の財政赤字

2010年3月号

セバスチャン・マラビー 外交問題評議会シニア・フェロー(国際経済担当)

危機を前に「世界各国の政府が金融機関の救済に乗り出したが、いまや、政府に打つ手はなくなり、その結果、政府そのものが弱い立場に追い込まれ、これが新たなシステムの不安定化要因と化している恐れがある」。ギリシャのケースからも明らかなように、市場が財政赤字に対して警告を発するようになったからだ。各国政府がグローバル経済を支えていくやり方はティッピング・ポイント(限界)に近づきつつある。また、ドルの先行きも不安定だ。ユーロ安ドル高に振れているとはいえ、投資家は、アメリカの財再赤字の増大、高い失業率、禁輸緩和政策ゆえに、ドルの安定も疑問視している。「誰もがドルに代わる代替策を探しつつも、ドルに依存せざるを得ない現状に対して割り切れない思いを抱いている。だが、何か具体的にみえてきたら、誰もがそれに飛びつくだろう。問題は、そのタイミングがいつになるかだ」・・・・(聞き手は、ロヤ・ウォルバーソン、CFR.orgのStaff Writer)

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