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に関する論文

現在の原油価格高騰がいわゆる「ノーマルな状態」へ戻っていくと考えるのは正確ではない。「現在は一時的なショック状態にあるだけで、かつての状況に戻っていく」と考えるのは間違っている。危機前の状況へと戻っていくことはあり得ない。・・・さらに、マクロ経済の分析ではとかく景気循環が前提にされる傾向があるが、世界経済の構造と性格が着実に変化していることに目を向けるべきだ。・・・(今後、先進国は)貿易財部門、雇用に関して長期的に大がかりな変化を経験していくことになる。いずれ経済成長路線に立ち返るだろうが、雇用(失業)問題が残存することになる。教育、・・・税制度、投資インセンティブ、公的資源を用いた投資と技術開発を見直していく必要がある。

暗闇では銃を発射できないように、世界がどのように機能するかについてのビジョンなしに、政策を決めることはできない。だからこそ、現実主義者は、この世にいない経済学者か、政治理論家の奴隷となるしかない。政策決定者が、世界を間違った方向ではなく、正しい方向へと動かす可能性を高めるような、情報と知識に裏付けられた思想的な基盤とビジョンをわれわれは常に必要としている。冷戦末期以降、『文明の衝突』、『歴史の終わり』、『大国政治の悲劇」』という三つの壮大なビジョンが表明された。ベルリンの壁が崩壊した段階ではフクヤマは真実の鐘をならし、9・11以降の世界政治についてはハンチントンの予測は現実を言い当てていた。中国パワーが今後開花していけば、ミアシャイマーも現実を言い当てることになるのかもしれない。だが、ハンチントン、フクヤマ、ミアシャイマーは未来の何を言い当てて、どこを読み誤ったのか。それを理解することが、世界が必要とする第4のビジョンを描く鍵となる。

カダフィ後に何が起き、誰が台頭してくるのか

フレデリック・ウェレイ ランドコーポレーション、シニアポリシーアナリスト

チュニジア、エジプトで民衆蜂起がおきると、1969年のクーデターでカダフィを支持した軍高官の一部でさえ、ポストを解任された。カダフィは、彼らが反体制運動を主導することを懸念した。いまや軍は分裂し、トリポリにはカダフィの息子たちが統率する「ダイハード」部隊がいる。カダフィがリビアを去っても、リビアの解放を求める勢力と、最後まで戦いをやめないカダフィ体制の「ダイハード」たちの間で抗争が続くことになるだろう。結局、今後のリビアをまとめられるのは、リビア解放を求める旧リビア軍の部隊しかいない。さらに行く手には、トリポリとキレナイカの対立、大きすぎる部族パワー、民族的不満をいかに制御していくかという難題が控えている。もっとも重要なのは、リビアの軍と部隊が、特定の指導者、部族や地域ではなく、組織に対して忠誠とアイデンティティを持つようにすることだ。

「天然ガス革命」の到来
――天然ガス・グローバル市場の誕生は近い

2011年2月号

ジョン・ダッチ 元米エネルギー省次官

水平抗井や水圧破砕という二つの技術進化によって、これまで開発が難しかった世界のシェールガス資源の開発・生産効率が劇的に改善し、その生産コストも大きく低下している。シェールガスという安価な非在来型天然ガス資源の開発が急ピッチで進められているのは、こうした理由からだ。しかも、シェールガス資源のような非在来型天然ガスの生産が強化される一方で、地域間を結ぶパイプラインが整備され、天然ガスの液化施設の建設も進められている。必然的に、天然ガス価格を石油価格に連動させた、供給側に有利なこれまでの契約は次第に姿を消していくだろう。いずれ、より透明性の高い天然ガスの世界市場が誕生し、最初に電力生産部門で、次に、産業・交通部門で天然ガスが石油に取って代わっていくことになるだろう。この流れを「天然ガス革命」と呼んでも、過度に事実を誇張することにはならないはずだ。

「西洋は民主主義のソースコードを持っており、このコードへのアクセスを認めるだけで、権威主義国家は崩壊する」。このような見方は間違っている。ソーシャルメディアは民主化に向けた環境整備のためのツールにすぎない。ウェブ上の公共空間で思想や意見が拡散され、市民社会形成への流れが生じない限り、政治的変化はほとんど起きない。つまり、外部情報へのアクセスを持つことは、相互に会話できる環境を持つことに比べれば、それほど重要ではない。特定の意見が最初はメディアによって伝えられ、その後、それを読んだ人々の友人、家族、同僚たちへと広がっていき、ここで、政治的意見が形作られる。インターネット、特にソーシャルメディアが大きな違いをもたらすのも、この第2段階においてだ。ソーシャルメディアが社会や公共空間での人々の運動を加速する効果があるのは事実としても、その結果が出るまでには、数週間、数カ月ではなく、数年から数十年の時間がかかる。

世界は日本経済の経験から何を学ぶべきか
――量的緩和とバランスシート不況

2011年2月号

ジェームズ・D・グラント
グラント金利オブザーバー オーナー兼編集長
リチャード・C・クー
野村総合研究所チーフ・エコノミスト
ロナルド・テンプル
ラザード・アセット・マネジメント 投資責任者兼ポートフォリオ・マネジャー

中国政府は日本の経験から教訓を得て、2008年11月に4兆人民元もの大規模な財政出動を実施した。・・・その結果、中国経済は「バランスシート不況」に向かっていたにもかかわらず、息を吹き返した。その後も中国は不況脱出の鍵となる財政出動を続け、現在の高度経済成長へと結びつけた。・・・(もっとも)中国は独裁国家であるがゆえに財政出動を維持できた・・・(R・クー)

現在のわれわれの課題は、いまユーロ圏で起きているように国債市場から強制される前に、管理可能なやり方で自ら債務を減らしていくことだ。(R・テンプル)

連邦準備制度は・・・危険で有害な存在になっている。・・・いまや連邦準備制度は、株、債券、モーゲージの価格をつり上げることによって生活水準を向上させようとする新たな試みを始めた。なぜそんなことにまで手を出すのだろうか。そのようなことをすれば、予期せぬ結果に直面する・・・(J・グラント)

インターネットのジレンマ
――セキュリティと相互運用性をいかに両立させるか

2011年2月号

ロバート・ネイク 
米外交問題評議会国際関係フェロー

世界に一つしか存在しない相互運用性のあるネットワークであるインターネットは、世界の経済成長を大きく促し、文化的な境界、国境線を越えてビジネスと思想を共有することを実現し、各国を結びつけてきた。だが、サイバー犯罪やサイバー空間の軍事化が、個々のネットワークだけでなく、インターネットの相互運用性と相互接続性そのものを脅かしている。現状を放置すれば、相互接続空間は、国が管理し、厳格な監督下に置かれる国別の閉鎖的なインターネットへと分断されていく危険がある。したがって、サイバー攻撃を阻止し、サイバー犯罪を防ぎ、国家アクターによる悪意のある活動を制御できるような国際メカニズムを新たに考案する必要があるが、インターネットを支えるプロトコルをもっと安全にするための再設計に投資するとともに、その試みが、インターネットに由来する開放的価値を温存・拡大するように十分に配慮しなければならない。

21世紀をリードするのは西洋か東洋か

2011年2月号

ティムール・クーラン
デューク大学政治学教授

「西洋」の起源は、紀元前9500年頃に人類が植物の栽培と動物の家畜化を試みるようになった、現在のイスラエル、シリア、トルコ、イラク、イランを内包する弓形の地域(「ヒリー・フランクス」)に存在する。一方「東洋」の歴史は紀元前7500年頃にまでさかのぼることができる。この時期に、現在の中国の黄河と揚子江の間の地域で、人々は植物の栽培と動物の家畜化を手がけるようになった。西洋は現在知られている最古の陶器が作られた紀元前1万4000年から541年頃まで、東洋に対する優位を持っていたが、急速な進歩を遂げた東洋が1100年までには西洋を抜き去り、優位を手にする。やがてそのギャップは縮まり、1773年頃に西洋が再び東洋を追い抜き、現在に至るまでその優位を維持している。・・・現在のトレンドを基に、おそらく2103年までに東洋が再び西洋を逆転するとみなす予測もある。しかし・・・・

CFRインタビュー
高齢化問題のもう一つのとらえ方

2011年2月号

マイケル・W・ホーディン CFR人口問題担当非常勤フェロー

2045年には、先進国だけでなく、世界的にみても、60歳を超える高齢者の数が子供の数を上回るようになると考えられている。先進国の一部では、高齢社会に向けた流れが10年ほど前から急速に加速している。CFRの人口問題の専門家、マイケル・W・ホーディンは、「21世紀は出生率の低下と平均寿命の延びに特徴づけられることになるが、各国はこのトレンドにまだ政策的に対応していない」と指摘する。同氏は、アルツハイマーなど、高齢化とともに発症率が高くなり、多くの社会コストをともなう病気への医療対策をとるとともに、健康な高齢者が、これまでの労働年齢を超えて働けるように、教育、スキルその他の環境整備を行う必要があると指摘する。実際、「このまま社会政策、社会保障政策、医療政策を見直さずに、10~20年後にどのような事態に直面するかを考えれば、現在、われわれが直面している債務と赤字など取るに足らぬ問題」なのかもしれないと同氏は語った。
聞き手は、デボラ・ジェローム(Deputy Editor, www.cfr.org)

チュニジア革命とエジプト、リビア、サウジアラビア

2011年2月号

エリオット・アブラムス 米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー

2010年12月にチュニジアで起きた民衆デモは数週間に及び、2011年1月についに政権は崩壊し、ベンアリ大統領はサウジに亡命した。このチュニジアでの展開が北アフリカ他の独裁国家でも民衆蜂起を誘発するのではないかといまや広く考えられている。中東問題の専門家であるエリオット・アブラムスは、「民衆蜂起の高まりを前に、チュニジアの軍隊は組織としての生き残りを重視し、ベンアリと彼の家族のために、数百人の市民を殺害すれば、軍に未来はないと判断し、これが、民衆が作り出した革命の流れを加速した」と指摘する。つまり、「他の中東の独裁国家でも、かりに民衆運動が起き、軍隊が独裁者の鎮圧命令を拒絶すれば、同じような展開になる」と語った同氏は、似たような展開になる可能性を秘めているのが、いずれも権力継承のタイミングにある「リビアとエジプトだ」と指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)

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