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に関する論文

CFRミーティング
財政赤字へのリスク認識が変化しない限り、資金は動かない
――アラン・グリーンスパンとの対話

2010年10月号

スピーカー
アラン・グリーンスパン 前FRB議長
プレサイダー
モティマー・ザッカーマン U・S・ニュース&ワールドリポート理事長

雇用は伸びていないが、企業収益は大幅に改善している。これは生産性の上昇によって単位あたり生産コストが減少していることで説明できる。だが、それが、固定資産投資へとつながっていない。私の試算では4000億ドルの投資が手控えられている。・・・・中央銀行が大規模な資金を金融システムに注入するが、そこから資金が動こうとしない。ケインズは、1936年にこの現象を「流動性の罠」という言葉で表現した。この現象は、アメリカだけでなく、他の先進国にも共通してみられる。リスクに対する心理や姿勢が変化しない限り、資金は動かないだろう。・・・大規模な財政赤字が資本投資をクラウドアウトしている。財政赤字の規模が、資本投資のレベル、特に、固定投資、非流動性資産への投資を左右している(抑え込んでいる)。・・・・日本問題も考えなければならない。いずれ、経常黒字は赤字へと転じ、日本は国際市場から資金を調達しなければならなくなる。・・・

ロシアの「内なる外国」北カフカスの混迷
―― 終わりなきロシアの内戦

2010年10月号

チャールズ・キング ジョージタウン大学教授(国際関係論)
ラジャン・メノン リーハイ大学教授(国際関係論)

ロシアにおける政治暴力の震源地帯、北カフカス。この地域の混迷にどう対処していくべきか、モスクワは頭を悩ませている。攻撃と報復の連鎖が止まないのは、この地域に流れ込んでいるイスラム過激派のせいなのか、ナショナリズムの高揚が過激な行動を誘発しているのか、それとも、北カフカスの人々がロシアに対して抱く反発が原因なのか。だが、北カフカスをめぐる問題の中枢は、ロシア連邦内でのこの地域の共和国の位置づけられ方にある。北カフカスにおけるテロを一定レベルに抑え込もうとしつつも、モスクワは、この地域で治安と安定を確立できなくても、ロシア人の多くが惨劇に巻き込まれなければ、政治的ダメージは最低限に抑え込めると計算している。現地の展開は現地に委ね、ロシアの有権者がカフカス問題を忘れてくれることを願うこと。これが、モスクワの現在の戦略だ。ロシア政府が現地に代理人、総督を送り込み、力による秩序維持路線をとり続ける限り、この地域は、ツァーリ時代のような「厄介でエキゾチックな帝国の周辺地域」へと回帰していくことになる。

GDPは万能ではない
だが、代替経済指標はあるのか?

2010年10月号

ロヤ・ウォルバーソン
CFR.org Staff Writer

政府は予算を決めるために、中央銀行は金融政策の決定に、金融機関は経済活動を判断するために、そして企業は今後の経済を予測して、生産、投資、雇用の概要を決めるために国内総生産(GDP)を主要な指標として用いてきた。第二次世界大戦後に銀行の取り付け騒ぎ、金融パニック、恐慌が起きる頻度が減少したのは、包括的で正確な経済データがタイミングよくGDPとして提供されるようになったことが一つの理由だ。しかし、GDPでは、経済活動が環境の持続可能性に与える影響などの長期的要因は考慮されないし、所得格差もカウントされない。したがって、GDP成長ばかりを追い求めれば、環境悪化、所得格差の問題が深刻化する可能性があるし、GDPが増大するだけでは、必ずしも人々の幸福感は高まらないとする理論も登場している。GDPは万能ではない。だがGDPをいかに改善すべきか、あるいは、他のアプローチに置き換えるかについて、エコノミストの間にコンセンサスはない。

ワシントンが中東和平プロセスを前進させたいのなら、まず、いかようにも交渉を混乱させる手立てをもつハマスの問題に取り組む必要がある。イスラエルの安全保障を脅かし、パレスチナの政治を左右するという点では、ハマスは実に数多くの選択肢を持っている。したがって、ガザ包囲網を緩和させ、ハマスとの停戦合意の制度化を交渉しない限り、中東和平プロセスはいずれ破綻し、再び戦争が起きて、イスラエルはガザを占領せざるを得なくなる。このジレンマを解く上で注目すべきは、いまやハマスはガザをうまく統治しなければならず、ガザ住民の生活に対して責任を負っていることだ。つまり、ハマスはもう単なる抵抗組織として活動するわけにはいかないのだ。ハマスがイスラエルとの停戦合意の制度化交渉に応じれば、今後、ファタハによるイスラエル交渉路線にも反対できなくなる。ハマスとの交渉は、この意味において、イスラエルとの交渉を成功させることで得られる政治的正統性を必要としているファタハにとっても政治的追い風を作りだす。

1990年代に日本の企業利益、公益、個人の利益は大きな食い違いを見せ始め、それまでの経済・社会システムはもはや非効率的で現実と符合しないものと考えられるようになった。企業利益、公益、個人の利益をうまく重ね合わせた日本株式会社はここに崩壊し、90年代以降、企業は利益を求めて国内投資よりも外国投資を重視するようになる。そして、いまや、高齢社会と社会保障支出の増大、巨額の財政赤字、グローバル・インバランスの調整プロセスとしての円高によって日本はさらに追い込まれ、しかも、日本経済は金利ゼロでも消費者も企業も投資をしない「流動性の罠」にはまっているかにみえる。経済・貿易の基盤である国際秩序の安定を支える日米の同盟関係も大きく揺らいでる。もはや政界再編や状況対応策では問題解決はおろか、先送りさえできないだろう。必要とされているのは、グローバル世界の現実を踏まえた上で公益と企業・個人の利益を確保できるような制度改革、新たな制度設計ではないか。日本というシステムの改革を求めて声を上げるか、それともシステムから退出するか。問われているものは非常に大きい。

HIV・エイズ対策優先か、
他の援助との バランスをとるか、それが問題だ

2010年9月号

プリンストン・N・ライマン 元駐ナイジェリア米国大使
スティーブン・B・ウィテルズ 米外交問題評議会(CFR)リサーチフェロー

2005年、G8はアフリカのHIV感染者全員にARV(抗レトロウイルス薬)を投与することにコミットする宣言を発表した。だが、感染者数が犠牲者数を上回る限り、ARV投与が必要になる人々の数は劇的に増えていくし、しかも、ARV投与は一生続けなければならない。これは、主にアフリカにいる数百万人のHIV感染者の生死が、財政赤字に苦しむ先進諸国、とくに米議会が援助予算を認めるかどうかに直接的に左右されるようになることを意味する。HIV対策が他の疾病や開発援助用の予算を奪い取っている部分があるだけに、優先的に扱われるHIV感染者へのアフリカでの反発が高まる危険もある。状況を整理しない限り、優れた人道主義的構想が、予期せぬ問題を招き入れる恐れがある。

Review Essay
世界的水資源不足の時代へ
―― ペットボトル飲料水は何を意味するか

2010年9月号 

ジェームズ・E・ニッカム
国際水資源協会事務局長

数多くの湖や川が消滅しつつあるし、現存する川や湖についても水質が悪化している。地下水資源も濫用や汚染のリスクにさらされている。水資源の危機はいまそこにある脅威だ。問われているのは「誰がどのように」貴重な水資源を利用するかだ。世界で消費される水の70%は農業用水として用いられており、これらが生産的に消費されることはほとんどない。一方、経済機能と人口が都市部に集中し、工業用水と生活用水の需要が増えるにつれて、水の安定供給を求める都市部からの圧力が高まりつつある。一方、河川デルタのエコシステムの維持など、環境保全のために手を付けるべきではない水資源もある。ペットボトルの見直しや処理された下水の再利用という選択肢を含めて、希少な水資源をいかにうまく管理すべきなのか。効率的水資源の管理に向いているのは市場メカニズムなのか、それとも官民の協調なのか。世界の水資源の問題は、人口動態、エネルギー、環境など世界のあらゆる問題と分かち難く結びついていること考慮して、水資源の包括的管理を考えるべきタイミングにある。

対イラン制裁ではウラン濃縮を阻止できない理由

2010年9月号

ホセイン・G・アスカリ ジョージ・ワシントン大学教授

イラン経済は、政府の経済運営が根本的に間違っているために破綻途上にあるが、核開発路線を止めさせようといくら経済制裁を試みても、イランの民衆はウラン濃縮路線を支持しているし、政府の補助金政策に依存している。したがって、民衆の怒りや不満が核開発を試みる政府に向けられることはあり得ない。そもそも、経済制裁でイランを締め付けるのは無理がある。何を経済制裁の対象にしようが、世界が市場経済体制のもとにある以上、需要があれば、それを満たそうとする流れが生じるのは避けられないからだ。これまでもイランは、ウラン濃縮やミサイル開発に必要な機材を闇市場から調達してきたし、最近でも、ロシアから洗練された対空防衛システムを輸入している。・・・決定的な効果を持つ制裁とは、イランの中央銀行をターゲットにすることだ。中央銀行に対する金融制裁は、金融領域における「核兵器」並の破壊力を持っている。しかし、アメリカ政府には、そう決断する政治的意思がない。

イスラエルが近くヒズボラを攻撃し、第3次レバノン戦争が起きる危険がある。ヒズボラが保有するミサイルの備蓄規模が大きくなり、その攻撃精度も高まっている。しかも、攻撃精度の高い長距離ミサイルをシリアから入手し、地対空ミサイルの能力を向上させている可能性もある。これら三つの要因が伴う戦略バランスの変化ゆえに、イスラエルは自国の安全保障が脅威にさらされていると判断するかもしれないからだ。もっとも可能性が高いのは、イスラエルが、ヒズボラの長距離ミサイルを搭載した移動用コンボイ、レバノンにあるロケットやミサイルの兵器庫を攻撃することだ。国際社会はこの現実にどう対処すべきなのか。ヒズボラのパトロンと言われるシリアとイランはどう動くのか。

ホノルル、ハーバード、ハイドパーク
―― バラク・オバマの政治的変遷

2010年8月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会アメリカ外交担当シニア・フェロー

アメリカの教育システムは人を故郷から遠ざけるようにできている。その狙いは青年をアイオワ州から連れ出すだけでなく、アイオワ州を青年の心の中から追い出すことにある。だが、アメリカで教育を受けて政治の世界を志す者は、このプロセスを逆戻りしなければならない。・・・クリントンはアーカンソー州で、どうしたら現地の人々と心を通わせることができるのか、何を話せばいいのか、そして何を話してはいけないのかを学んだが、ホノルル、ケンブリッジ、シカゴでの経験から、オバマがこれらを学ぶのは無理があった。ニューイングランドの改革主義思想の洗礼を受けているオバマが人種問題を超えた候補者となるには、まず人種問題を正面から受け止め、黒人の文化的背景を身につける必要があったし、ニューイングランド思想に反発するポピュリストにも対処していく必要があった。・・・

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