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に関する論文

軍事力を例外とすれば、今後、アメリカの文化も経済も21世紀初頭のようなパワーを失い、世界的な優位を保つことはないだろう。そして、今後の国家間政治においてもっとも重要な要因は、アジアが世界舞台への復活を続けていることだ。だが、中国がアメリカをアジアから締め出せるはずはない。アメリカが古代ローマのように内側から朽ち果てていったり、中国を含む国家に取って代わられたりすることはあり得ない。アメリカにとって重要なのは、移民への開放性を維持し、国内の中・高等教育を改革し、債務問題への対策をとり、制度と価値の多くを共有するヨーロッパ、日本との連帯を強化していくことだ。21世紀のスマートパワーのストーリーは、パワーを最大化することでも、覇権を維持することでもない。それは、パワーが拡散し、その他が台頭する環境のなかで、いかに自国のパワーリソースを優れた戦略に結びつけるか、その方法を見いだすことだ。

ロシアの政治・経済を支配するシロヴィキの実態
―― 連邦保安庁というロシアの新エリート層

2010年12月号

アンドレイ・ソルダトフ Agenture.Ruの共同設立者
アイリーナ・ボローガン Agenture.Ruの共同設立者

ソビエト時代の国家保安委員会(KGB)は非常に大きな力を持つ組織だったが、それでも政治体制の枠内に置かれ、共産党がKGBをあらゆるレベルで監視していた。だが、KGBとは違って、今日のFSB(連邦保安庁)は、外からの監督も干渉も受けない。プーチン時代に入ってから2年後には、FSBはソビエト時代のKGBよりもパワフルで恐れられる存在となり、政治、外交、経済領域での大きな権限から利益を引き出していた。これは、かつてのKGBのオフィサーだったプーチンが、信頼できるのはFSBだけだと考え、この10年間で、国家機関、国営企業の数多くの要職にFSBの人材を任命した結果だった。メドベージェフ大統領が本気でロシアを近代国家に作り替えるつもりなら、まったく制御されていないFSBではなく、国の安全の擁護者を新たに作り上げる必要がある。

インターネットと相互接続権力の台頭

2010年12月号

エリック・シュミット グーグル最高経営責任者
ジャレッド・コーエン グーグル・アイデアズ・ディレクター

インターネットの登場で、政府の力を弱め、市民の力を強めるバーチャル・コミュニティー(相互接続権力)が誕生し、人々を結びつけるコネクションテクノロジーが、世界各国の社会を変化させている。だが、この流れは、世界中の民衆と政府に困難な新課題を突きつけることになる。低開発社会ではよりオープンで透明性の高い社会を実現するように求める民衆の圧力が作りだされ、政治的緊張を高めるだろう。一方で政府も反政府勢力を封じ込める新たな技術ツールを手に入れることになり、より閉鎖的で抑圧的な社会が出現するかもしれない。民主国家政府はこの機会を見逃さずに連帯する義務があるし、変革をもたらす原動力である企業や非政府組織をプレイヤーとして尊重しなければならない。パワーを分かち合う新時代では、政府といえども、自分だけでは物事をすすめていくことはできないのだから。

CFRインタビュー
P・ムシャラフが語る政界復帰

2010年12月号

スピーカー
パルベーズ・ムシャラフ 前パキスタン大統領
プレイサイダー
デボラ・S・アモス ナショナル・パブリック・ラジオ、外報コレスポンデント

パキスタンの民衆は現在の政府に大きな不満を持っている。そして、現在のパキスタン政府はすでに気力を失っている。現在のパキスタンが破綻国家同然の状態に陥っているため・・・かつて同様に、軍部に立ち上がることを求める人々もいる。だが、私は政権の打倒と移行は、あくまで平和的で憲法を踏まえたものでなければならないと考えている。そこに、軍部の役割はない。・・・私は政治家だ。新しい政党も立ち上げた。私の帰国を促す大量のメッセージを受けとっている。・・・この8カ月間でフェースブックのフォロワーは35万に達した。帰国すれば、かなりの支持を得られると思う。リスクはあるが、私はこのチャンスに賭けようと思っている。(P・ムシャラフ)

アフリカの農業革命が世界の食糧危機を救う

2010年12月号

ロジャー・サロー シカゴ国際問題評議会シニアフェロー

現在、地球上のすべての人に提供できるだけの食糧が生産されているが、それでも10億人が飢えている。世界の食糧流通システムに欠陥があるからだ。しかも、需要は増大し続けている。現状で、人口増大分の需要を満たすとともに、食糧を手にできず、空腹に苦しむ人々に食糧を行き渡らせるには、世界の食糧生産を70~100%増やす必要がある。果たして食糧生産の拡大、流通の改善は世界のどこで可能なのか。その答えは、これまで世界からの食糧支援に依存してきたアフリカだ。事実、農業生産に残された最後のフロンティアとして、アフリカに大きな注目が集まっている。これからの数十年間に世界の食糧生産を大幅に増やし、貧困国の飢えを削減しつつ、新興国の需要の高まりを満たしていくための鍵を握るのが、アフリカでの緑の革命だ。

先進国だけではない、新興国の少子化で世界経済の成長は減速する

2010年11月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所政治経済学者

20世紀の人口増大が公衆衛生の拡大・向上によってもたらされたとすれば、21世紀を特徴付けるトレンドは出生率の劇的な低下になるだろう。先進国社会が高齢化し、高齢社会の重荷が、縮小する一方の現役労働世代にのしかかっていくことは大きな問題として認識されている。だが、あまり認識されていないのが、今後の世界経済の成長を担っていくと考えられる新興経済諸国の人口問題、特に若年労働力人口の減少だ。バラ色の未来を手にしているかにみえる中国も、今後20年間で若年労働力人口は30%、数で言えば1億人減少すると予測されている。これは少子化に苦しむ日本の若年労働力人口の減少率さえも上回っている。一方、若い労働力人口が目にみえて増えるのはサハラ砂漠以南のアフリカだけだ。今後、世界経済が危機を完全に脱したとしても、今後の成長を担うと考えられている新興国も労働力人口の高齢化問題に足をとられるとすれば、世界は生活レベル向上への期待全般を引き下げざるを得なくなるかもしれない。問題を解く鍵は、教育と公衆衛生を通じて、いかに人的資源の質を高め、知識生産と技術革新を実現していけるかにある。

赤字と債務がアメリカのソフトパワーを脅かす
―― アメリカがギリシャ化するのを避けるには

2010年11月号

ロジャー・アルトマン
元米財務副長官
リチャード・ハース
米外交問題評議会会長

アメリカの対GDP比債務残高は2015年には100%に達する恐れがある。これは、アメリカの債務が現在のギリシャやイタリアと同じ債務レベルになることを意味する。政府が赤字・債務削減プログラムを導入しない限り、金融市場にペナルティを課されるのは避けられなくなる。現状を放置すれば、緊縮財政を余儀なくされ、国防予算も削減対象にされる。アメリカの市場経済資本主義モデルの魅力も廃れ、中国流の権威主義経済モデルがますます大きな注目を集め、世界はますます無極化していく。アメリカ人の生活レベルだけでなく、アメリカの外交、対外路線、今後の国際関係にも非常に深刻な悪影響が出る。こうした甚大な帰結を回避するには、まず、財政上の歳入と支出のバランスをとってプライマリーバランスを図る必要がある。アメリカ市民と人々が選んだ議員たちが、この国の借り入れ中毒問題の解決を先送りし続ければ、アメリカは非常に大きな危険にさらされることになる。

ポスト鄧小平改革が促す中国の新対外戦略
―― 中国は新たな国際ルールの確立を目指す

2010年11月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会アジア担当ディレクター

経済成長と政治的安定を重視するという点では、中国政府はこの30年にわたって驚くほど一貫した立場を貫いてきた。変化したのは、その目的を実現するために何が必要かという認識のほうだ。この観点から、今や中国は自国に有利なように、グローバルな規範を作り替えたいと考えている。鄧小平の改革路線を経た次なる改革に向けた国内の必要性を満たしてくには、外部環境を作り替えるための対外路線が不可欠だと判断している。責任ある利害共有者という概念はもう忘れたほうがよい。国際社会のゲームルールそのものを書き換えたいと望む中国は、国際機関でのより大きな影響力を確保することを模索し、軍事力を増強し、国内での技術革新を排他的に試みている。この目的からグローバルな広報戦略も開始している。世界各国は、ポスト鄧小平革命がどのようなものであるかを理解し、その世界的な衝撃を想定し、備える必要がある。

CFRミーティング
短期的回復と持続的成長のバランスをどこに求めるか
 ――景気刺激策と財政赤字の間

2010年11月号

スピーカー
ヤコブ・A・フレンケル JPモルガン・チェース・インターナショナル会長
ステフェン・S・ローチ モルガン・スタンレー・アジア会長
司会
セバスチャン・マラビー CFR地政経済学研究センター所長

いま景気刺激策をやめてしまえば景気はますます悪くなるが、さらに刺激策を実施すれば政府債務の問題はさらに悪化してしまう。この問題を扱うには2つの側面での精密さが要求される。バランス(構成)とタイミングだ。・・・景気対策が期待していたほど効果を発揮しないのは、対策が終了した後の経済成長を支えるような環境整備が(政治的に)放置されることが多いからだ。(Y・フレンケル)<br>

「さらに数千億ドルの財政出動をします。出口戦略については後から考えます」では、あまりにも分別がなさすぎる。日本のように低成長が続き、現在すでに積み上がっている財政赤字を均衡へと向かわせるような税収増を期待できなくなれば、どうしようもなくなる。(S・ローチ)

ペンタゴンの新サイバー戦略
―― なぜアメリカはサイバー軍を立ち上げたか

2010年10月号

ウィリアム・J・リン三世 米国防副長官

いまやアメリカ政府のデジタル・インフラは、あらゆる敵対勢力に対する圧倒的な優位を確立している。だが、その優位がコンピュータ・ネットワークに依存しているために、一方で脆弱性からも逃れられない。相手に攻撃の意図さえあれば、わずか数十人のコンピュータ・プログラマー集団でも、アメリカのグローバルな後方支援ネットワークに脅威を与え、作戦計画を盗み出し、情報収集能力を攪乱し、兵器の輸送を妨害できる。このポテンシャルを理解している諸外国の軍部はサイバースペースでの攻撃能力を整備しており、100を越える外国情報機関がアメリカのネットワークへの侵入を試みている。なかにはアメリカの情報インフラの一部を混乱させる能力をすでに獲得している外国政府機関もある。・・・アメリカは新たにサイバー軍を創設し、各軍を横断的に網羅するサイバー防衛作戦を立ち上げ、・・・国土安全保障省と協同で政府ネットワークと重要インフラの防衛体制を構築していく。これは、友好関係にある同盟国とも連携してサイバー防衛体制を国際的に広げていく構想だ。

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