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に関する論文

ロシアの「死にゆく社会」
―― 想定外の人口減少はロシアをどう変えるか

2011年12月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所議長

この20年間、ロシアでは、戦時でもないのに人口が減少するという極めて異例の現象が続いている。総人口は減り、死者の数が増え、人的資源が危険なまでに損なわれている。都市化が進んだ教育水準の高い社会で、しかも平時において、なぜこれほど死亡率が高いのか、その理由は謎に包まれている。このままでは、人口の減少がロシアの経済と軍事力を大きく損なうのは避けられない。問題は、ロシア政府が人口減少トレンズを認識しつつも、危機の深刻さを過小評価し、対策の効果を過大評価していることだ。人口減によって、モスクワは世界経済のパイに占める比率が小さくなることを覚悟しておくべきだし、すでにロシアの軍事力、特に兵力面で大きな制約が作り出されている。自信を失ったモスクワはいずれ無謀な対外行動をとるようになるかもしれない。兵力の低下と軍事技術の衰退に直面したロシア軍の高官たちが、核兵器使用の敷居を低くする恐れは十分ある。・・・

ユーロゾーンの再構築を
―― インソルベンシーと資金不足を区別した危機対策を

2011年11月号

ヒューゴ・ディクソン ロイター・ブレイキングニュース  エディター

かつてギリシャやイタリアは「競争力が低下している」と感じたときは、自国通貨を切り下げたものだ。その手段を奪われたユーロ導入後も、周辺国はユーロ建て国債の発行を通じて資金を借り入れることで、増税策をとることなく高い歳出レベルを維持した。だが、その結果、周辺国の多くが莫大な債務の山を築き、いまや破綻の危機に直面するリスクは限りなく高まっている。ここからどうユーロゾーンを守り、立て直していくか。財政統合やユーロ共通債では、目の前にある火事は消せない。それよりも、インソルベンシーによる危機と資金不足による危機を区別することだ。インソルベンシー危機に直面しているギリシャ、アイルランド、ポルトガルに管理型ディフォルトを認める一方、資金不足に派生する危機に陥っているイタリアとスペインには改革の意思を確認した上で、資金を供給する。こうすれば、経済のバランスが回復され、ヨーロッパは世界経済において再び大きな役割を果たせるようになる。

エジプトの政治と外交を変えるムスリム同胞団の正体
―― その圧倒的存在感の秘密

2011年11月号

エリック・トラガー ワシントン近東政策研究所フェロー

ムスリム同胞団ほど、忠実な支援者ネットワークをもつ組織はエジプト内に存在しない。同胞団はエジプトでもっとも規律ある政治運動であり、支持者を動員するという点では圧倒的な統率力をもっている。秋に選挙を控えるエジプトにとってこれは何を意味するだろうか。ムバラク体制の打倒を目指してタハリール広場に集結した若者たちは、すでにほとんど見分けがつかない12前後の政治集団へと分裂している。旧体制の政権与党だった国民民主党(NDP)もすでに非合法とされている。つまり、2011年秋の選挙で、同胞団が議席の多くを独占する可能性は非常に高く、しかも、同胞団は組織的支援を提供することを条件に、独立系の特定候補の出馬を促し、取り込みを図っている。いずれ権力を手にするであろう同胞団はアメリカの宿敵であるイランとの関係を改善し、アメリカ外交の大きな成果であるエジプト・イスラエル間の和平合意(キャンプデービット合意)を葬り去りたいと考えている。その対策を考えるには、先ず同胞団の本質を理解する必要がある。

ブロークン・コントラクト
―― 不平等と格差、そしてアメリカンドリームの終焉

2011年11月号

ジョージ・パッカー
ニューヨーカー誌スタッフライター

第二次世界大戦後のアメリカの経済的繁栄の恩恵は、人類の歴史のいかなる時期と比べても、より広範な社会層へと分配されていた。税制によって、個人が手にできる富には限界があり、多くの資金を次の世代に残せないように制度設計されていたために、極端な富裕階級が誕生することはあり得なかった。だが、1978年を境に流れは変化した。その後の30年にわたって、政治の主流派は、中産階級のための社会保障ツールを解体し、政府の権限を小さくしようと試みた。組織マネーと保守派はこの瞬間をとらえ、アメリカの富裕層への富の移転という流れを作り出した。実際、この30年にわたって、政府は一貫して富裕層を優遇する政策をとってきた。その結果、いまや、あらゆる問題が格差と不平等という病によって引き起こされ、民主主義のメカニズムまでもが抑え込まれつつある。

グローバル化した非感染性疾患

2011年11月号

Toni Johnson  Senior Staff Writer

これまで、心臓・血管系疾患、ガン、呼吸器疾患、糖尿病などの非感染性疾患(NCDs=慢性疾患)は、おもに先進諸国に特有な疾患だと考えられてきた。だが、データによると、3600万の途上国の人々がガンや心臓系疾患のようなNCDsで死亡している。「経済発展が進むと、一般的に感染症による死亡が減少し、NCDsによる死亡が増えていく。富裕国では感染症はおおむね管理されているし、NCDsによって機能障害を抱え込む人の数も減少している。対照的に、低所得・中所得諸国はNCDsが作り出す非常に大きな重荷に直面している」。栄養の十分でない食事、運動不足、アルコールの過剰摂取、タバコの喫煙がNCDsを引き起こす主要な要因だと考えられている。WHOの報告はNCDsが10%増大すれば、GDP(国内総生産)が0.5%低下すると指摘しており、米医学研究所(USIM)は2010年に、途上国における慢性疾患の経済コスト(損失)はGDPの7%に達すると報告している。

21世紀におけるサイバーテクノロジーは、かつての銃弾や爆弾同様に危険な兵器である。しかも、サイバー犯罪のための市場が誕生しつつあり、すでに地下の組織犯罪の世界では、(サイバー犯罪者が乗っ取り、自由に操れる多数のゾンビコンピュータで構成されるネットワーク)ボットネットのレンタルサービス、(サーバーを機能不全に追い込む)DoS攻撃のサービス提供価格さえもが決まっている。・・・政府系のネットワークだけでなく、民間のインフラも脅かされている。すでにシティバンク、ソニーのプレイステーションネットワーク、RSA、グーグル、NSDAQが被害にあっている。さらに、外国のネットワーク侵入者はこの数年で国防産業のネットワークから膨大な(テラバイトレベルの)データを盗み出している。3月に起きた一度の侵入で、2万4000ものファイルが国防企業のネットワークから盗み出されている。これらのネットワーク侵入で盗み出されたデータには、非常にセンシティブな情報データも含まれていた。・・・

ベルルスコーニ劇場の終わりとイタリアの未来

2011年11月号

ジャンニ・リオッタ ラ・スタンパ紙コラムニスト

ベルルスコーニにとどめを刺したのは、イタリアを率いるには彼が不適切であることを説いたエコノミスト誌のカバーストリーではなかった。その失策、オバマ大統領にどなったこと、イギリス女王の不興を買ったこと、あるいは、リビアのカダフィやロシアのプーチンとパーティをしたことの問題を問われたわけでも、アンゲラ・メルケル相手に「いないいないバー」をして彼女を驚かせたからでもない。彼は「自分は市場の申し子だ」と自負していたが、問題は、それが彼の政党、連帯相手、そして閣僚に富をもたらすだけの市場だったことだ。・・・結局、ベルルスコーニのイタリアは20年をかけて2兆6000億ドルもの債務の山を築いただけだった。モンティと欧州中央銀行(ECB)総裁に最近就任したマリオ・ドラギは今のところイタリアの英雄だが、明日には、ロビー団体、既得権益層、そして組合の要求を粉砕する戦士にならなければならない。この闘いに敗れれば、ドイツの植民地になるのでない限り、イタリアはリラの時代に舞い戻ることになる。・・・

最終的にヨーロッパの主要銀行が破綻し、ギリシャがディフォルトに陥れば、リーマンブラザーズ破綻後のような状況が再現される。この場合、グローバル経済に大きな衝撃がはしり、堅調な成長を続けている新興国も無傷ではすまない。

米のバランスシートリセション、
欧州の債務危機、そして新興国経済
――ワールド・エコノミック・アップデート

2011年10月号

ルイス・アレキサンダー
前財務長官顧問、前シティグループ チーフエコノミスト
ブルース・C・カスマン
JPモルガン チーフエコノミスト
スティーブン・S・ローチ
モルガンスタンレー・アジア 非常勤会長

アメリカは、日本流のバランスシート・リセッションに陥っており、このプロセスは当面続くと考えられる。二番底に陥る危険は、一般に考えられている以上に大きい。・・・中国はイタリアやヨーロッパ経済を支援する用意があると示唆している。だが、ここにおけるリスクは中国が現状を流動性の危機であって、ソルベンシー(支払能力)の危機とはみていないことだ。(S・ローチ)
EMUを一つに束ねていくつもりなら、ECBは債務を買い取るともに、ユーロの銀行システムを支えるために資金を投入しなければならない。これらの措置をとったとしても、危機を封じ込められるかどうかわからない。・・・ギリシャへの追加支援が認められたのは、ギリシャ国内で政治的立場をまとめるのに3-6カ月はかかると判断されたからにすぎない。(B・カスマン)

(一年後)ギリシャがユーロ圏に残っている可能性は高いと思う。国債の再構成を経たギリシャが依然としてユーロのメンバーであるという未来を想像するのはそれほど難しくはない。だが、そのためには、ギリシャ国債を引き受けているヨーロッパの銀行への支援のメカニズムが必要になる。(L・アレキサンダー)

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