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に関する論文

誇張された大国、中国の実像
―― 持続的成長はあり得ない

2011年10月号

サルバトーレ・バボネス
シドニー大学上級講師(社会学・社会政策)

「これまでのようなパフォーマンスは期待できないが、中国経済が成長軌道から外れることはない」。多くのエコノミストはこう考えている。だが、状況は変化し、何かがうまくいかなくなるものだ。経済が成長するにつれて、中国がアジアや世界政治においてより大きな役割を担っていくのは間違いない。しかし、おそらくはそう遠くない将来に、中国の成長率もスローダウンし、かつて高成長を遂げた諸国同様に、成長率は低下していく。当然、アジアでも、世界においても中国が支配的優位を確立することなどあり得ない。専門家は、世界が中国語を学ばなければならないような「アメリカ後の世界」に思いをめぐらすことに興じている。だが、現実的に考えて、21世紀にそのようなことが起こるはずはない。いまや、巨大ながらも普通の国として中国に接し始めるタイミングだろう。「中国は重要な国だが、それほどパワフルなグローバルプレイヤーではない」

エジプトの民主化を左右する軍最高評議会

2011年10月号

ジェフ・マルティニ
ランド研究所プロジェクト・アソシエート
ジュリー・テイラー
ランド研究所ポリティカル・サイエンティスト

エジプト軍が「革命には介入しない」と宣言し、ムバラクを辞任に追い込んだことは、多くのエジプト人を驚かせた。だがこれは、軍高官たちが、軍の経済利益を軽視するようになったムバラク体制への反発を強め、息子による権力継承の可能性に危機感を募らせていたからだ。ポスト・ムバラクのエジプトで現在統治を担っている軍最高評議会は、社会の安定だけでなく、軍の特権的地位も守っていくことをすでに決意している。軍は選挙で選ばれた新政府に権限を移譲したいと望んでいるが、その意図は民主主義を実現することよりも、新体制においても自分たちの特権を維持していくことにある。将軍たちの目的は、真に開放的な代議政治ではなく、軍が外交・安保政策で最終的決定権を持ち、文民統制を回避することにあるようだ。

メルトダウンの文化的背景
―― 閉鎖的原子力文化とチェルノブイリ事故
(1993年発表論文)

2011年9月号

セルゲイ・P・カピッツァ モスクワ物理工科大学

山登りであれ、原子力工学であれ、危険を伴う行動の安全性を左右するのは人的ファクターだ。原子力施設の概念構築、設計、建設、稼働に至るまで、それに携わる人間の姿勢を考慮に入れなければならない。だが、安全の絶対的な前提であるプロフェッショナリズムの文化が、全般的にも技術領域においても、ソビエトの原子力産業には欠落していた。安全に関する指令や手続きは存在したが、ソビエトの原子力プログラムでは、この人的な側面における安全基準が満たされていなかった。これが、チェルノブイリ事故の文化的背景だった。

漂流する日本の政治と日米同盟

2011年9月号

エリック・ヘジンボサム ランド研究所シニア・ポリティカルサイエンティスト
エレイ・ラトナー ランド研究所アソシエート・ポリティカルサイエンティスト
リチャード・サミュエルズ マサチューセッツ工科大学教授

もはや日米関係が未来を明確に共有しているとは言い難い。改革によって(官僚主導から政治主導への)制度上の明確な権限移譲が実現するどころか、むしろ政治家の抗争、政治家と官僚の抗争が誘発され、その結果、権力の空白が生じ、政府の政策決定能力が損なわれている。これが日米関係、日米同盟にとって何を意味するかを考えなければならない。アメリカは日本に国益を有しているし、日本が困難な状況に陥った場合には、手を差し伸べる道義的な責任も負っている。だが、日本の先行きは依然として不透明で、しかも、いまや国防予算削減の時代にある。ワシントンはアジアにおける重要な目標を定義し、それに応じて資源を振り分けていくことを考えるべきだ。日米同盟を守っていくのが最優先課題でなければならないが、ワシントンは他の地域的なパートナーとより緊密に協力していく態勢を整えておくべきだろう。

CFRインタビュー
紛争介入戦略の終わり
―― 予算削減に応じた対外コミットメントの見直しを

2011年9月号

リチャード・ベッツ 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

おそらく国防予算に大なたが振るわれるのは避けられない。われわれの軍事的なコミットメント、能力、資源、戦略をバランスのとれたものにしなければならない。予算を削減しなければならないのなら、バランスをとるためにコミットメントを引き下げるしかない。アメリカは常設軍を持っていなかった第二次世界大戦前の状況へ回帰していくべきだろう。訓練、研究・開発、組織構造、メンテナンスを重視し、状況が変わり、世界情勢が悪化した場合には、戦力増強のベースになるこれらの軍事インフラを用いて、戦力を迅速に動員していくやり方に切り替えていくべきだ。特に、高度な先端技術を用いた戦闘機、戦艦、大規模な兵器システムの導入には慎重でなければならない。われわれの軍事技術領域における優位を可能な限り維持するために、研究・開発は続けるべきだが、国際情勢が悪化し、先端兵器が必要になるまでは、そうした兵器を大規模に配備すべきではないだろう。

新しい朝鮮半島を思い描く
―― 毅然たる態度で南北間の信頼を形作る

2011年9月号

朴槿恵(パク・クネ)
韓国ハンナラ党前党首

北朝鮮と韓国は互いに相手を信頼していない。これが、朝鮮半島における真の和解を長く阻んできた。残されていたわずかな信頼さえも、2010年に北朝鮮が起こした一連の事件によって消失してしまった。・・・・・・とはいえ、「片手では拍手できない」ということわざが韓国にある。南北間の平和も双方が努力しなければ実現しない。この半世紀以上にわたって、北朝鮮は国際的規範を無視し続けてきた。もちろん、平壌の挑発行動にはソウルは毅然と対処しなければならないが、一方で、両国間の関係改善の新たな機会には開放的な態度をとるべきだろう。いまや南北間の信頼は地に落ちているが、逆に言えば、信頼関係を再構築していく機会を手にしていると考えることもできる。朝鮮半島を紛争ゾーンから信頼のゾーンへと変えるために、韓国は信頼構築政策(trustpolitik)をとり、グローバルな規範に基づき、ともに信頼できる期待を育んでいかなければならない。

食糧危機、ドル安、金融危機に翻弄される人道援助
―― なぜ支援がそれを必要としている人々に届かない

2011年9月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

飢饉がアフリカ東部を襲い、緊急食糧支援、人道支援が必要とされているにも関わらず、必要としている人々のもとに支援がうまく届いていない。理由は多岐にわたる。2002年と現在の価格を比較すると、米の国際価格は204%、小麦は164%、トウモロコシは260%上昇していることからも明らかなように、穀物価格が軒並み上昇している。しかも、援助が通常ドル建てで行われるために、昨今におけるドル価値の低下は、同じドルで調達できる穀物の量が小さくなっていることを意味する。さらに、人道的危機に対しては大規模な援助をしてきたイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランドなどは、国が破綻するのを避けるために対外援助を打ち切らざるを得ない状況に追い込まれている。しかも、武装勢力が人道支援活動にとって障害を作り出している。これらは、アフリカの角地域でかつてなく大規模な飢饉が起きているにも関わらず、食糧援助の対象にできる人々の数が大きく減少していることを意味する。問題は、こうした複合危機解決の糸口が見えないことだ。・・・

企業の知的財産を盗み出すサイバーセフトの衝撃

2011年9月号

ドミトリ・アルペロビッチ マカフィー脅威研究担当副社長

サイバー空間でのスパイ活動、そしてサイバーセフト(経済・金融情報の窃盗)がかつてない規模で行われている。膨大な経済情報や知的財産が企業から盗み出されて、ライバル国、あるいは潜在的敵国の経済にそのまま利用されている。この状況が、過去6年、あるいはそれ以上にわたって続いている。いまやその脅威は、国家レベルの経済繁栄を脅かすほどに大きくなっている。スパイ活動やサイバーセフトは経済のすべてのセクターで横行している。・・・現状を放置すれば、国の経済の存続を左右する深刻な脅威になり、経済全体が破壊されかねない。問題は、サイバースパイやサイバーセフトの被害にあっても、企業が事件の公表をためらっていることだ。

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