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に関する論文

ブロークン・コントラクト
―― 不平等と格差、そしてアメリカンドリームの終焉

2011年11月号

ジョージ・パッカー
ニューヨーカー誌スタッフライター

第二次世界大戦後のアメリカの経済的繁栄の恩恵は、人類の歴史のいかなる時期と比べても、より広範な社会層へと分配されていた。税制によって、個人が手にできる富には限界があり、多くの資金を次の世代に残せないように制度設計されていたために、極端な富裕階級が誕生することはあり得なかった。だが、1978年を境に流れは変化した。その後の30年にわたって、政治の主流派は、中産階級のための社会保障ツールを解体し、政府の権限を小さくしようと試みた。組織マネーと保守派はこの瞬間をとらえ、アメリカの富裕層への富の移転という流れを作り出した。実際、この30年にわたって、政府は一貫して富裕層を優遇する政策をとってきた。その結果、いまや、あらゆる問題が格差と不平等という病によって引き起こされ、民主主義のメカニズムまでもが抑え込まれつつある。

グローバル化した非感染性疾患

2011年11月号

Toni Johnson  Senior Staff Writer

これまで、心臓・血管系疾患、ガン、呼吸器疾患、糖尿病などの非感染性疾患(NCDs=慢性疾患)は、おもに先進諸国に特有な疾患だと考えられてきた。だが、データによると、3600万の途上国の人々がガンや心臓系疾患のようなNCDsで死亡している。「経済発展が進むと、一般的に感染症による死亡が減少し、NCDsによる死亡が増えていく。富裕国では感染症はおおむね管理されているし、NCDsによって機能障害を抱え込む人の数も減少している。対照的に、低所得・中所得諸国はNCDsが作り出す非常に大きな重荷に直面している」。栄養の十分でない食事、運動不足、アルコールの過剰摂取、タバコの喫煙がNCDsを引き起こす主要な要因だと考えられている。WHOの報告はNCDsが10%増大すれば、GDP(国内総生産)が0.5%低下すると指摘しており、米医学研究所(USIM)は2010年に、途上国における慢性疾患の経済コスト(損失)はGDPの7%に達すると報告している。

21世紀におけるサイバーテクノロジーは、かつての銃弾や爆弾同様に危険な兵器である。しかも、サイバー犯罪のための市場が誕生しつつあり、すでに地下の組織犯罪の世界では、(サイバー犯罪者が乗っ取り、自由に操れる多数のゾンビコンピュータで構成されるネットワーク)ボットネットのレンタルサービス、(サーバーを機能不全に追い込む)DoS攻撃のサービス提供価格さえもが決まっている。・・・政府系のネットワークだけでなく、民間のインフラも脅かされている。すでにシティバンク、ソニーのプレイステーションネットワーク、RSA、グーグル、NSDAQが被害にあっている。さらに、外国のネットワーク侵入者はこの数年で国防産業のネットワークから膨大な(テラバイトレベルの)データを盗み出している。3月に起きた一度の侵入で、2万4000ものファイルが国防企業のネットワークから盗み出されている。これらのネットワーク侵入で盗み出されたデータには、非常にセンシティブな情報データも含まれていた。・・・

ベルルスコーニ劇場の終わりとイタリアの未来

2011年11月号

ジャンニ・リオッタ ラ・スタンパ紙コラムニスト

ベルルスコーニにとどめを刺したのは、イタリアを率いるには彼が不適切であることを説いたエコノミスト誌のカバーストリーではなかった。その失策、オバマ大統領にどなったこと、イギリス女王の不興を買ったこと、あるいは、リビアのカダフィやロシアのプーチンとパーティをしたことの問題を問われたわけでも、アンゲラ・メルケル相手に「いないいないバー」をして彼女を驚かせたからでもない。彼は「自分は市場の申し子だ」と自負していたが、問題は、それが彼の政党、連帯相手、そして閣僚に富をもたらすだけの市場だったことだ。・・・結局、ベルルスコーニのイタリアは20年をかけて2兆6000億ドルもの債務の山を築いただけだった。モンティと欧州中央銀行(ECB)総裁に最近就任したマリオ・ドラギは今のところイタリアの英雄だが、明日には、ロビー団体、既得権益層、そして組合の要求を粉砕する戦士にならなければならない。この闘いに敗れれば、ドイツの植民地になるのでない限り、イタリアはリラの時代に舞い戻ることになる。・・・

最終的にヨーロッパの主要銀行が破綻し、ギリシャがディフォルトに陥れば、リーマンブラザーズ破綻後のような状況が再現される。この場合、グローバル経済に大きな衝撃がはしり、堅調な成長を続けている新興国も無傷ではすまない。

米のバランスシートリセション、
欧州の債務危機、そして新興国経済
――ワールド・エコノミック・アップデート

2011年10月号

ルイス・アレキサンダー
前財務長官顧問、前シティグループ チーフエコノミスト
ブルース・C・カスマン
JPモルガン チーフエコノミスト
スティーブン・S・ローチ
モルガンスタンレー・アジア 非常勤会長

アメリカは、日本流のバランスシート・リセッションに陥っており、このプロセスは当面続くと考えられる。二番底に陥る危険は、一般に考えられている以上に大きい。・・・中国はイタリアやヨーロッパ経済を支援する用意があると示唆している。だが、ここにおけるリスクは中国が現状を流動性の危機であって、ソルベンシー(支払能力)の危機とはみていないことだ。(S・ローチ)
EMUを一つに束ねていくつもりなら、ECBは債務を買い取るともに、ユーロの銀行システムを支えるために資金を投入しなければならない。これらの措置をとったとしても、危機を封じ込められるかどうかわからない。・・・ギリシャへの追加支援が認められたのは、ギリシャ国内で政治的立場をまとめるのに3-6カ月はかかると判断されたからにすぎない。(B・カスマン)

(一年後)ギリシャがユーロ圏に残っている可能性は高いと思う。国債の再構成を経たギリシャが依然としてユーロのメンバーであるという未来を想像するのはそれほど難しくはない。だが、そのためには、ギリシャ国債を引き受けているヨーロッパの銀行への支援のメカニズムが必要になる。(L・アレキサンダー)

経済覇権はアメリカから中国へ
――21世紀に再現されるスエズ危機

2011年10月号

アルビンド・サブラマニアン
ピーターソン国際経済研究所
シニアフェロー

1956年、アメリカはイギリスに対して「スエズ運河から撤退しない限り、金融支援を停止する」と迫り、イギリスはこれに屈して兵を引いた。ここにイギリスの覇権は完全に潰えた。当時のイギリス首相で「最後の、屈辱的な局面」の指揮をとったハロルド・マクミランは後に、「200年もすれば、あの時、われわれがどう感じたかをアメリカも思い知ることになるだろう」と語った。その日が、近い将来やってくるかもしれない。スエズ危機当時のイギリスは交渉上非常に弱い立場にあった。債務を抱え込み、経済が弱体化していただけでなく、そこに新たな経済パワーが台頭していた。現在のアメリカも同じだ。米経済は構造的な弱点を抱え込み、目に余る借金体質ゆえに外国からのファイナンスに依存せざるを得ない状況にあり、成長の見込みは乏しい。そして、侮れない経済ライバルも台頭している。マクミランが予測したよりも早く、そして現在人々が考えるよりも早く、アメリカは覇権の衰退という現実に直面することになるだろう。

Foreign Affairs Update
グリーンテクノロジーの将来
―― CCS技術への投資を

2011年10月号

ジュリオ・フリードマン ローレンス・リバモア研究所二酸化炭素管理プログラム責任者

グローバルレベルでも国家レベルでも、化石燃料による電力の生産と供給には変化がみられない。再生可能エネルギーの利用が増えているにもかかわらず、二酸化炭素排出量は急激に増大している。このような状況にあるにも関わらず、二酸化炭素を分離して、地球環境に悪影響を与えない安全な場所に封じ込め、大規模な気候変動を引き起こさずに化石燃料を利用できるようにするCCS技術はそれほど注目されていない。アメリカを含むOECD諸国の市民の多くは、二酸化炭素の回収・貯留技術(CCS)が何であるかについて、この技術で何ができ何ができないか、そして、それが環境上何を意味するかをほとんど理解していない。全面的に導入されれば、CCSは、世界が必要としている二酸化炭素排出削減量の25-50%を削減できるポテンシャルを秘めている。各国が二酸化炭素排出の削減に向けた力強いコミットメントからしだいに離れていくにつれて、CCSその他の重要なクリーンエネルギー技術の開発と実証研究が先送りされかねない状況にある。

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