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に関する論文

CFRミーティング
依然として安定化にはほど遠いユーロゾーン危機
――債務減免措置、自己資本比率強化、EFSFの拡充で
危機は本当に収束するか

2011年11月号

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会地政学研究センターディレクター
ベン・ステイル 米外交問題評議国際経済担当ディレクター

合意では債務減免が債権者(銀行)の「自発的意志に委ねられる」とされている。現実には、銀行が減免に合意しない可能性もある。・・・新聞のヘッドラインにある通り、50%の債務減免が実現するとすれば、むしろ、私にとっては驚きだ。・・・さらにヨーロッパの指導者は、2012年までに銀行の自己資本不足問題を解決したいと考えている。これは逆に言えば、今後8カ月間で市場がパニックに陥れば、それに対応する力はないと認めたのも同然だ。(S・マラビー)

指導者たちは、EFSF(欧州安定化基金)を増強したいと考えている。だが、これをどのように実現するかの具体策は示されていない。もっとも可能性が高いのは、EFSFがCDO(債務担保証券)に置き換えられていくことだ。だが、これは、CDOが不良資産化した、2008年のサブプライムローン危機をわれわれに想起させる。(B・ステイル)

CFRミーティング
政府債務の増大とユーロ危機

2011年12月号

アラン・グリーンスパン
前連邦準備制度理事会議長

ベアー・スターンズが救済されて以降、金融セクター全体が政府によって保証されているとみなされるようになった。・・・いまや官民の債務を明確に区別するのが難しくなってしまっている。かつては純然たる政府債務だったものと民間の債務の境界が曖昧になってしまった。・・・・ユーロシステムが今後どうなるかについては、私も楽観してはいない。・・・問題はヨーロッパの安定成長協定(SGP)が事実上崩壊していることにある。財政赤字をGDPの3%以内に、政府債務残高をGDPの60%以内に抑えるというヨーロッパのルールが無視されている。これを最初に破ったのはフランスとドイツだが、ペナルティは発動されず、協定は静かに葬り去られた。・・・ユーロ圏北部がギリシャ、ポルトガル、スペインその他に資金を注ぎ込んでいることそのものが問題だ。その資金はどのように計上されるか。ユーロ圏の債務として計上される。・・北部の国でこれが政治問題化している。

疾病の蔓延が中国経済を脅かす
―― 中国は「アジアの病人」なのか

2011年12月号

ヤンゾン・ファン 米外交問題評議会シニア・フェロー

経済成長ばかりを気に懸ける中国の指導者たちは、深刻な公衆衛生部門の問題を見落としている。毛沢東が築いた公衆衛生システムが1980年代初頭に崩壊して以降、政府が医療や公衆衛生に支出する対GDP比予算の比率は減少し続け、その結果、中国はHIV/AIDS、結核、ウイルス性肝炎などの病原体やウイルスの脅威だけでなく、非感染性疾患(慢性疾患)にもうまく対処できずにいる。問題は、中国政府が医療ケアの提供を、市民の権利としてではなく、市民に対するチャリティとみなしていることだ。しかも、中央・地方政府に対する評価が手堅い経済成長を実現できるかどうかで判断されるために、中国の官僚たち、特に地方の役人たちは医療ケアを強化・促進していくというインセンティブを持っていない。お粗末な医療の現状を放置すれば、中国の政治・経済の安定そのものが脅かされることになる。

Foreign Affairs Update
ヨーロッパの新しいドイツ問題
―― 指導国なきヨーロッパ経済の苦悩

2011年12月号

マティアス・マタイス アメリカン大学准教授
マーク・ブリス ブラウン大学教授

20世紀の多くの時期を通じて、「ドイツ問題」がヨーロッパのエリートたちを苦しめてきた。他のヨーロッパ諸国と比べて、ドイツが余りに強靱で、その経済パワーが大きすぎたからだ。こうして、NATOと欧州統合の枠組みのなかにドイツを取り込んでそのパワーを抑えていくことが戦後ヨーロッパの解決策とされた。だが、現在のドイツ問題とはドイツの弱さに派生している。ユーロ危機を引き起こしている要因は多岐にわたるが、実際には一つのルーツを共有している。それは、ドイツがヨーロッパにおける責任ある経済覇権国としての役割を果たさなかったことだ。かつてアメリカの歴史家C・キンドルバーガーは「1933年の世界経済会議ではさまざまな案が出されたが、リーダーシップを発揮できる立場にあった国の指導者が、国内の懸念に配慮するあまり、状況への傍観を決め込んでしまった」と当時の経済覇権国の姿勢を批判したが、これは、現在のドイツにそのままあてはまる。求められているのは、ルールメーカーではなく、指導者としての役目を果たすことだ。

CFR Interview
アメリカは変化するアジアの戦略環境にどう関わるか
――経済と安全保障のバランス

2011年12月号

エヴァン・フェイゲンバーム  米外交問題評議会アジア担当シニア・フェロー

アジア諸国の経済利益と安全保障利益が次第に衝突しつつある。安全保障領域ではアメリカが依然として重要な役割を果たしているが、経済領域ではいまや中国が地域的中枢を担い始めている。アジアの経済と安全保障の間に生じているこの不均衡が、これまでとは異なる戦略環境を作り出し、これがアメリカとアジア諸国の双方に大きな課題を作り出している。問題は、中国が愚かにもこれらの諸国を往々にして不安にさせる行動をとっていることだ。このために、アジア諸国は、経済的には中国に多くを依存しつつも、安全保障領域ではアメリカへの依存を高め、経済と安全保障のバランスをいかにとっていくかに苦慮している。一方、アメリカにとっての課題は、安全保障の後見役を果たしつつも、アジアにおける経済のゲームの中枢にいかにして身を置くかだ。交渉が続けられている環太平洋パートナーシップ(TPP)のような地域的貿易合意が重視されているのは、まさにこの理由からだ。・・・重要なポイントは、アジアの安全保障が安定していなければ、アメリカがそこから経済利益を引き出すこともできなくなり、そして、アメリカ抜きでは、アジアの安全保障が成立しないことだ。

CFR Interview
せめぎ合う米中とアジア諸国の立場

2011年12月号

サイモン・タイ シンガポール国際問題研究所(SIIA)理事長

いまやアジアの現実は大きく変化している。変貌を遂げたアジアは統合度を高め、中国の経済的役割が地域的に広く受け入れられている。だが、北朝鮮をあからさまに擁護する路線にはじまり、尖閣諸島、南シナ海の領有権問題にいたるまで、北京は外交的失策を重ね、ワシントンは「同盟国としてのアメリカの価値」を相手国に認識させるような戦略を表明することで、これに対処してきた。・・・ワシントンは、アジア太平洋関与戦略の中枢であるTPPのことを、アジアにおいて中国と影響力を競い合うための試金石とみなし、一方の北京はこれを「中国を除外してアメリカがアジア経済にエンゲージするための枠組み」と警戒している。アジア地域内でも中国が主導するFTA(自由貿易協定)に参加するか、それとも、TPPに参加してアメリカを重視するかという構図ができつつある。・・・

ロシアの「死にゆく社会」
―― 想定外の人口減少はロシアをどう変えるか

2011年12月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所議長

この20年間、ロシアでは、戦時でもないのに人口が減少するという極めて異例の現象が続いている。総人口は減り、死者の数が増え、人的資源が危険なまでに損なわれている。都市化が進んだ教育水準の高い社会で、しかも平時において、なぜこれほど死亡率が高いのか、その理由は謎に包まれている。このままでは、人口の減少がロシアの経済と軍事力を大きく損なうのは避けられない。問題は、ロシア政府が人口減少トレンズを認識しつつも、危機の深刻さを過小評価し、対策の効果を過大評価していることだ。人口減によって、モスクワは世界経済のパイに占める比率が小さくなることを覚悟しておくべきだし、すでにロシアの軍事力、特に兵力面で大きな制約が作り出されている。自信を失ったモスクワはいずれ無謀な対外行動をとるようになるかもしれない。兵力の低下と軍事技術の衰退に直面したロシア軍の高官たちが、核兵器使用の敷居を低くする恐れは十分ある。・・・

ユーロゾーンの再構築を
―― インソルベンシーと資金不足を区別した危機対策を

2011年11月号

ヒューゴ・ディクソン ロイター・ブレイキングニュース  エディター

かつてギリシャやイタリアは「競争力が低下している」と感じたときは、自国通貨を切り下げたものだ。その手段を奪われたユーロ導入後も、周辺国はユーロ建て国債の発行を通じて資金を借り入れることで、増税策をとることなく高い歳出レベルを維持した。だが、その結果、周辺国の多くが莫大な債務の山を築き、いまや破綻の危機に直面するリスクは限りなく高まっている。ここからどうユーロゾーンを守り、立て直していくか。財政統合やユーロ共通債では、目の前にある火事は消せない。それよりも、インソルベンシーによる危機と資金不足による危機を区別することだ。インソルベンシー危機に直面しているギリシャ、アイルランド、ポルトガルに管理型ディフォルトを認める一方、資金不足に派生する危機に陥っているイタリアとスペインには改革の意思を確認した上で、資金を供給する。こうすれば、経済のバランスが回復され、ヨーロッパは世界経済において再び大きな役割を果たせるようになる。

エジプトの政治と外交を変えるムスリム同胞団の正体
―― その圧倒的存在感の秘密

2011年11月号

エリック・トラガー ワシントン近東政策研究所フェロー

ムスリム同胞団ほど、忠実な支援者ネットワークをもつ組織はエジプト内に存在しない。同胞団はエジプトでもっとも規律ある政治運動であり、支持者を動員するという点では圧倒的な統率力をもっている。秋に選挙を控えるエジプトにとってこれは何を意味するだろうか。ムバラク体制の打倒を目指してタハリール広場に集結した若者たちは、すでにほとんど見分けがつかない12前後の政治集団へと分裂している。旧体制の政権与党だった国民民主党(NDP)もすでに非合法とされている。つまり、2011年秋の選挙で、同胞団が議席の多くを独占する可能性は非常に高く、しかも、同胞団は組織的支援を提供することを条件に、独立系の特定候補の出馬を促し、取り込みを図っている。いずれ権力を手にするであろう同胞団はアメリカの宿敵であるイランとの関係を改善し、アメリカ外交の大きな成果であるエジプト・イスラエル間の和平合意(キャンプデービット合意)を葬り去りたいと考えている。その対策を考えるには、先ず同胞団の本質を理解する必要がある。

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