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に関する論文

CFR Meeting
経済・貿易の世紀と伝統的外交の終わり
――TPP、知的所有権、NGO

2012年5月号

ロバート・ホーマッツ
米国務次官補(経済成長およびエネルギー・環境担当)
ティエリ・ド・モンブリアル
フランス国際関係研究所会長

かつて外交は各国の外交担当者の専権事項だったが、今日では、あらゆる政府省庁が外交を展開している。実質的に、すべての省庁は、国際経済領域に深く関与しており、いまや外交担当省庁のチャンネルを経由する必然性は消失しつつある。つまり、外交コミュニケーション、外交政策という概念そのものが変化している。・・・外交担当省庁の役目は、政府省庁の外交アジェンダの調整と優先順位を決め、それを全体的なパッケージに仕立てあげることへと変化している。統治スタイルが変化した結果、システムは大きく変化している。しかも、昨今における問題の多くはグローバル化している。だが、政治家は国内の有権者の意向にも配慮しなければならない。これが、世界に非常に大きなジレンマを作り出している。

教育と国家を考える

2012年5月号

◎スピーカー
ジョエル・I・クライン ニューズコーポレーション教育部門最高経営責任者
コンドリーザ・ライス 前米国務長官および国家安全保障問題担当大統領補佐官
◎プレサイダー
テリー・モーラン ABCニュースナイトライン アンカー

CFRインタビュー
中国からみた米大統領選挙

2012年5月号

賈慶国 北京大学国際関係学院副院長

「中国人の多くは、アジアシフトに象徴される米軍の戦略再編をシンボリックなもの、見せかけの行動としかみていない。たしかに250人規模の海兵隊をオーストラリアに送り込んだかもしれないが、現実には国防予算を削減している。・・・・大統領選挙中に中国がとかくやり玉に挙げられることを、中国人は理解している。そして実際には、アメリカが直面している問題のルーツのほとんどは米国内にある。アメリカ経済は多くの問題を抱え込んでおり、これを説明するためのスケープゴートを必要としており、たまたま中国が生け贄にされているだけだ。・・・・新大統領が中国への政策を大きく見直すことはない。すでに両国の関係が非常に密接で、その利益も融合しているからだ。新大統領が中国への政策を見直せば、アメリカの経済と国益に大きなダメージがでる」

漂流するアメリカ政治
―― 共和党穏健派の衰退と党派対立

2012年5月号

ライハン・サレーム 米シンクタンクe21政策アドバイザー

「ドグマ的、イデオロギー的な政党は、国の政治的・社会的な基本構造を破壊する恐れがある・・・イデオロギーに凝り固まった政策を掲げる政党は政府を行き詰らせて危機に陥れる」。右寄りへシフトした共和党を嘆いて、ミット・ロムニーの父で共和党穏健派だったジョージ・ロムニーはかつてこう警告した。そのドクマ的な保守主義を、自分の息子が受け入れ、アメリカ政治が極端な党派対立に陥っている現状を父ロムニーはどう思うだろうか。かつては豊かな発想力をもつ共和党穏健派が、共和党と民主党の妥協点を見出す役割を果たしてきた。だが、穏健派の消失とともに、その機能を現在の共和党は失っている。穏健派を失った共和党は「筋肉質の体はあっても頭を持たない」存在と化した。共和党保守政権は、有権者の費用負担を「小さな政府」レベルに抑える一方で、「大きな政府」を運営し、結局、財政破綻を招き入れてしまった。

軍との対決路線に転じたムスリム同胞団

2012年5月号

エリック・トラガー  ワシントン近東政策研究所フェロー

どんな理由であっても有罪宣告を受けた者が選挙に出馬することは認められておらず、法に照らせば、選挙管理委員会によるシャーテルの出馬失格は合理的な判断だった。・・・同胞団はこの展開を当初から予測していた。・・・

Foreign Affairs Update
バッシャール後のシリア
――破綻国家化を回避せよ

2012年5月号

ダニエル・バイマン ブルッキングス研究所サバン中東研究センター所長

バッシャール・アサドの命運はすでに尽きている。すでに専門家の多くは、バッシャール後にどのようなシリア政府が誕生するかを考え始めている。バッシャールが殺害されても、独裁政治の構造が残存すれば、軍事、経済上の要職にある彼の親族や側近達が彼に取って代わるだけの話だ。この場合、かつての側近たちは、反政府勢力と戦う一方で、内的な権力抗争を繰り広げることになる。一方、反体制派集団の多くは自由シリア軍(FSA)を自称しているが、そこに明確な指揮統制はない。現実には、さまざまな集団が地域的に政府軍に戦いを挑んでいるにすぎない。紛争が長期化すれば、戦いの構図は「スンニ派武装グループ」対「アラウィ派武装グループ」へと変化し、バッシャールが姿を消しても、紛争が長期化する恐れがある。すでに周辺国へと大量の難民が流出しており、反体制派はこれらのキャンプを反アサド闘争の拠点としている。当然、シリアの内戦が地域紛争へと拡大していく危険がある。最悪のシナリオは、こうした混迷のなかでシリアが破綻国家へと転落していくことだ。

ベビー・ギャップ
―― 出生率を向上させる方法はあるのか

2012年5月号

スティーブン・フィリップ・クレーマー 米国防産業大学教授

少子化によって課税できる労働人口が少なくなるにつれて、政府は困難な決定を下さざるを得なくなる。社会保障手当を切り捨てて引退年齢を引き上げるか、税率を大きく引き上げるしかなくなるからだ。さらに厄介なのは、労働人口が高齢化していくにつれて、経済成長を実現するのが難しくなっていくことだ。・・・低い出生率は、先進世界の福祉国家体制だけでなく、国の存続そのものを脅かすことになる・・・男女間の差別解消に真剣に取り組まず、女性のための適切な社会サービスの提供に熱心でなかったイタリアや日本のような国は出生率を上昇させられずにいる。これに対して、GDP(国内総生産)の約4%程度を、子育ての支援プログラムにあてているフランスやスウェーデンは出生率の低下を覆すことに何とか成功している。出産奨励プログラムには大きなコストがかかるし、伝統的な家族の価値を支持する人々の怒りを買う恐れもある。だが、低出生率の罠にはまってしまえば、これまでとは不気味なまでに異なる人口減少という未知の時代へと足を踏み入れることになる。

Foreign Affairs Update
アラウィ派はシリア沿海部を目指す
――内戦の長期化とアラウィ国家の誕生?

2012年5月号

ケイティ・ポール
前ニューズウィーク誌リポーター(在ベイルート)

政府軍と反政府勢力がダマスカスでの最終決戦を選ぶか、それとも政府軍がアラウィ派の伝統的な拠点である沿海近くの山間部へと撤退していくかに関わらず、内戦が長期化し、社会の亀裂がますます深くなっていくのはもはや避けられない情勢にある。二つの勢力の軍事力が拮抗してくれば、内戦は通常戦争レベルの戦闘へと激化していく。すでにアラウィ派の民間人は自分たちの伝統的生活地域であるタルタスやラタキアなどシリアの沿海地域へと移動し始め、一方でこの地域のスンニ派やキリスト教徒は、トルコへと脱出しつつある。こうして、アラウィ派の「国家内国家」が事実上形作られつつある。問題は、その後、何が起きるかだ。・・・

風力・ソーラーエネルギーのポテンシャルを引き出すには
――悪い補助金からスマートな促進策への転換を

2012年5月号

ジェフリー・ボール
スタンフォード大学レジデントスカラー

風力やソーラーエネルギーが、近い将来に化石燃料にとって代わることはあり得ない。当面、再生可能エネルギーは、化石燃料による電力生産に取って代わるのではなく、それを補完する程度に終わる。だからといって、その開発をいま断念するのは間違っている。風力タービンとソーラーパネルの効率は高まり、価格も低下している。重要なのは、これまでのように補助金で再生可能エネルギーのポテンシャルを摘み取ってしまわないように、よりスマートな促進策をとり、市場の競争を最大化することだ。目的は風力タービンやソーラーパネルを多く設置することではない。電力を安価に便利に安全に、しかも持続的に供給することだ。この目的を実現する包括的なエネルギー政策の一部に風力・ソーラーエネルギー促進策を戦略的に位置づける必要がある。

グローバル化する非感染性疾患
―― なぜ途上国で慢性疾患が広がりをみせているか

2012年5月号

トマス・J・ボリキー
米外交問題評議会
グローバルヘルス担当シニア・フェロー

WHO(世界保健機関)によれば、いまやガンや糖尿病を含むNCDs(非感染性疾患)で命を落とす人々の80%が途上国に集中している。先進国では予防も治療もできるようになったが、途上国で暮らす人々にとって非感染性疾患は死の宣告を受けるに等しい。いまやこの疾病は金融危機、自然災害、政治腐敗、感染症以上に途上国の経済開発を妨げる大きな脅威となっている。NCDsは、人々が若くして後遺症を抱え込んだり、命を落としたりする最大の要因として感染症に取って代わりつつある。

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