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に関する論文

ヨーロッパ経済の近未来
――債務危機と銀行危機の悪循環

2012年7月号

◎スピーカー
ウィレム・ブイター
シティグループ チーフエコノミスト
◎プレサイダー
ラナ・フォローオハール
タイム誌マネージングエディター

ギリシャは、ユーロからは離脱しても、おそらくEUには留まるだろう。条約には一部抵触するとはいえ、ギリシャがユーロを離脱する前段階で資本規制策、為替管理策、金融機関の閉鎖措置をとれば、無秩序な離脱リスクをある程度抑えることができる。いずれにしても、ギリシャの債務帳消しに応じる必要がある。だが現状でもっとも警戒すべきなのは、ユーロ圏の銀行危機だ。ヨーロッパの銀行はわれわれがまだ知らない損失を抱え込んでおり、これがシステマティックに隠蔽されている。銀行部門が巨大な債務を作り出し、結局は政府も共倒れになったアイルランドのケースがスペインで再現されるかもしれない。たしかに、ECBにはまだできることがある。だが、ECBが紙幣を刷り増すとすれば、国債市場の無秩序な崩壊、金融システムにとって重要な金融機関の無秩序な破綻、そして、ユーロ離脱の連鎖など、そうせざるを得ない状況に追い込まれた場合だけだろう。・・・一方、フランス国債の格下げによって、次の危機が誘発される可能性もあるし、あらゆるものが次の危機のトリガーになり得る状況にある。

CFR Interview
イラン・シリア問題に揺れるロシア外交
――なぜプーチンは中東を歴訪したか

2012年7月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

(シリア問題をめぐって)「欧米とアラブ世界が連帯し、その一方にロシアとイランがいる」という構図ができあがってしまっている。これまでシリアのバッシャール・アサドを支持してきたために、ロシアは非常に厄介な状況に追い込まれている。プーチンが最近中東を歴訪したのは、まさしく、ロシアの中東外交が手詰まり状況にあるからだ。彼はロシアの立場を中東の指導者に説明する必要があったし、なぜ中東諸国の批判に耳を貸そうとしないかについて弁明を試みる必要があった。いまや、シリアへの路線ゆえに、中東におけるロシアのイメージは大きく失墜し、アラブ諸国は「ロシア政府は経済的、地政学的思惑絡みでアサド政権を支持しており、中東地域の政府と民衆が気に懸けている人道問題を無視している」と批判している。

米経済を左右する連邦準備制度理事会のパワー

2012年7月号

シルベスター・エイジィフィンガー
ティルブルグ大学教授(金融経済学)エディン・ムジャジク
ティルブルグ大学博士課程、金融エコノミスト

今後、米経済のインフレは高まり、成長は停滞し、失業率も高止まりすると考えられる。これらの問題へどう対応するかがすでにワシントンにおける党派対立と論争の中心に位置づけられている。オバマは現在のゼロ金利路線の継続を望んでいるが、共和党はあからさまにFRBとその議長を攻撃している。FRBの金融緩和策が将来のインフレをもたらすと確信している共和党議員もいる。共和党の予備選挙でミット・ロムニーは「私は(バーナンキではなく)自分でFRB議長を選ぶ」と発言している。しかし、大統領に選ばれても彼にその権限はない。・・・ロムニーも、多くのアメリカ人同様に、最高裁判所と同じようにFRBに対しては長期間にわたって手を出せないという事実に気づいていない。仮に共和党の大統領が誕生しても、オバマが2012年に選ぶFRBと対峙していくしかないのだ。

CFR Meeting
ティモシー・ガイトナーとの対話

2012年07月

◎スピーカー
ティモシー・ガイトナー /米財務長官
◎プレサイダー
アンドレア・ミッチェル /NBCニュース アンカーパーソン

ヨーロッパは単に時間稼ぎをしているだけだとみる人もいるが、それは真実ではないし、公正な見方とは言えない。・・・ヨーロッパが大がかりな対応を試みるのは、今度で4回目だ。しかも、これまでとは違って今回は、危機を小さくするだけでなく、残された時間が多くないことをヨーロッパは認識している。・・・ドイツの今後の動きに関心が高まっているのは事実だが、すべての問題をドイツのせいにするのは公正ではない。ドイツが求めているのは通貨同盟を機能させることだ。この試みを支えるためにドイツはかなりのコミットメントをするつもりだ。しかし、通貨同盟を機能させるには、先ず財政改革が必要だというのがドイツの立場だ。これは常識的な立場だ。だが、どのよう順序で、どの改革を進めるかをめぐって対立がある。

CFR Interview
ロシアはシリア紛争への立場を見直しつつある?

2012年6月号

モナ・ヤコービアン
スティムソンセンター
中東担当シニアアドバイザー

シリア問題に関するロシアの立場は(安保理決議に拒否権を行使した)2月以降、ゆっくりだが、それでも着実に変化している。ロシアもわれわれ同様に、シリアはせい惨な宗派間戦争へと向かいつつあるとみている。ロシアの中東における利益からみても、これは厄介な展開だ。シリア情勢の悪化を目の当たりにするにつれて、モスクワも戦略的な見直しを行い、バッシャール・アサドと彼の取り巻きたちからは距離を置くことを決断するかもしれない。もっとも、モスクワはシリアの体制変革までは望んでいない。おそらくロシアが望んでいるのは、バッシャールと側近たちを排除しつつも、シリアの権力構造を温存するようなクーデターが起きることだろう。・・・

CFRブリーフィング
世界的水資源危機
――水の惑星の皮肉な現実

2012年6月号

スチュアート・パトリック 米外交問題評議会シニア・フェロー(国際機関・グローバル統治担当))

人類が誕生した当時から水資源をいかに確保するかは重要な課題だった。しかし、今日の水資源問題の特徴は、統治体制が脆弱で不安定な地域で急速に需要が増 大し、水不足が深刻化していることにある。この厄介なトレンドに人口の増大、地球温暖化などによる水資源の供給量低下が追い打ちをかけている。2030年 までに人類が1年あたりに必要とする水の量は「現時点で持続可能とされる供給量」を40%上回ると予測されている。

CFR Interview
シリア紛争の憂鬱な現実
―― 出口のない対立と極度の混乱

2012年6月号

ピーター・ハーリング
国際危機グループディレクター
(イラク、レバノン、シリア担当)

「シリアは攻撃されており、われわれは反撃を試みている」とダマスカスの高官たちは言う。この理屈を用いて、行き過ぎた武力行使に始まり、政治的イニシアティブの欠落、そして経済運営の失敗までのさまざまな問題を「自分たちではない誰か」のせいにし、行動のすべてを国家救済のためと、正当化している。

CFR Interview
だが、いかなる成長路線なのか
―― 緊縮財政路線と成長路線

2012年6月号

トーマス・フィリポン ニューヨーク大学ビジネススクール准教授(金融)

重要なのは、欧州中央銀行(ECB)マリオ・ドラギ総裁が「新財政協定の内容を見直す必要はないが、アジェンダに経済成長という視点も加えるべきだ」と述べていることだ。ECBは、ヨーロッパの経済成長を実現するには、特に南ヨーロッパ諸国の労働市場の柔軟性を高める必要があると考えている。・・・一方、オランドは量的緩和を実施したいと考えている。ここからは交渉になるだろう。ユーロ圏のメンバー国が「受け入れ可能なものが何で、何を諦めてもいいと考えているか」をすり合わせていく必要がある。ドイツはある程度のインフレ(インフレターゲット)なら受け入れることはできると考えている。・・・ドイツがこの方向での議論に応じた場合には、フランスに労働市場の改革を強く求めるはずだ。・・・論点と重心が成長策へとシフトしていくのは避けられない。だが、何について合意できるだろうか。望ましい成長路線が何であるかについてヨーロッパが合意できる状況にはない。

CFR Meeting
中国には法律はあっても、法の支配がない

2012年6月号

◎スピーカー
陳光誠
人権活動家
◎プレサイダー
ジェローム・コーエン
ニューヨーク大学教授

中国で社会蜂起が絶えないのは、社会が公正でないからだ。当局は、圧力をかけ弾圧して、問題を封印しようとする。このやり方で問題に蓋をしても、さらに問題は大きくなる。この6-7年の私の経験からみても、中国の法の支配はますますひどくなっている。法と秩序を担当する地方の共産党書記でさえ「法律など関係ない。われわれは超法規的な措置をとる」と発言している。法当局が法を守らなければ、他の人々が法を守ると期待することができるだろうか。・・・・だが、私が生きているうちにという時間枠でみれば、民主化が実現されると楽観できる。この数年間における情報・通信機器の発達によって、人々は情報を拡散できるようになり、社会は大きく変化している。この状況で情報を隠蔽できるだろうか。そうできる可能性は低下しつつある。役人が法律の上に自分の権限を位置づける事態を、人々が黙っていることはなくなると考えている。(陳光誠 )

Foreign Affairs Update
アサド体制を支えるアラウィ派のジレンマ

2012年6月号

レオン・ゴールドスミス オタゴ大学リサーチャー(中東研究)

シリアでの紛争が長期化するにつれて、一部のアラウィ派が政府に背を向け始めている兆候もある。だが、彼らのほとんどは依然としてアサド体制を守ろうと戦いを続けている。現体制によるこれまで、そして現在の残虐行為の報復として、いずれスンニ派の報復がバッシャール・アサドだけでなく、アラウィ派にも向けられることを恐れているからだ。こうした危機感に根ざすアラウィ派の体制への忠誠は歴史的なルーツをもっている。アラウィ派コミュニティは、歴史的にスンニ派による差別と殺りくの対象にされてきた。だが、バッシャール・アサド現大統領の父でアラウィ派のハフェズ・アサドが1970年に権力を掌握したことで流れは変化する。権力者であるハフェズはスンニ派の反乱を抑えるために過酷な弾圧策をとった。この段階でアラウィ派は犠牲者から加害者になった。・・・そして今、アラウィ派は実存的ジレンマに直面している。バッシャール・アサド政権が崩壊すれば、アラウィ派はかくも長期にわたって体制を支えてきたことの責任を問われる。一方でアサド体制に固執すれば、容赦のないスンニ派による報復のリスクを高めてしまう。・・・

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