1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。
2013年04月
シリア紛争は内戦から宗派間紛争へと姿を変え、人的犠牲も深刻なレベルに達している。犠牲者数はすでに7万を超え、国連によれば、シリアから脱出した難民の数も100万に達している。宗派間紛争の色彩がますます強くなっているために、紛争はすでに地域的な余波をもち始めている。数世紀にわたって宗派対立の緊張を抱えてきたシリアにとって、もはや宗派間の関係を修復するのは絶望的な状態にある。シリアの国家解体の可能性に言及する人々もいる。特にキリスト教徒とアラウィ派住民は危機感を募らせている。シリア北部を中心とするキリスト教徒のコミュニティは自ら武装することで、自衛策をとりつつあり、政府が彼らに武器を提供しているとも言われる。マイノリティの多くは自分たちが安心して暮らせる地域へと向かっており、事実上の国家分割が起きつつあるとみなすこともできる。・・・シリア、あるいは(シリア、レバノン、ヨルダンなどで構成される)レバントの解体をわれわれは目撃しつつあるのかもしれない。
2013年4月号
イラクという戦場は複雑だった。テロだけでなく、社会問題にもわれわれは直面していた。武装勢力がいただけでなく、宗派間抗争も起きていた。ネットワーク化された敵に対して、われわれもネットワーク化する必要があった。・・・「敵はどこにいるか」、「誰が敵なのか」、「敵は何をし、何をしようとしているか」を考えた挙げ句、結局「なぜ彼らはわれわれの敵なのか」を考えた。・・・アメリカにとっては、ドローン攻撃はリスクも痛みも少ないかもしれないが、攻撃される側にとっては、戦争であることに変わりはない。アメリカ人はこの点を理解する必要がある。現状で、そうした軍事技術をわれわれが無節操に用いているとは思わないが、そうなる危険は常に存在する。・・・武装勢力との戦争の重要なポイントは、たんに敵勢力を殺害することではなく、現地の民衆の面倒をみることだ。現地の民衆を守る積極的な理由があるし、そうしないのは間違っている」。(S・マクリスタル)
ユーロ圏からのギリシャ離脱というシナリオが、いまやEUからのイギリス脱退というシナリオに置き換えられている。イギリスではEUに対する不信がかつてなく高まっている。EUが(ユーロを救うために)経済・政治同盟の統合を進化させるための措置を導入していくにつれて、ユーロゾーンの中核国と、統合の深化に歩調を合わせるのを嫌がっているユーロに参加していない国の間の亀裂は必然的に大きくなっていく。ヨーロッパはユーロを救うために、欧州連合を分割すべきなのか。・・・
イスラエルは、アサド政権が倒れた後に、イスラム主義政権、それもジハード主義政権がシリアに誕生することを警戒している。政権崩壊によってシリアが混沌とした状況に陥れば、ジハーディストがゴラン高原からイスラエルに対してテロ攻撃を試みるかもしれない。あるいは、イスラム主義政権がシリアの化学兵器や生物兵器をヒズボラに与えるか、そうした兵器を過激派勢力が混乱に乗じて手に入れる危険もある。さらには追い込まれたアサド政権が、道連れとばかりに、イスラエルに向かってミサイルを発射するリスクもある。より全般的には、イスラエルは、アサド政権とその同盟勢力がシリア内戦をイスラエルとの戦争、アラブ・イスラエル紛争へと変貌させることを警戒している。エルサレムは公的な声明を通じて、どのような事態になれば介入に踏み切るか、イスラエルにとって看過できないレッドラインを明確に示してきた。最先端の兵器システムがヒズボラの手に落ちることもレッドラインの一つだった。今回のイスラエルによるシリア空爆は、この文脈で理解されるべきだ。問題は、空爆によって抑止力が形成されたかどうかが、はっきりしないことだ。
日本は、外部の国際環境を所与のものとみなすことで、日本人が「時流」とよぶ国際的な流れに乗るために、現実的な調整を試みてきた歴史を持っている。そしていまや、中国の台頭、北朝鮮の核開発、アメリカの経済的苦境という国際環境の変化を前に、「東アジアにおけるアメリカの軍事的優位はどの程度続くのか」という疑問を抱いた日本人は、これまでの計算を見直しつつある。米中が対立しても、それによって必ずしも日米関係が強化されるわけではなく、現実には、自立的な安全保障政策を求める声が日本国内で高まるはずだ。鍵を握るのはアメリカがどのような行動をみせるかだ。日本の防衛に対するアメリカのコミットメントは信頼できると日本人が確信すれば、東京の外交政策が現在のトラックから大きく外れていくことはない。だが、アメリカの決意を疑いだせば、日本人は独自路線を描く大きな誘惑に駆られるかもしれない。
2013年3月号
ユーロ危機の打開に向けた財政同盟、銀行同盟のためのビジョンが描かれ、欧州中央銀行(ECB)が最後の貸し手の役目を果たす態勢も整いつつある。しかし、ヨーロッパの政治が大きな障害を作り出している。いまやベルリンは独自路線をとり、一方のパリは内向きになっている。・・・ユーロの安定化に向けてドイツが示した(財政同盟などの)処方箋は統合の深化を必要とする。国家主権を譲ることについて連邦制のドイツはそれを問題と感じないが、歴史的に国家主権にこだわってきたフランスはそうではない。今後、危機対応をめぐって独仏の立場の違いが先鋭化してくるのは避けられないだろう。一方、キャメロン英首相は、イギリスとEUとの関係を再交渉し、少なくとも、EUから距離を置きたいと考えている。そうした緩やかな関係であれば、市民の支持をとりつけて、イギリスは今後もEUに関わり続けることができるようになると考えているからだ。だが、その結果、イギリスの地政学的重要性が低下する危険があるし、一方ではスコットランドの独立というリスクもロンドンは抱え込んでいる。・・・
2013年3月号
ワシントンは韓国への拡大抑止のコミットメントを再確認することで、北朝鮮を抑止するだけでなく、韓国に戦略的安心感(assurance)を提供しようと試みている。同時に、北朝鮮によるさらなる挑発策を抑止するために中国側からさらに協調を引き出そうと、「北朝鮮の挑発行動を許容するような北京の路線が地域的な安定を損なうこと」を明確に示して説得したいと考えている。だがここでねじれが生じている。中国が朝鮮半島のことを米中が影響力を競い合う舞台と考え、この文脈では、北朝鮮による抑止力は自国の利益にプラスに作用すると考えているからだ。韓国側も「アメリカは、同盟国を守るために自国が攻撃されるリスクを引き受けるかどうか」、つまり、ソウルを守るためにロサンゼルスを危機にさらすつもりがあるかどうか、疑問に感じている。・・・・
2013年3月号
交渉を通じたいかなる仲裁も、シリア紛争の停戦に向けた信頼できる枠組みを形成できるとは考えにくい。仮に合意が成立しても、国内には、最後まで戦い抜くことを決意している戦士たちが数多くいるからだ。最終的にバッシャール・アサド体制が倒れるのは避けられないが、当面は、アサドは体制を維持していくだろう。シリア政府はロシア、イラン、ヒズボラだけでなく、イラクからもある程度の支援を取り付けている。そして、われわれにとってはいかに不快な人物だとしても、(アラウィ派を中心とする)シリアの都市住民の多くは、まだ完全にはバッシャール・アサドに背を向けていない。その理由は、現体制が倒れれば、宗派間抗争が起きて、少数派である自分たちは殺戮されることになると考えているからだ。・・・