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に関する論文

マフィア国家の台頭
―― 融合する政府と犯罪組織

2012年7月号

モイセス・ナイーム
カーネギー国際平和財団
シニアアソシエート

もっとも多くの利益をもたらす違法行為に手を染めているのは、犯罪のプロだけではない。いまや政府高官、政治家、情報機関や警察のトップ、軍人、そして極端なケースでは国家元首やその家族たちも違法活動に関わっている。世界各地で、犯罪者がこれまでにないレベルで政府に食い込み始める一方で、パワフルな犯罪組織を取り締まるどころか、政府が犯罪組織に代わって違法活動を行っている国もある。こうして犯罪組織と政府が融合した「マフィア国家」が誕生している。実際、ブルガリア、ギニアビサウ、モンテネグロ、ミャンマー(ビルマ)、ウクライナ、ベネズエラなどでは、国益と犯罪組織の利益が結びついてしまっている。犯罪組織が最初に狙うのは、腐敗した政治システムだ。中国とロシアは言うまでもなく、アフリカや東ヨーロッパ、そしてラテンアメリカ諸国の犯罪者たちは、従来の犯罪組織では考えられなかったような政治的影響力を手にしている。もちろん、政府そのものが犯罪行為を行う北朝鮮のような国もある。

CFRブリーフィング
TPPとアメリカの貿易政策

2012年7月号

クリストファー・アレッシcfr.org アソシエート・スタッフライター
ロバート・マクマホンcfr.org 副編集長

TPPは中国を警戒させ、アジア地域を競合する敵対的なパワーブロックへと分裂させると憂慮する専門家がいる一方、「日本、アメリカ、オーストラリアを含むTPPは(中国の台頭に対する)健全な代替策になる」という見方もある。さらに、二国間自由貿易や(TPPのような)地域的自由貿易構想は、世界貿易機関(WTO)が主導するグローバル貿易を損なってしまうと批判する専門家もいる。・・・

何がTPPの進展を阻んでいるのか
―― 条約案の情報公開か、交渉の決裂か

2012年7月号

バーナード・ゴードン
ニューハンプシャー大学名誉教授(政治学)

TPP(環太平洋パートナーシップ)交渉が実を結べば、アメリカは次世代にむけて政治的にも経済的にもはるかに力強い存在になる機会を手にする。日本が合意に参加すれば、実質的に日米自由貿易合意が誕生し、日本にとっても長く模索してきた「第3の開国」になる。より広範には、アメリカ政府は、TPPを合意されたルールに基づく、開放的で相互につながった貿易の基盤にしたいと考えている。だからこそ、アメリカ政府は2012年末までに合意のアウトラインを確定することを望んでいる。だがそのためには、まずアメリカ国内の反対、特に自動車産業、保険産業、農業団体の反対を克服しなければならない。ワシントンは、可能な限り、知的所有権を含むアメリカの立場に対する内外の懸念に応えていくべきだし、交渉プロセスの透明性を高めていかなければならない。そうしない限り、TPP交渉は決裂する恐れがある。

ユーロ崩壊というドイツのオプション

2012年7月号

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会シニア・フェロー

ユーロゾーンの分裂が近いうちに現実になるかどうかに関わらず、一つだけたしかなことがある。それは、危機が具体化し始めてから現在まで、その気になれば、ドイツは通貨同盟を救う力を持っていたし、現在もそうであることだ。つまり、ユーロが解体するとすれば、それはドイツが解体を選択した場合ということになる。ドイツはどちらの方向に進むべきか困惑しているようだ。戦後の歴史に配慮すればヨーロッパ統合を維持することが重要だし、そうでなくても(ユーロの解体を認めて)強固なマルクを復活させれば、自国の輸出競争力は大きく抑え込まれてしまう。だが、ドイツの指導者たちは(ユーロを救うのに必要な)穏やかなインフレを認めることにアレルギーを示し、他国の債務や銀行システムを救済することを躊躇している。・・・

Foreign Affairs Update
世界はドイツの決断を待っている
――1930年代の教訓

2012年7月号

マーク・ブリス ブラウン大学教授
マティアス・マタイス ジョンズ・ホプキンス大学准教授

「ヨーロッパ」の寿命をあと3カ月とみているのはジョージ・ソロスだけではない。市場も同じ見方をしている。そして、ドイツの政策決定者の脳裏にあるのは、債務を抱え込んだゾンビがますますおぞましい姿で復活してくる悪夢のシナリオだ。・・・依然としてドイツの銀行のスペイン債務へのエキスポージャーは大きく、スペインで銀行破綻が広がればドイツの銀行も道連れになる。こうして、ドイツはこれまでの路線を少しばかり見直しつつある。だが、危機の結末を変化させるほど十分な変化ではない。ドイツは依然として反インフレ路線にこだわり、リーダーシップを引き受けるのを嫌がっている。1929年の恐慌が大きな広がりをみせたのは、イギリスには国際経済システムを安定化させる能力がなく、アメリカにはその責任を引き受ける意図がなかったからだ。このままでは1930年代の間違いを繰り返し、ECBがかつてのイギリスの役割を、ドイツがアメリカの役回りを演じることになりかねない。

CFR Briefing
起業、インキュベーター、ベンチャーキャピタルのメカニズム

2012年7月号

スティーブン・J・マルコビッチ www.cfr.orgコントリビューター

「オフィスはシリコンバレーでなければならない。才能ある人材、投資家、スタートアップ企業はどうすればよいかを知る人々が集まっている。われわれのようなテクノロジー企業を立ち上げるつもりなら、ここシリコンバレーしかない」。バンプ・テクノロジーズCEO、デビッド・リーブ

CFR Interview
銀行同盟、財政同盟構想とドイツの立場

2012年7月号

ベネディクタ・マージノット リサーチフェロー、ブリューゲル*
*ブリューゲルはベルギーにある経済シンクタンク

銀行同盟が誕生すれば、銀行危機が広がっていくリスクをある程度抑え込めるわけで、銀行の倒産に対する抑止力が形成される。すでに、ギリシャだけでなくスペインからも資金が流出し始めているだけに、銀行同盟は大きなメッセージを市場に発することができる。ドイツが銀行同盟に強く反発する理由はない。一方、ドイツはメンバー国の財政を監督する必要があると考えており、各国が財政規律を維持しているかどうかを欧州委員会が確認できるようにする財政同盟にも関心を持っている。とはいえ、ユーロ共通債が導入されなければ、財政同盟という名称は不可解なものになる。政治的にみて、ドイツがユーロ共通債を支持することはあり得ない。おそらく、各国の予算案に対する欧州委員会の監督権限は強化されるだろうが、ユーロ共通債に関する具体的スケジュールがでることはないだろう。

なぜイランは核兵器を保有すべきか
―― 核の均衡と戦略環境の安定

2012年7月号

ケネス・N・ウォルツ
カリフォルニア大学名誉教授

現在のイラン危機の多くは、テヘランが核開発を試みているからではなく、イスラエルが核を保有していることに派生している。イスラエルの核保有のケースがきわめて特有なのは、核武装から長い時間が経過しているにも関わらず、依然として中東で戦略的な対抗バランスが形成されていないことだ。イスラエルは核開発を試みて戦略バランスを形成しようとするイラクやシリアを空爆し、これらの行動ゆえに、長期的には持続不可能な戦略的不均衡が維持されている。現在の緊張の高まりは、イランの核危機の初期段階というよりは、軍事バランスが回復されることによってのみ決着する、数十年におよぶ中東における核危機の最終段階とみなすことができる。現実には、イランの核武装化は最悪ではなく、最善のシナリオだ。この場合、中東の軍事バランスが回復され、戦略的均衡を実現できる見込みが最大限に高まる。

イスラムのモデル国家はトルコかイランか

2012年7月号

ムスタファ・アキョル
ネーバル・ポストグラジュエートスクール教授

「アラブの春」をきっかけにトルコとイラン間の緊張が高まり、いまや「アメリカやイスラエルから攻撃を受ければ、トルコを攻撃する」とテヘランが表明するほどに両国の関係は悪化している。根底には、イスラム原理主義を重視する「イランモデル」と、民主主義とプラグマティズムを重視する「トルコモデル」のせめぎ合いがある。だが、「欧米支配に立ち向かうイスラム世界のヒーロー」としてのイランの影響力も、現在のトルコの地域的影響力を前にすれば影が薄い。「より平和で民主的、しかも自由な中東の未来」を夢みる人々が取り入れたいと考えているのは、イランモデルではなく、リベラルなトルコモデルだからだ。すでにアラブ人の多くが、イスラム国家ながらも、民主的で開放的な社会を持ち、繁栄を手にしているトルコのことを自分たちの「モデル国家」とみなし始めている。イランはイラクのシーア派の、サウジはスンニ派のパトロンを自認しているが、トルコは、キリスト教徒や世俗派に加えて、シーア派、スンニ派の双方に関わっている。トルコは、イスラムと「民主主義、市場経済、近代性」との統合が必要だと考えている。

Classic Selection 2004
起業型経済の構築を

2012年7月号

カール・シュラム ユーイング・マリオン・コーフマン財団会長

デルやシスコ・システムズなど、アメリカ経済の富と生活レベルを引き上げているのは起業によって立ち上げられた企業である。こうした新企業は経済の技術革新を誘導するだけでなく、新規雇用をつくり出し、景気循環がつくり出す困難な時期の衝撃を緩和し、経済の成長と進化を刺激する。アメリカに存在する起業と大学、大企業、政府を結ぶ「4セクターモデル」は、経済停滞に直面している先進国だけでなく、途上国も導入できる。起業にまつわる文化的な制約は取り払うことができる。

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