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に関する論文

CFR Interview
「ギリシャ後」のフランスとドイツの思惑
――統合の維持か、ユーロの解体か

2012年6月号

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会シニア・フェロー(国際経済担当)

ギリシャのユーロ離脱に伴う危機が国債を通じて他のヨーロッパ地域へと広がりをみせていくリスクはあまりない。だが他のルートを通じて、危機が拡大していく危険がある。ギリシャの銀行にユーロ建ての貯金をもつ人々は、(ユーロよりも価値の低い)新ドラクマ建てに交換される前に、預金を引き出そうとするだろうし、ポルトガルやスペインでも同じ現象が起き、ヨーロッパの周辺地域で銀行破綻が広がりをみせていくかもしれない。・・・さらに、ギリシャの企業が、例えばフランスの銀行への融資返済をストップすれば、銀行は大きなダメージを受け、フランス政府は銀行に公的資金を注入せざるを得なくなる。そうなれば、フランスの対GDP債務は、イタリア並みの深刻なレベルに上昇する。・・・この状況でドイツは統合を維持していくことのコストをどう評定するか。メルケルは実利と歴史の双方を考慮することになるだろう。

CFR Interview
ユーロ危機で米経済もリセッションへ

2012年6月号

リチャード・クラリダ
コロンビア大学教授

無秩序なギリシャの離脱、あるいは、(南北ヨーロッパ間のギリシャ救済)合意へのコミットメントが放棄されるだけでも、直接的なエキスポージャーから想定できる以上の余波を米経済は被ることになる。・・・ヨーロッパは深刻なリセッションに陥りつつあり、GDPの規模は3・5%縮小している。この状況では、連邦準備制度がいかなる政策対応をとっても、米経済がリセッションへと向かうのは避けられない。

Foreign Affairs Update
ガスプロムの衰退とプーチンの政治的黄昏

2012年6月号

アハマド・メフディ NATO加盟国議員会議リサーチフェロー

2000-2008年当時、プーチンはロシアという国家の現実を形作るだけの圧倒的な権力をもっていた。彼はその権力基盤の多くを、国家的な覇権企業としてのガスプロムの存在に依存していた。ガスプロムが優遇策を受け、許認可をクリアーし、パイプラインの使用権を独占できたのは、権力との共存関係にあったからだ。だが、プーチンの政治的配慮が予期せぬ形で天然ガス市場の事実上の自由化を促してしまった。いまや新興の天然ガス企業・ノバテックがガスプロムの地位を着実に脅かしつつある。すでに、クレムリンはノバテックを「次なるガスプロム」のように扱い始め、市場も同社を天然ガス産業の大手プレイヤーとみなし始めている。ガスプロムが市場からクラウドアウトされていくにつれて、プーチンは何か別の権力基盤を探さざるを得なくなる。そうしない限り、プーチンもまた追い込まれていく。・・・

キケロ兄弟の選挙戦術
―― 現代に生きる古代ローマの知恵と戦術

2012年6月号

クィントゥス・トゥッリウス・キケロ 共和政ローマ法務官

候補者となった以上、あなたに好意をみせる人、あなたの仲間になりたいと考える人はすべて友人です。一方、家族そしていつもあなたの近くにいる人々には注意が必要です。悪い噂の大元は家族や友人たちであることが多いものです。・・・相手に好意を持っていることをあなたが示すことで、彼らがあなたに抱く敬意をさらに高めることができます。・・・あなたの立場を代弁してくれる人々を探すのです。・・・社会集団の指導者との接触を試み、(一方で)・・・元気な若者たちをあなたの支持者にすれば、非常に大きな力になってくれます。・・・市民がもっとも強い印象を受けるのは、候補者が自分のことを覚えてくれることです。毎日、人々の顔と名前を一致させることを練習すべきです。そして決してローマを離れてはいけません。・・・キャンペーンでもっとも大切なのは、人々に希望を与え、あなたに好感を抱かせることです。有権者に強い印象を与えるには、彼らのことを理解し、愛想良く優しく接し、自分をアピールし、誰とでも会い、決して諦めないことです。

CFR Interview
ムハンマド・モルシとエジプト軍は協調できるのか
――軍と同胞団とタハリール広場

2012年6月号

ロバート・ダニン
米外交問題評議会
中東・アフリカ担当シニア・フェロー

ムスリム同胞団の物質面での力は限られている。戦車を保有しているわけでもなければ、政治機構を掌握しているわけでもない。だが、同胞団は一定の政治的正統性(民衆の支持)を持っている。対照的に軍は大きな力を持っているが、民衆が、軍が文民政府に権力を委ねることを求めていることも理解している。つまり、双方がカードを持っている。おそらく、対立ではなく、協調したほうが、互いのためになるという了解を共有している。だが今後、困難な局面に直面するのは避けられないだろう。平和な状況を維持し、最終的に、正統性のある政府機関を形作っていくプロセスがうまくいかなければ、いまやディフォルトの政治機構である「タハリール広場」が動き出すだろう。軍とムスリム同胞団がうまくバランスをとって状況を前に進めていかなければ、再び「タハリール広場」が政治を動かすことになる。

危機後のヨーロッパ
―― 圏内経済不均衡の是正か、ユーロの消失か

2012年6月号

アンドリュー・モラフチーク プリンストン大学教授

単一通貨導入から10年を経ても、ヨーロッパは依然として、共通の金融政策と為替レートでうまくやっていけるような最適通貨圏の条件をうまく満たしていない。これが現在の危機の本質だ。南北ヨーロッパが単一の経済規範に向けて歩み寄りをみせなかったために、単一通貨の導入はかねて存在したヨーロッパ内部の経済不均衡を際立たせてしまった。救済措置を通じて、危機を管理することはできても、南北ヨーロッパの経済をコンバージ(収斂)させていくという長期的課題は残されている。経済の均衡を図るには、各国のマクロ経済政策を十分に均質性の高いものにすること、つまり、ドイツのような債権国と南ヨーロッパの債務国が、政府支出、競争力、インフレその他の領域で似たような経済状況を作り上げることが必要になる。そうできなければ、ユーロの存続は揺るがされ、ヨーロッパは、今後10年以上にわたって、その富とパワーを浪費し、消耗していくことになるだろう。

Foreign Affairs Update
アノニマスの活動はテロか抗議行動か
――サイバー空間と抗議行動

2012年5月号

ヨハイ・ベンクラー ハーバード大学法律大学院教授 同大学インターネットと社会センター共同所長

アノニマスによる主な行動はDDoS攻撃、コンピュータから盗み出した公的文書の暴露、ウェブサイトの改変、そしてオフラインでの活動だ。しかし、一部の政府高官が考えるようにアノニマスの行動をテロ行為とみなしたり、メディアが示唆するように、彼らを社会悪とみなしたりするのは間違っている。もっと現実に目を向けるべきだ。彼らの目的はインターネットの自由を守り、権力者の権力乱用を告発することにある。その本質は抗議行動なのだ。アノニマスの攻撃対象の政治的な特性をみれば、彼らを純粋にサイバー空間における脅威とみなすのは明らかに間違っていることがわかる。現状追認の自己満足を揺るがして人々を覚醒させる程度の「市民的不服従」や抗議のための空間はインターネット上でも認められるべきだ。アノニマスは破壊・争乱行為と啓蒙行為の境目に身を置くことで、「大胆不敵なおとり」の役回りを演じている。この事実を認識できない政府や企業は、現代社会でもっとも活力にあふれ、血気盛んな集団を敵に回してしまうことになるだろう。

CFR Meeting
経済・貿易の世紀と伝統的外交の終わり
――TPP、知的所有権、NGO

2012年5月号

ロバート・ホーマッツ
米国務次官補(経済成長およびエネルギー・環境担当)
ティエリ・ド・モンブリアル
フランス国際関係研究所会長

かつて外交は各国の外交担当者の専権事項だったが、今日では、あらゆる政府省庁が外交を展開している。実質的に、すべての省庁は、国際経済領域に深く関与しており、いまや外交担当省庁のチャンネルを経由する必然性は消失しつつある。つまり、外交コミュニケーション、外交政策という概念そのものが変化している。・・・外交担当省庁の役目は、政府省庁の外交アジェンダの調整と優先順位を決め、それを全体的なパッケージに仕立てあげることへと変化している。統治スタイルが変化した結果、システムは大きく変化している。しかも、昨今における問題の多くはグローバル化している。だが、政治家は国内の有権者の意向にも配慮しなければならない。これが、世界に非常に大きなジレンマを作り出している。

教育と国家を考える

2012年5月号

◎スピーカー
ジョエル・I・クライン ニューズコーポレーション教育部門最高経営責任者
コンドリーザ・ライス 前米国務長官および国家安全保障問題担当大統領補佐官
◎プレサイダー
テリー・モーラン ABCニュースナイトライン アンカー

CFRインタビュー
中国からみた米大統領選挙

2012年5月号

賈慶国 北京大学国際関係学院副院長

「中国人の多くは、アジアシフトに象徴される米軍の戦略再編をシンボリックなもの、見せかけの行動としかみていない。たしかに250人規模の海兵隊をオーストラリアに送り込んだかもしれないが、現実には国防予算を削減している。・・・・大統領選挙中に中国がとかくやり玉に挙げられることを、中国人は理解している。そして実際には、アメリカが直面している問題のルーツのほとんどは米国内にある。アメリカ経済は多くの問題を抱え込んでおり、これを説明するためのスケープゴートを必要としており、たまたま中国が生け贄にされているだけだ。・・・・新大統領が中国への政策を大きく見直すことはない。すでに両国の関係が非常に密接で、その利益も融合しているからだ。新大統領が中国への政策を見直せば、アメリカの経済と国益に大きなダメージがでる」

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