韓国大統領選挙と米韓、日韓関係
2012年11月号

1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。
2012年11月号
2012年11月
「現在の中国の政治制度ではうまく対応できない社会・経済状況が国内で出現しつつある。この状況で、中国政府が国内の安定を重視すれば、その余波が(強硬策として)対外領域に飛び火するために、アメリカとアジア諸国の政策担当者はすでに新しい問題に直面している。この意味において、中国国内の経済的、政治的な不安定化は、地域諸国に直接的な余波をもたらす」
2012年11月号
新たなデジタル革命が迫りつつある。今度はファブリケーション(モノ作り)領域でのデジタル革命だ。コミュニケーションや計算のデジタル化と同じ洞察を基盤にしているが、いまやプログラム化されているのは、バーチャルな何かではなく、フィジカルなモノだ。CGデータを元に3次元のオブジェクトを造形する3Dプリンターの登場によって、ベアリングと車軸を、同じ機械で同時に作れるようになった。これをデータからモノを作り、モノをデータ化するための進化する能力と定義することもできるだろう。このビジョンを完成させるにはまだ長期的な研究が必要だが、すでに革命は進行している。だれもがどこででも何でも作れる世界で、われわれはどのように暮らし、学び、仕事をすることになるのか。現在進行中の革命が突きつける中核的な疑問に答えることが、現状でのわれわれの大きな課題だろう。
2012年11月号
地球温暖化によって干ばつ、水害、その他の異常気象が増えるなか、水資源の量と質がともに変化する恐れが出てきている。世界の276の国際河川のうちの24の河川では、すでに流水量が変化し、水資源をめぐる政治的緊張が高まっている。例えば、上流域に位置する国と下流域に位置する諸国が、水力発電のエネルギー源として、あるいは農業用水として、水資源を争っているからだ。問題なのは、緊張が高まっている地域で水資源使用の管理を定めた国際条約が存在しないことが多いために、対立が生じても、それに対処するメカニズムが存在しないことだ。水資源の国際的管理合意を包括的に整備していかない限り、アフリカ、カフカス、中東、中央アジアなど、水資源が世界の紛争多発地域の安定をさらに損なうことになりかねない。
2012年11月
シリアの反体制派の統一組織「シリア国民連合」が誕生したが、シリア国内の反体制派がこの新しい組織と協調するかどうかは、はっきりしない。欧米にとって厄介なのは、シリア国内の反体制派武装勢力にアルカイダの戦士が入り込んでいることだ。どうすれば、自由と民主主義のために戦っているシリア人とアルカイダの戦士を区別できるだろうか。この二つの集団を明確に区別しない限り、アメリカとヨーロッパが反政府勢力を全面的に支持すると公言するのは難しい。たしかに、フランスがシリア国民連合を承認したことで、いまや反体制派は国際コミュニティの支持を獲得しつつある。だが、本当の戦場がシリア国内にあることを忘れてはいけない。今後の多くは、国民連合が反体制派武装勢力を統制できるか、アルカイダを締め出せるか、そして、多数派であるスンニ派とその他の少数派の調和と統合を実現できるかに左右される。現実には、これらが実現する見込みは乏しい。どうみても、シリア内の各勢力が政治的妥協を求めるような情勢にはないからだ。・・・すでにシリアは、レバノン同様に外部パワーの代理戦争の場所と化しつつある。あと3-4年は内戦が続くだろうし、アサド政権が倒れても、そこに台頭してくるのは、もう一つの殺人集団であるスンニ派イスラム主義組織だろう。
2012年11月
2012年11月
二期目のオバマ大統領にとっての最大の課題は、やはりアメリカの財政を立て直すことだ。一方、主要な外交課題には、イランの核開発問題、アフガニスタン撤退、シリア内戦への対応などがある。だが、重要なのは歴史的にみても「就任演説の時点では予想もしていなかった外交問題に大統領が直面するのは避けられない」ことだ。オバマ大統領は予期せぬ外国での出来事に間違いなく遭遇する。さらに、「差し迫った問題ではないが、いずれ明確な路線を決定しなければならない水平的課題」も存在する。中国はそうした水平的課題の一つだ。中国の脅威は、その強さと弱さの双方に派生している。東アジアでアメリカがどのような軍事、経済路線をとるか、これに中国がどのように反応するか、そしてアメリカの同盟国や友好国がこの中国の反応にどう対処するかが流れを決めることになる。・・・
2012年11月号
ヨーロッパは深刻な統治危機に直面している。各国の指導者と財務相たちは立場を譲って明確な危機対応路線にコミットしたいと考えつつも、一方で、その政策をどのように国内の有権者に受け入れさせるかも考えなければならない。こうして閣僚たちはEUの会議での妥協に関する独自の解釈を国内向けにそれぞれに発表する。帰国して、議会の公聴会の席にたつと、また別の解釈を述べる。ブリュッセルでの長い会議を経て、議長が声明を発表しても、各国の閣僚たちが別のアングルからのコメントを出す。そして立場の違いが広がっていく。その結果、最初の数時間、あるいは数日は前向きな反応を示していた市場も、その後、再びネガティブな方向へと振れていく。・・・やらなければならないことは二つある。一つは、状況を安定化させるための政策を実施することだ。もう一つは、ユーロの将来に向けた説得力のあるビジョンを示すことだ。10年後にユーロが存在すると確信できなければ、誰もがユーロ建てで投資することを躊躇する。
2012年11月号
デレバレッジ局面で緊縮財政が実施されると、非常に大きな債務を抱え込んでいることが広く認識されるようになる。その結果、リセッションに陥るだけでなく、危機が発生する。この段階で量的緩和が開始され、デレバレッジ・サイクルが10年程度は続く。・・・(デレバレッジ・サイクルのなかにある)日本やアメリカで強気相場と弱気相場が繰り返されているのは、量的緩和が実施されると強気相場となるが、いずれ量的緩和には問題があると考えられるようになるからだ。そして(量的緩和が作り出す)別のサイクルが生まれる。これは非常に周期が長く、通常は15年にもおよぶ。・・・・債務削減、緊縮財政、量的緩和のバランスをうまくとる必要がある。債務削減と緊縮財政はデフレをもたらす。量的緩和にはインフレ効果がある。これらをうまくバランスさせるのだ。これを私は「美しいデレバレッジ」と呼んでいる。デレバレッジ局面でもっとも重要なのは、十分な資金を供給し、名目金利を上回る名目成長率を維持すること、・・・そして、資金を必要とし、経済を刺激するポイントに資金を行き渡らせられるかどうかだ。
2012年11月号
1885年以降、数多くの中国人が近代世界を学ぼうと、日本に留学してきた。しかし、その後日本が帝国主義国家として台頭していくと、中国人が日本の近代化に抱いた憧憬は、嫌悪感へと変化していく。中国人から見れば、日本はもはやアジアではなかった。日本は、紛れもなく帝国主義国家そのものだった。そして、日中戦争が、より一層の敵意と憎悪を生み出し、それが現在の対日観に影響を与え続けている。だが、戦争の影響を、日本軍の残虐性という観点だけでとらえるのは誤りだろう。戦争は両国の知的・イデオロギー的な枠組みに大きな影響を与えている。日本が封建制から資本主義、帝国主義へと突き進むプロセスが、中国のナショナリストたちのマルクス・レーニン主義イデオロギーへの確信をより深めることになったからだ。