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に関する論文

北朝鮮の核実験に中国はどう対処するか

2013年02月

ビクター・チャ
ジョージタウン大学教授

北朝鮮が核実験を実施するのは、金正日生誕の日である2月16日、あるいは、韓国で新政権が誕生する2月25日前後と言われている。なぜ、国際社会の批判にも関わらず、平壌は核実験を強行しようとしているのか。ブッシュ政権の米国家安全保障会議(NSC)でアジア部長を務めたビクター・チャは、北朝鮮は核実験を通じて国内の権力継承プロセスを進展させ、「核武装国家としての地位を確立したいと考えている」と指摘する。だが、そうした動きは北京との関係も不安定化させている。「平壌は中国国内の貧しい省の一つであるかのように北京に扱われることに反発し」、一方、北京は、「北朝鮮が挑発路線を続け、それを中国は阻止しようとしない」と国際社会から批判されることに困惑している。中国が北朝鮮への支援をすべて打ち切れば、北朝鮮の命運は尽きる。だが、北京は朝鮮半島の統一国家がアメリカの同盟国になるのを望んでいないために、現状で、中国が支援を打ち切るとは考えられない。・・・

先進国社会が高齢化し、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できなくなっている。この現実に、政治が対応できずにいることが世界で多くの問題を作り出している。日本は成長に向けた経済改革についての政治的コンセンサスを構築できるかどうか、いまも分からない状態にあるし、同様に債務と赤字にまみれた米欧も日本経済の後追いをしている。アメリカは、経済的回復へとゆっくりと向かいつつも、依然として政治的膠着で身動きがとれず、ユーロ危機の対応に追われるヨーロッパは、もはや統合の理念さえも見失いつつある。かたや、これまで高成長を維持してきた中国でさえも投資バブルの崩壊で、90年代の日本に似た状況に陥りつつある。問題は、社会、経済の大きな変化に主要国の政府が対応できるようになるまでの混乱期に、対外領域で何が起きるかだ。中国の対外強硬路線は今後も続くのか。日本の防衛戦略はどう見直されるのか。フォーリン・アフェアーズで見通す2013年の世界。

追い込まれた中国共産党
―― 民主改革か革命か

2013年1月号

ヤシェン・フアン マサチューセッツ工科大学教授

これまでのところ、中国が民主体制へと近づいていくのを阻んできたのは、それを求める声(需要)が存在しなかったからではなく、政府がそれに応じなかった(供給しなかった)からだ。今後10年間で、この需給ギャップが埋められていく可能性は十分ある。一人あたりGDPが4000―6000ドルのレベルに達すると、多くの社会は必然的に民主化へと向かうとされるが、すでに中国はこのレベルを超えている。さらに、今後、中国経済がスローダウンしていくのは避けられず、社会紛争がますます多発するようになると考えられる。さらに、中国の政治・経済的未来へのコンフィデンスが低下していくのも避けられなくなり、資本逃避が加速することになる。この流れを食い止めなければ、相当規模の金融危機に行き着く危険もある。政治改革に今着手するか、壊滅的な危機に直面した後にそうするかが、今後、中国政治の非常に重要なポイントになるだろう。

Foreign Affairs Update
中国の不動産バブルと農民の不満

2013年1月号

ライネッテ・H・オング
トロント大学准教授

中国では依然として政府主導の建設・不動産投資が進められているが、これは、どうみてもリスクの高い投資戦略だ。地方政府は農民から接収した土地を担保に資金を銀行から借り入れ、その後、この土地を売却、あるいはリースすることで得た資金を金利支払いに充てている。北京は、地方政府が負っている債務総額は、中国のGDPの13-36%に相当する5兆―14・4兆元に達すると推定している。民間アナリストのなかには、偶発債務と(地方政府系機関の)間接債務を含めると、債務総額はGDPの50-100%に達しているとみる者もいる。当然、住宅や土地の価格が大きく低下すれば、財政危機と金融危機が起きる。一方で、土地を追われた農民の怒りによって、中国では年間12万件の抗議行動が起きている。

Foreign Affairs Update
中国の経済諜報活動

2013年1月号

ジェームズ・A・ルイス
米戦略国際問題研究所シニアフェロー

中国は、経済諜報活動を、政府系のスパイだけでなく、ビジネスマン、研究者、学生を動員して展開している。そのターゲットには、技術情報はもちろんのこと、企業の契約、合併吸収計画の情報も含まれている。中国だけが経済諜報を行なっているわけではないが、この領域でもっともアクティブな国が中国であるのは間違いない。通信、航空、エネルギー、防衛といった中国の重要産業は、この戦略をうまく追い風にしている。中国が途上国だった当時はこうした国際ルールを無視した行動もある程度は許容できたかもしれない。だが、中国が世界第二位の経済大国となり、軍事的なライバルとなる可能性を秘めている現状では、技術諜報を許容できるはずはない。明確な警告をして報復策をとる必要がある。経済技術諜報という手法が、中国の国際的なリーダーシップと国内の技術開発に悪影響を与えることを北京に理解させる必要がある。

日本衰退論の虚構
――みえない日本の等身大の姿

2013年1月号

ジェニファー・リンド
ダートマスカレッジ准教授

1970―1980年代、われわれは、資本主義の魔法の道筋をみつけた日本はいずれアメリカを経済的に追い抜き、世界的優位を確立するだろうとみていた。だがバブル崩壊とともに認識面での大きな揺り戻しが起き、いまや分析者たちは、日本は末期的な衰退基調にあるとみている。これらはいずれも実像から離れた極端なとらえ方だ。安全保障領域についても、専門家の多くは、日本の抑制的安全保障路線にばかり目を向け、この国が見事な軍事力を整備していることを無視してきた。こうして、「日本は非武装の平和主義国家」とみなされるようになった。そしていまや、対中関係の悪化によって日本の平和主義は終わり、ナショナリズムが台頭していると言われている。問題は、これらの見方が、いずれも日本の実像を見落としていることだ。極端なレンズで日本をとらえようとする人々は間違っているだけでなく、東アジアのパワーバランスを維持する上で日本が果たせる重要な役割を見落としている。アメリカ(そしておそらくは中国を)例外とすれば、日本ほどパワーと影響力をうまく形作れる国もない。

アンゲラ・メルケル首相率いるドイツは、周辺国を支援するには、財政同盟を立ち上げ、政治的統合を深化させる必要があるという立場を明確に示している。一方、国家主権を重視するフランスは政府間交渉によるアプローチに依然としてこだわっている。いまやユーロ危機対応の中枢にあるのは、「ヨーロッパの統合を深化させるかどうか」に関する論争だ。だが、専門家の多くは、ヨーロッパでナショナリズムが高まっている以上、欧州の指導者たちが統合の深化に合意できるとはみていない。仮に財政同盟に必要とされる経済・政治統合を深化させれば、集団的な安全保障政策の基盤も作る必要が出てくる。だが現実には、ヨーロッパの政策決定者が目の前にあるユーロ危機の対応に追われているために、シリア内戦など、全ヨーロッパ的な対応を必要とする外交懸案も放置されたままだ。外交専門家のウォルター・ラッセル・ミードは、すでにユーロ危機はヨーロッパの「経済だけでなく、地政学的重要性」も危機にさらしていると指摘し、CFRのC・クプチャンも、ヨーロッパはうまくいっても、穏当な能力をもつ地域的なプレイヤーにとどまり、下手をすると、地政学的なプレイヤーとしては忘れさられていく運命にあると指摘している。

衰退する日米欧経済

2013年1月号

ロバート・マッドセン
マサチューセッツ工科大学国際研究センター
シニアフェロー

かつては圧倒的なパフォーマンスを誇った日本経済も、バブル経済の崩壊とともに失速し、いまや成長のために、そして再び金融危機に直面するのを避けるために必要な、経済改革に向けた政治的コンセンサスを構築できるかどうかも分からない状態にある。そして、金融危機後のさまざまな対策を通じて「自分たちは日本の二の舞にはならない」というメッセージを市場に送った欧米諸国も、結局、日本の後追いをしている。欧米経済がこの5年間で経験してきたことは、1990年代の日本の経験と非常に似ている。今後の日米欧にとって、社会契約をいかに再定義するかが最大の政治課題になる。予算を均衡させ、再び金融危機に直面するのを回避するには、税率を引き上げ、社会保障支出を削減するしか方法はないからだ。アメリカ、日本、そしてヨーロッパ諸国は、この困難なプロセスとそれが引き起こす社会的緊張への対応に長期的に追われることになるだろう。地政学バランスはすでに東アジアへと傾斜しつつあるが、主役は日本ではない。うまくいけば傍観者として、最悪の場合にはその犠牲者として、日本は東の台頭を見つめることになるだろう。

2013年、世界は中国発の数多くの問題に直面していくと考えられる。CFRのアダム・シーガルは、習近平は政治腐敗対策など国内統治領域の改革に前向きな姿勢を取りつつも、現在進められているサイバー空間の国際的ルール形成をめぐって、より閉鎖的で、主権をベースとするインターネットを促進しようと試みており、欧米との対立は避けられないだろうと予測する。エリザベス・エコノミーは、政治腐敗対策をとり、社会格差の問題に対処し、(輸出・投資主導型)経済のリバランシングを試みることを含めて、中国の新体制は多くの国内課題を抱えていると指摘しつつも、近隣諸国と抱えている領有権問題への対応を余儀なくされるとみる。世界は、習近平が「平和的台頭」や「ウィンウィン外交」にコミットしていると信じる根拠が欲しいと思っていると彼女は言う。

一方、ミンシン・ペイは、(いくぶん緩和されてきているとはいえ)とかく評判の悪い一人っ子政策、そして、治安当局が治安を乱した人物を裁判も経ずに勾留し、強制労働を命じることができる「労働教養」政策を廃止するかどうかが、習近平の改革路線の試金石になるとみる。ヤンゾン・ファンも共産党政府の正統性を維持し、国内消費を刺激するために、中国の新指導層は今後、医療保険制度を含む、社会的セーフティネットの構築に力を入れていかざるをえず、その途上で政治改革が不可欠になると予測している。

トルコのソフトパワーと中東
―― ギュル大統領との対話

2013年1月号

アブドラ・ギュル トルコ大統領

世界的パワーになることが重要なわけではない。重要なのは、可能な限り高いところへと基準を引き上げ、国が市民たちに繁栄と幸せを提供できるようにすることだ。ここで言う基準とは、民主主義と人権だ。これがトルコにとっての究極の目的だ。これらの基準を高度化させていけば、経済はもっと力強くなり、ソフトパワーをもつ国になれる。・・・他の諸国がトルコを模範とし、われわれのやり方に啓発されるとすれば、それは彼らの判断だ。国に浮き沈みはつきものであり、われわれは彼らと連帯する。重要なのは、問題と格闘している人々への連帯を示すことだ。すべての国は平等であり、すべての国家は尊厳をもっている。筋書きを書いた誰かが、その役回りを他の国に押しつけることはできない。(A・ギュル)

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